「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」という映画を見てきました。
エマ・ストーン主演!映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』予告編
1973年に女子プロテニスプレイヤーであるビリー・ジーン・キングと男性プロテニスプレイヤーのボビー・リッグスが行ったテニスの男女対抗試合を描いた、実話に基づく映画。
<この映画は本当に素晴らしい映画だと思うし、予備知識がほとんど無いほうが楽しめると思う。もしこれから観る予定の方はここまでで僕のブログなんて読むのをやめて、ぜひ映画をご覧になってほしい。>
以後、もう観た、あるいは観る気は無い、という方に向けて書きます。
以下、ネタバレがあります!!
さて、この映画、個人的にはとっても楽しみにしていた。まずなんと言っても主演がエマ・ストーン。僕、好きなんです。「Easy A」という青春映画も良かったし、「スーパーバッド/童貞ウォーズ」も良かった。もちろん「ラ・ラ・ランド」での熱演も素晴らしい。なんたってオスカーとってるわけだし。「アメイジング・スパイダーマン」だって、ヒロインである彼女の魅力は大きかった。
更にいうとこの作品、近年、良作をどんどん制作しているフォックス・サーチライトという会社の作品。ここの近年の作品で言えばたとえば「シェイプ・オブ・ウォーター」、「スリー・ビルボード」、「gifted/ギフテッド」、この3つだけでもタイトル聞いただけで感動が蘇るレベル。
ということで観てきましたよ。
あのね、とっても素晴らしかった。
まず冒頭、エマ・ストーン演じるビリー・ジーン・キングのところにテニス協会からトーナメントの賞金額が知らされる。なんとそれは女子トーナメントの賞金は男子の8分の1。ビリー・ジーンはそれに抗議するけど、協会の男性二人はこう答える。
「女子トーナメントは男子にくらべて人気がない」
「Fact.(事実だ)」
「そもそも男性と女性では生物学的に違うし」
「事実だ」
「女性は男性に比べて敏捷性で劣る」
「事実だ」
「だから、女子トーナメントは観ていても面白くない」
「事実だ」
もうね、この時点で今の時代なら非難轟々だと思う。観てて僕も「お前ら、なに言ってんだ??」と思ったよ。
この時点で、おお、こいつら馬鹿な男どもをテニスでぶっ潰す話だな、と思ってテンション上がった。
これを聞いたビリー・ジーンと彼女のマネージャー、グラディスはテニス協会を脱退し独自の女子テニストーナメントを立ち上げることを決意する。
テニス協会をあとにする二人。
ちなみに!
僕は昨年も言ったけど、こういう強い女性映画で「ただ、前を向いて、決意とともに歩くシーン」は本当に何度観ても素晴らしいと思う。僕はだいたいそれだけで涙が出てくる。
ちょっと前に書いたものから引用する。→「Wonder women & Runaway guys./驚くべき女性たちと逃げ出す男たち。」
---
彼女たちの映画の特徴として僕は何度観ても何度も涙が出るんだけど、「まっすぐ前を向いて歩く姿」が素晴らしいと思う。「ワンダーウーマン」のノーマンズランドのシーンや「ドリーム」でドロシーがNASAの廊下をただ静かな笑顔で歩くシーン。「アトミックブロンド」も「シンクロナイズドモンスター」でも、とにかく女性が「私は負けない」と静かに決意し、ただ柔らかく笑みを浮かべ、まっすぐ前を向いて歩いて行く、というそのシーンはなぜこんなにも美しいんだろう?? 自分でも何故だかわからないけど、何故か不思議な感動があって何度も何度も見返しては涙をためてしまう。
---
この映画も、冒頭のビリー・ジーンとグラディスが決意し、胸を張り、前を向いて歩くシーンが素晴らしかった。
この映画も「ワンダー・ウーマン」や「ドリーム」に連なる「ワンダーな女性たち映画」だと僕は思う。「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」は今年日本公開だけどアメリカでは2017年公開。とにかく2017年の空気というのはやっぱり「ワンダーな女性たち」だったんだろうと思う。「見たか、大統領!」って感じ。
このビリー・ジーンの動きを快く思っていないのがボビー・リッグスという往年の名テニスプレイヤー。引退して暇を持て余していた55歳の彼は女子トッププレイヤーと戦って打ちのめすことを画策する。
これだけだとこのボビー・リッグスが「悪役」に思えるんだけど、実は映画ではそう描いていないと思う。
映画評論家・町山智浩さんがこの映画をラジオで紹介していて「最後はロッキーになりますから!」と言っていた。当然、僕はビリー・ジーン・キングがロッキーのようになって、感動的なエンディングを迎えるのかと思っていた。でも違った。
そもそも論、ビリー・ジーンはこの試合で「勝っている」、ロッキーのポイントは「負ける」ということだからその点でも違ったんだよね。
では、この映画のどこが「ロッキー」だったか?
僕はボビー・リッグスだったのだろうと思っている。
ボビー・リッグスは過去の栄光があるものの、引退した今では何にも熱意を持てずにいる。その彼が、熱意を持てたのが「男女対抗試合」だったのだろう。
エンディング、試合に負け、ロッカールームにいる彼のもとに、別居していた奥さんが訪れるところで彼のストーリーは終わる。
実はこれは、ロッキー1の幻のエンディングと一緒じゃないかと思う。ロッキー1のエンディングは今の、有名すぎる「エイドリアーン!」ではなく、負けたロッキーがロッカールームにいると、そこにエイドリアンが来て、二人でロッカールームを出ていく、という静かなものになるはずだった(撮影もされていた)。
今回のボビー・リッグス側の終わり方はこのシーンを基にしているのではないかと僕は勝手に思う。
ちなみに、彼のシーンで「うまいな」と思ったのが試合直前、試合会場に行くために下りのエスカレーターに乗るシーン。そこでトレーナーとしてついていた彼の息子が急に「行かない」といい、エレベーターに乗らない。
彼を乗せようとボビー・リッグスは下りのエスカレーターを上に上がる、しかし、エスカレーターは下りなので上に上がろうとしてもその位置に居続けるだけ、そして足を止めると結局、下がっていく。
これさ、僕は「年を取ること」の暗喩だと思った。
人は誰しも年を取る、それはまるで下りのエスカレーターに乗っているようなものだろう。運動したり、見栄えをよくしようとして若さを保とうとする、でもそれは下りのエスカレーターを上に登っているようなものだ。いつか、下に行き着く。
希望がない?まぁ確かに。
でもボビー・リッグスには希望はあった。それはロッカールームに来てくれた奥さん。
うむ、いい話ですね。
では、試合後のロッカールームでビリー・ジーンはどうだったか?
これが実はこの映画の最大のツイスト(ひねり)だろうと思う。だから、僕は「1973年にビリー・ジーン・キングとボビー・リッグスがテニス男女対抗試合をした」ということのみ、知って観たほうがいいと思う。
あ、こういう映画なのね、と新鮮に驚いた。
この映画は「ワンダーウーマン」「ドリーム」でもあり、「ロッキー」でもあり、そして「ブロークバック・マウンテン」でもあると僕は思った。
おすすめです。
エマ・ストーン主演!映画『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』予告編
1973年に女子プロテニスプレイヤーであるビリー・ジーン・キングと男性プロテニスプレイヤーのボビー・リッグスが行ったテニスの男女対抗試合を描いた、実話に基づく映画。
<この映画は本当に素晴らしい映画だと思うし、予備知識がほとんど無いほうが楽しめると思う。もしこれから観る予定の方はここまでで僕のブログなんて読むのをやめて、ぜひ映画をご覧になってほしい。>
以後、もう観た、あるいは観る気は無い、という方に向けて書きます。
以下、ネタバレがあります!!
さて、この映画、個人的にはとっても楽しみにしていた。まずなんと言っても主演がエマ・ストーン。僕、好きなんです。「Easy A」という青春映画も良かったし、「スーパーバッド/童貞ウォーズ」も良かった。もちろん「ラ・ラ・ランド」での熱演も素晴らしい。なんたってオスカーとってるわけだし。「アメイジング・スパイダーマン」だって、ヒロインである彼女の魅力は大きかった。
更にいうとこの作品、近年、良作をどんどん制作しているフォックス・サーチライトという会社の作品。ここの近年の作品で言えばたとえば「シェイプ・オブ・ウォーター」、「スリー・ビルボード」、「gifted/ギフテッド」、この3つだけでもタイトル聞いただけで感動が蘇るレベル。
ということで観てきましたよ。
あのね、とっても素晴らしかった。
まず冒頭、エマ・ストーン演じるビリー・ジーン・キングのところにテニス協会からトーナメントの賞金額が知らされる。なんとそれは女子トーナメントの賞金は男子の8分の1。ビリー・ジーンはそれに抗議するけど、協会の男性二人はこう答える。
「女子トーナメントは男子にくらべて人気がない」
「Fact.(事実だ)」
「そもそも男性と女性では生物学的に違うし」
「事実だ」
「女性は男性に比べて敏捷性で劣る」
「事実だ」
「だから、女子トーナメントは観ていても面白くない」
「事実だ」
もうね、この時点で今の時代なら非難轟々だと思う。観てて僕も「お前ら、なに言ってんだ??」と思ったよ。
この時点で、おお、こいつら馬鹿な男どもをテニスでぶっ潰す話だな、と思ってテンション上がった。
これを聞いたビリー・ジーンと彼女のマネージャー、グラディスはテニス協会を脱退し独自の女子テニストーナメントを立ち上げることを決意する。
テニス協会をあとにする二人。
ちなみに!
僕は昨年も言ったけど、こういう強い女性映画で「ただ、前を向いて、決意とともに歩くシーン」は本当に何度観ても素晴らしいと思う。僕はだいたいそれだけで涙が出てくる。
ちょっと前に書いたものから引用する。→「Wonder women & Runaway guys./驚くべき女性たちと逃げ出す男たち。」
---
彼女たちの映画の特徴として僕は何度観ても何度も涙が出るんだけど、「まっすぐ前を向いて歩く姿」が素晴らしいと思う。「ワンダーウーマン」のノーマンズランドのシーンや「ドリーム」でドロシーがNASAの廊下をただ静かな笑顔で歩くシーン。「アトミックブロンド」も「シンクロナイズドモンスター」でも、とにかく女性が「私は負けない」と静かに決意し、ただ柔らかく笑みを浮かべ、まっすぐ前を向いて歩いて行く、というそのシーンはなぜこんなにも美しいんだろう?? 自分でも何故だかわからないけど、何故か不思議な感動があって何度も何度も見返しては涙をためてしまう。
---
この映画も、冒頭のビリー・ジーンとグラディスが決意し、胸を張り、前を向いて歩くシーンが素晴らしかった。
この映画も「ワンダー・ウーマン」や「ドリーム」に連なる「ワンダーな女性たち映画」だと僕は思う。「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」は今年日本公開だけどアメリカでは2017年公開。とにかく2017年の空気というのはやっぱり「ワンダーな女性たち」だったんだろうと思う。「見たか、大統領!」って感じ。
このビリー・ジーンの動きを快く思っていないのがボビー・リッグスという往年の名テニスプレイヤー。引退して暇を持て余していた55歳の彼は女子トッププレイヤーと戦って打ちのめすことを画策する。
これだけだとこのボビー・リッグスが「悪役」に思えるんだけど、実は映画ではそう描いていないと思う。
映画評論家・町山智浩さんがこの映画をラジオで紹介していて「最後はロッキーになりますから!」と言っていた。当然、僕はビリー・ジーン・キングがロッキーのようになって、感動的なエンディングを迎えるのかと思っていた。でも違った。
そもそも論、ビリー・ジーンはこの試合で「勝っている」、ロッキーのポイントは「負ける」ということだからその点でも違ったんだよね。
では、この映画のどこが「ロッキー」だったか?
僕はボビー・リッグスだったのだろうと思っている。
ボビー・リッグスは過去の栄光があるものの、引退した今では何にも熱意を持てずにいる。その彼が、熱意を持てたのが「男女対抗試合」だったのだろう。
エンディング、試合に負け、ロッカールームにいる彼のもとに、別居していた奥さんが訪れるところで彼のストーリーは終わる。
実はこれは、ロッキー1の幻のエンディングと一緒じゃないかと思う。ロッキー1のエンディングは今の、有名すぎる「エイドリアーン!」ではなく、負けたロッキーがロッカールームにいると、そこにエイドリアンが来て、二人でロッカールームを出ていく、という静かなものになるはずだった(撮影もされていた)。
今回のボビー・リッグス側の終わり方はこのシーンを基にしているのではないかと僕は勝手に思う。
ちなみに、彼のシーンで「うまいな」と思ったのが試合直前、試合会場に行くために下りのエスカレーターに乗るシーン。そこでトレーナーとしてついていた彼の息子が急に「行かない」といい、エレベーターに乗らない。
彼を乗せようとボビー・リッグスは下りのエスカレーターを上に上がる、しかし、エスカレーターは下りなので上に上がろうとしてもその位置に居続けるだけ、そして足を止めると結局、下がっていく。
これさ、僕は「年を取ること」の暗喩だと思った。
人は誰しも年を取る、それはまるで下りのエスカレーターに乗っているようなものだろう。運動したり、見栄えをよくしようとして若さを保とうとする、でもそれは下りのエスカレーターを上に登っているようなものだ。いつか、下に行き着く。
希望がない?まぁ確かに。
でもボビー・リッグスには希望はあった。それはロッカールームに来てくれた奥さん。
うむ、いい話ですね。
では、試合後のロッカールームでビリー・ジーンはどうだったか?
これが実はこの映画の最大のツイスト(ひねり)だろうと思う。だから、僕は「1973年にビリー・ジーン・キングとボビー・リッグスがテニス男女対抗試合をした」ということのみ、知って観たほうがいいと思う。
あ、こういう映画なのね、と新鮮に驚いた。
この映画は「ワンダーウーマン」「ドリーム」でもあり、「ロッキー」でもあり、そして「ブロークバック・マウンテン」でもあると僕は思った。
おすすめです。