浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

死なないって

2014-11-19 18:38:32 | 
今回、基本的に敬称略。

僕の好きな劇作家で、鴻上尚史という人がいる。確実にこの人の作品のおかげで今の僕の一部が出来ている。

その人がTwitterで発信した内容が少し論争になっていた。

すごーくシンプルにどういう話だったかまとめます。

まず、東洋経済オンラインというサイトに「リクルートスーツは黒を選べ」という記事があった。どういう記事かというとつまり「就活ではスーツで目立とうと思ってはいけない。無難な黒スーツがいい」という記事。

その記事に対していくつかメンションがあってそれに鴻上尚史がコメントした。

一連のコメントはこちら→「就活黒スーツ記事に関する鴻上尚史氏のTwitter」

するとそのコメントに対して様々なTwitterがあった。

それについて、僕が思ったことを書いておく。

まず、「無難に黒スーツを選ぶ学生」について何の罪も無いと思う。鴻上尚史に「学生だっていろいろ考えて黒スーツ来ているんだ、学生を責めるな」という主旨のことを言っている人がいたけど、鴻上尚史はそんなこと言っていないと思う。

学生ははじめての就職活動で色々不安だろうし、服装なんかで「君、派手なスーツ着てるから不採用」なんて言われたくないだろう。「君のそのスーツいいねぇ、採用」ってこともあまり考えづらいから、だったら無難な黒スーツ着とけばいいや、となるのは仕方ないでしょう。

(しかしさ、最近は黒スーツが「無難」になったんだね。てっきり紺が無難と思ってたけど)

また、普通の人が「就活は無難に黒スーツ着ておけばいいよ」と学生にアドバイスすることについても僕は何も言わない。僕だってもしそんな相談受けたら「ま、普通のスーツがいんじゃない?あまり派手だと逆に目立っちゃうかも知れないしね」と答えるかも知れない。個人的には僕がもし採用担当者だったらノーネクタイとかジーンズで来たら「お、おもろいじゃん」と思うけどね。流石にTシャツ短パンで来られたら「おい」と思うけどそれは職種の問題であって、もし僕が別の職種ならOKかも知れない。例えば面接する側もTシャツ短パンだったりしてね。逆に「就活で黒スーツ着て自分を殺すなんてくだらないぜ、もっと好きな服着ようぜ」っていう人もいてもいいと思う。

僕が違和感があるのは東洋経済というマスコミが「就活は黒スーツがいいです」という記事を書いたこと。

なぜ違和感があるかというと、そもそもこんな当たり前のことをわざわざ記事にする必要があるの? そんなん東洋経済がこんなこと書かなくたって多くの就活生が黒スーツ着てるんでしょ?自明なことを記事にする意味がわからない。

むしろマスコミならさ「企業の皆さん、イノベーティブな人財が欲しいのであれば、自社に来る就活生には『好きな格好で来てください』と言いましょうよ、そして実際に興味深い格好してきた就活生を採用しましょうよ」という提言くらいしてもらいたいもんです。

企業も、スティーブ・ジョブズみたいな人財が欲しいなら、スティーブ・ジョブズみたいな格好している人を取るくらいの気概が欲しいもんです。無難に周りにあわせて黒スーツ着てくる学生を採っといて「最近の新卒からはイノベーションが起きない」とか言って、そんなんあたり前じゃん!そりゃそうだよ。イノベーション起こしたいなら採用面接でに全裸でベニヤ板つけて来るような学生取りなさいって。

まぁ、この記事やそれに対するやりとりについてはいいんです。

僕が一番驚いたのが上記、鴻上尚史に対するコメントで、こういうことを言っている人がいたこと。

「学生も着たくて黒スーツ着てるわけじゃない、就活失敗したら死ぬから必死で着てるんだ」

驚愕しましたね。

マジで!?就活失敗したら死ぬの!?知らなんだ~。

だとしたらそもそもまともに就活してないまま大学出てもう10年近く過ぎた僕とかドッピオさんなんてもう死んでるね、完全にゾンビだね。

もしかしたら僕の時代からは時が過ぎて今では状況は変わっているのかも知れない。僕らの時はまだマシだったのかもしれない。

大学から社会に出ることに不安で、とりあえず周りをみて無難な格好をしようと思う気持ちは本当に分かる。一生懸命、そういう空気に自分を合わせてる学生を馬鹿にする気持ちはまったくない。結果的に僕は就活しなかったけど、もし何か巡り合わせがあったら僕だって就活してたと思う、その時には僕だって周りにあわせて黒スーツ着てたかも知れない。

それでもね、僕は言いたい。

就活失敗したくらいで死なないって!就活まともにやってなくて、あるいはまともにやったけど失敗して、それでも楽しくやってる人間なんてたくさんいるって!

もちろん、「せめて正社員になってくれ」「就活は大事だぞ、頑張れ」という真っ当なことを言う大人がいるのは大事だと思いますよ。親御さんとかね。
世の中の風潮が完全に「就職活動なんてしなくていいんです~、楽なことだけしましょうよ~」ってなったらそりゃ良くないと僕だって思う。でもさ「就活失敗したら死ぬ」ってのはあんまりじゃないですか? 「ベストを尽くしたほうがいいと思うよ。ベストを尽くしても内定取れなかったらそれはその時考えようよ」とくらいのスタンスでいたほうがいいんじゃないかな。仮に本当に就活失敗したら不幸になるとしたら、そんな社会こそおかしい!と声を大にして言おうよ。

就活生は就活生なりに頑張ってるんでしょう。頑張って、それでも残念ながら内定取れなかったとして(まともに就活して内定が取れるかどうかなんて最後は巡り合わせだと思う、本人の人間性や努力の問題じゃないと思うんです)、そんな人間がたかだか20歳そこらで「死んだ」と言われる社会って絶対おかしいでしょ?

さらにこういうことをTwitterで書いたら「確かに今の日本では非正規は死んだも同然ですよね」って言う人もいて更におどろいたでゲスよ。

少なくとも僕は誰に対してであれ、生きてる人間に「あなたは死んだも同然ですよね」なんて言いたくない。