浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

「不思議な少年」は本当にすごいんだってば

2012-12-20 16:10:37 | 
大掃除というわけでもないんだけど家の片づけをだらだらしています。テレビを買い替えようと思っているので。テレビ周りにおいてある本棚を整理しようとして、古い本なんかは処分しようとしている。昔はせっかく買った本を処分するのが惜しかったんだけどスペースにも限りがあるのでそうもいかない。

で、古い本とか整理していたら改めて見つけて読んでしまう。

その中で、何度もすげー!と言い続けている本。


不思議な少年(1) (モーニングコミックス)

この漫画は本当にすごいですよ。

話としては一話完結もので、不思議な少年が世界中の、そして色々な時代の人間たちをただ見つめているというもの。明らかに手塚治虫の「火の鳥」に似ていると思う。

何度か「どわっ」と泣きそうになる。

もうね、ぜひだまされたと思って読んでみていただきたい。とにかく一話一話の完成度が高いし、全体のバラエティの豊富さがすごい。ドラマティックな話もあるし、SFもあるしホラーもある。恋愛もののあるし青春ものもある。同じ作品で話毎にこれだけバラエティがあるというのもすごい漫画だと思う。

これだけバラエティが豊富だと必ず好みに合う話があると思うんです。僕がどわっと来る話が他の人にはピンと来なかったり、逆に僕がピンと来ない話でも他の人がグッと来ていたりするから。たとえば僕は「レスリー・ヘイワードと山田正蔵」という話がぴんと来なかったんだけど、J郎さんはこれがいいと言っていた。

各巻の僕がどわっと来た話。

1巻
「エミリーとシャーロット」

これはすごいですよー。人は変わることが出来るのか。幸せを追い求めるということはなんなのか。これだけで浦沢直樹なら20巻くらい描くと思いますよ。

2巻
「ソクラテス」

すげーよ。ソクラテスと現代を繋いじゃうんだから。史上最高にキュートに描かれたソクラテスだと思う。

「タマラとドミトリ」

ああ、美しい話しだったなぁ。


3巻
「末次家の三人」

僕にとってのベストはこの話。普通の家族、普通のお父さんの話が数千年の人類史と一気につながってしまう。この力量と言うのはすごい。
この3巻は他の話もすごくて僕としては一番すごいと思う巻です。

4巻
「水晶玉の猿」

唯一、「不思議な少年」を出しぬきかねない人間が出てくる話。

6巻
「NX-521236号」

最高。少年時代に星新一で育った人間としてはこういう話そりゃ好きですよ。

「ムメキクと周平」

ああ、いい話だったー。これも浦沢直樹なら30巻は続けるね。

7、8巻は買ってない。しばらくこの漫画の存在忘れたので買い忘れてたよ。速攻発注しました。

本当にすごい漫画なんだってば。ぜひ読んでいただきたい。基本的に一話完結だからすぐ読めると思うし。

すごいなぁと思うのは、どの話も大河ドラマほどのスケールがあって広げようと思えばいくらでも広げられると思う。それを一話(前後編のもあるけど)できちっと終わらせているのが本当にすごい。この切れ味ね。凡庸な作家なら一つの話をもったいぶって20巻30巻と続けたくなると思う。

ここに「火の鳥感」を感じるんだよなぁ。

火の鳥だってさ、たとえば未来編なんて近未来から始まり、人類が滅亡し、いったんナメクジが進化して文明を作り、それが滅び、やっと哺乳類が進化し、人類が生まれる、という数億年間の話なんです。つまり、人類の滅亡から再誕生までを描いているというスケールの大きさなんだけど、これをなんと一巻でやってるんだよ。すごいよ!何度も名前出して申しわけないけど浦沢直樹が鉄腕アトムの「地上最大のロボット」の回を「PLUTO」というタイトルでリメイクした。これね、元は1回のエピソードなんだよ、たぶん50ページも無い話しだろう。それをリメイクして8巻ものにしているわけだから。

ちょっと話しがずれた。

年末年始、もしお暇でしたらぜひ「不思議な少年」を読んでみてください。ぜったい面白いから。
コメント
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