浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

ユニバースとワンダーウーマン

2017-09-06 11:22:37 | DVD、映画
※今回、「ワンダーウーマン」の話をしますが、内容についてはほぼ触れていません。(僕は「まったく触れていない」と言っていいレベルだと思ってるけど、受け取り方によるかも知れないので「ほぼ」と言います) 主には興行収入とか作った人の話とかが多い。それでも「まったく何も事前情報を入れたくない」という方は観終わった後に読まれることをお勧めします。

「マーベル・シネマティック・ユニバース」というのがある、という話は何度かしたと思う。

マーベルというアメリカのコミック出版社が、コミックに登場するキャラクターたちの単独映画を作り、それを「アベンジャーズ」という映画で大集合させる、というもの。各単独映画は同じ世界にいる、ということになっており、それぞれの映画に他の作品のキャラクターが出てくる。他の作品で起こった出来事が他の作品にも影響したり、、というもの。

これはさ、確かに巧い商売だよね。例えば「アイアンマン」が好きな人は当然、「アベンジャーズ」を観る(アイアンマンが出るからね)だろうし、「アベンジャーズ」を最初に観て、例えば「キャプテン・アメリカかっこいい」と思った人は遡って「キャプテン・アメリカ/ファースト・アベンジャー」を観るだろう。

更にいうと「観てる人にだけ分かる仕掛け」があったりしてそれはそれで楽しいよね。別の作品にちょっとマイティ・ソーのハンマーが出てきたりしてさ。

もちろんいい事ばかりでなく、各作品で色々矛盾が出ないように調整するのが大変だろうし、一個コケると他の作品にも影響が出かねないのでいろいろ苦労はあるだろうけども。

これでマーベルがめちゃくちゃ儲かっているのはもちろん言うまでも無い。

さて、それを黙ってみてられないのがマーベルのライバルであるDCコミックス。当然、DCはDCで「DC・エクステンデッド・ユニバース」というのを始めた。これは「マン・オブ・スティール」というスーパーマンの映画を発端にバットマン、ワンダーウーマンなどの映画を作って「ジャスティス・リーグ」というヒーロー大集合映画にまとめていく、というもの。「マン・オブ・スティール」「バットマンVSスーパーマン」「スーサイド・スクワッド」なんかが期待ほどヒットせず、企画自体危ぶまれていたこちらですが「ワンダーウーマン」で大当たり。

うむ。

当然、この「スーパーヒーローのユニバース化」という企画を他の映画関係会社も黙ってみているはずが無い。

出てきたのが「モンスターバース」という企画。これはレジェンダリーという映画制作会社と日本の東宝が提携し進めている企画。2014年のハリウッド版「ゴジラ」を発端とし、2017年「キングコング:髑髏島の巨神」でキングコング、2019年の「ゴジラ:キングオブモンスターズ」(原題)でゴジラを出し、2020年に「ゴジラVSキングコング」という映画を作って対決させる、というもの。もうね、何が何やら(笑)

加えて「ダーク・ユニバース」という企画もある。これはユニバーサル・ピクチャーズというところがやってる(これからやる)企画で、昔の怪物映画を同じ世界の中でどんどんリメイクする企画。まずこの夏公開のトム・クルーズ主演「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」がスタートとなる。これは1932年公開の「ミイラ再生」が元ネタのミイラ映画。続けて「フランケンシュタイン」「透明人間」なんかが作られるみたい。フランケンシュタインの怪物役がハビエル・バルデム、透明人間はジョニー・デップという、豪華過ぎるキャスティング。ザ・マミーではラッセル・クロウが博士役で出るようで役名が「ジキル博士」ということなのでこれは「ジキル博士とハイド氏」に繋がっていくんだろう。このダーク・ユニバース企画にはあと、ドラキュラ、狼男、半魚人なんかも予定されてるそう。もうね、何が何やら(笑)

あともう一つ、これは言っちゃうとそれ自体がネタバレになるから書かないけどとある監督も「ユニバース」的に作品を作り出している。

2008年の「アイアンマン」から始まった「ユニバース」企画は丸10年経ってここまで広がったのだ、と考えると映画史的に大変興味深い。

そして、丸10年経った今年、ユニバース系(という言葉を勝手に作ってますが)の最大ヒットはなんと言っても「ワンダーウーマン」だろう。

確かに「マーベル・シネマティック・ユニバース」というヒーロー大集合企画は一大ムーブメントとなり、本来なら契約の関係でマーベルヒーローながら、アベンジャーズシリーズには出られなかったスパイダーマンまでがこのユニバース(宇宙)に入ってきた。それがこの夏公開の「スパイダーマン/ホームカミング」、もちろん信頼と実績のマーベル印、ある一定以上は当然面白い。

一方、ライバル出版社であるDCコミックス。こちらはスーパーマン、バットマンを擁しアメコミスーパーヒーローの保守本流でありながらこのユニバース企画(DC・エクステンデッド・ユニバース、以下、DCEU)では期待ほどのヒットを出せず。どのくらい「期待ほどのヒットではない」のか、制作費と世界興行収入の対比(出典はWikipedia、単位は100万ドル)を見てみます。今のアメリカ映画だと「制作費の3倍稼げば続編作れるレベル」らしいです。

マン・オブ・スティール 225/668(296%)
バットマン vs スーパーマン 250/873(349%)
スーサイド・スクワッド 175/745(425%)


もうこのくらいだとすごいのかどうか分かんなくなってきますが。ざっくり1ドル100円と考えると、バットマンvsスーパーマンで873億稼いでる、ということになる。悪くないんじゃない?と思うかも知れないけどマーベル・シネマティック・ユニバースの世界興行収入上位3位を見るとこうなる。

アベンジャーズ 1,519/220 (690%)
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン 1,405/267(526%)
アイアンマン3 1,215/200(607%)


つまり、桁が違っちゃってるわけですね。こう比べてしまうとバットマンとスーパーマン戦わして8億ドルというのはやっぱり寂しい。せめて10億ドルは超えたいところだったろう。

というところで今回の「ワンダーウーマン」ですよ。このワンダーウーマンというヒーローは「バットマンVSスーパーマン」にも出てきてた。

あ、まず僕の結論から言っておきます。今回のワンダーウーマン、僕は最高でした。単なる明るく楽しいアメコミスーパーヒーロー映画ってだけじゃなくて、色々考えさせられるし、はっきり言って泣けるし、もちろん熱くてグッと来る最高の映画でした。

ここからしばらく「ワンダーウーマンを観るべき理由」を列記することになる。

興行収入から話しましょう。今回のワンダーウーマン、アメリカ公開(6月2日)から三ヶ月経っての現段階での世界興行収入はなんと8億ドル。マン・オブ・スティール、スーサイド・スクワッドは余裕で超えてる。おそらく「バットマンVSスーパーマン」も超えて現時点でDCEUナンバーワンになるだろう。

ちなみにじゃあ現時点(2017年9月)で興行収入と制作費はどうなっているか。

ワンダーウーマン 800/149(539%)

制作費1億4900万ドルと言えば、ざっくり150億円ということになり、すごい金額に聞こえるけど、実は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」よりも制作費は低い、ということになる。しかし興行収入としてはバットマンVSスーパーマンに迫る勢い、対比で言えば制作費の5倍強を稼いでいることになる。もちろん売上がすべてではないけども、これだけ稼いでいるということは特筆に値すべきことだと僕は思う。

それから監督について。今回の「ワンダーウーマン」の監督はパティ・ジェンキンスという方。この方は「モンスター」という映画で高く評価された。シャーリーズ・セロンがすごい演技でアカデミー主演女優賞を獲得したりしてね。アメコミスーパーヒーロー映画で女性が監督、というのは今まであったんだろうか?僕の知る限り無いと思う、あったらごめんなさい。そして結果、この映画は「女性が監督した映画」でナンバーワンのヒットとなった。「女性が監督したアメコミスーパーヒーロー映画」でナンバーワン、という意味ではないですよ、「あらゆるジャンルの、女性が監督した映画でナンバーワン」ということ。つまりこれはもうアメコミスーパーヒーローが云々という話じゃなくなって来ちゃってるんです。

アメコミスーパーヒーロー映画の枠内で考えても、「シリーズ1作目」ということで言えば最大のヒット。だいたいシリーズ物ってのは、1が面白かったら2が儲かり、2が面白かったら3が儲かる、というパターンが多い。そりゃそうだよね、1観て面白い、と思ったら2を見に行く人が増えるってはずだから。だから、そんなに評価高くない作品が意外と成績が良かったりする。例えばサム・ライミ版「スパイダーマン」で言うと評価が高いのは2なんだけど、成績は1が821億円、2が783億円、3が890億円となっている。2で下がって3で上がってる。何が言いたいかと言うと続編ではない1(これをオリジン物と呼ぶ場合もある)として最大のヒットである、ということ。これはかなり実力がある(つまり、面白い映画)と言ってもいいんじゃないだろうか。

しかもアメコミスーパーヒーロー物としてはあまり多くない女性主人公物だしね。

つまりとにかく大大大ヒット、ということです。もし「えー?ワンダーウーマン??」と思って観に行ってない人がいるならそれはやっぱりもったいないと思う。町山智浩さんがラジオで言っていたけどこれはいわば「全部乗せ」の映画で、笑いあり、ロマンスあり、アクションあり、、と色々入ってる映画です。ぜひご覧いただきたいと僕は思います。

一応、ワンダーウーマンがDCEUに初登場する「バットマンVSスーパーマン/ジャスティスの誕生」は観ておけばそりゃ今回の「ワンダーウーマン」も楽しめるとは思うけど、観て無くても全く問題ないと思います。


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なんかよくわからないんだけど、未公開映像もプラスした特別版が出てるみたい。現段階で観る限りこれ1,000円代でめちゃくちゃ安くなってるみたいだね。ワンダーウーマン人気にあやかったのかワンダーウーマンをセンターに置いたパッケージ。
コメント
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