浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

でも、やるんだよ!

2012-10-31 18:46:18 | DVD、映画
先週観てきたもう一本は『アルゴ』という映画。


あのですね、これ名作です。「骨太」という評価が非常に似合う良い映画ですから機会があったらぜひご覧いただきたい。

ストーリーは実話に基づいている。舞台は1979年のイランアメリカ大使館人質事件。

※事前背景を知っておくと非常に楽しめますのでよかったらどうぞ。僕も事前にこの話だけ知って行った。
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当時のイランは米英が援助しているパーレビ国王が支配していた。米英の狙いはイランの石油。石油による利益はすべて米英とパーレビ国王に。パーレビ国王は米英の支援を背景に贅沢三昧。国民は飢えていた。それに抵抗したイラン国民が革命を起こし、パーレビ国王は表向き「癌の治療」ということでアメリカに亡命。

イラン国民としてはアメリカは独裁者に金をやってイランの石油を取っていった上に独裁者をかくまいやがって、と反米意識が高まる。

そんな中、イラン革命グループによるアメリカ大使館襲撃事件が起こる。

今回の話はその襲撃事件により人質となったアメリカ人の救出作戦。それを実行したCIAのエージェントの話。
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監督主演はベン・アフレック。この人、昔は知らない人はいないイケメン俳優だったけど大作映画がこけたり(『パールハーバー』)、ジェニファー・ロペスと付き合って別れたりで一時期はどん底にいた。

どん底にいた頃は低予算映画に出てたりしたんだけど、僕はその時代のこの人のことけっこう好きです。『シンディにおまかせ』(しかしひどい邦題だ)のヨレヨレの友人役なんてすごくいいと思う。

その彼が復活し始めたのは自分で監督するようになってから。初監督作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』は僕は観ていないけど2本目の『ザ・タウン』は非常に骨太で良かった。系統で言えばボストンを舞台にしたスコセッシ監督作品的な感じ。デートには確実に向かないけど、男の熱さがグッとくる感じでよいのよ。

今、なかなか「骨太」な映画を撮る人っていないから貴重な存在だよね。巷ではイーストウッドを継ぐ者とすら言われているらしい。

今回の『アルゴ』も骨太で非常に良い感じです。

髭の人がベン・アフレック。役者としても今回は髭のせいもあるかも知れないけどいい感じに年を取って味のある男になってきたねー。

ちなみに舞台が1979年なので服装もそんな感じ。僕は当時のことはあまり知らないけど、一番「ああ70年代っぽいなー」と思ったのは登場人物がみんなタバコ吸ってるところ。当時は飛行機の中でも吸えたんだね。

ネタバレではないので言ってしまいますが、今回、CIAエージェントのトニーが出した人質救出作戦はなんと「ニセ映画をでっちあげて、人質をそのスタッフに仕立て上げ、堂々と空港から出国させる」という物。

当時は(1970年代後半)は「スターウォーズ」「猿の惑星」などが公開され大人気だった。そこでトニーは「宮殿や砂漠が出てくる超未来映画」、タイトル『アルゴ』という映画をでっちあげ、その取材ということにしイランに入る。今の時代にイランに入国する外国人はいないのでどんな職業に変装しても怪しがられてしまう。でも映画屋なら「あいつらは金の為ならソ連でポルポトとでも映画を作る」ということでイケるだろう、という作戦。

そのために知り合いのハリウッド関係者と映画プロデューサーと組む。

脚本もわざわざ金を出して買う。ニセ映画であることがばれないように記者会見やオーディションも行う。

このあたりは「そんなアホな」と思うんだけど「だって実話だもん!」の一言で納得。本当にこの作戦は「ハリウッド作戦」と呼ばれ実行されたらしい。でも「人質が救出された」という事実は公開されたものの、実際その作戦がどんなものだったのか、ということが公開されたのは20数年経ってからだったらしい。

面白かったよー。

イランのほうでは人質が緊迫した状態になっているのにそのための作戦としてはハリウッドでアホらしい映画製作(のふり)をしていて。

本当の『アルゴ』はどういうものだったか分からないけど、この映画の中では明らかにスターウォーズのパクリっぽく描かれているのもいいですね。スターウォーズ好きの人は確実にニヤリとしてしまう。

途中までの準備段階から、中盤はもう本当に息もつかせぬドキドキの展開、そして最後は少しホロリとさせる。(ラストもスターウォーズ好きならたまらない。いよっ、ベン、わかってるね~と言いたい感じ)

僕の好きな「でも、やるんだよ!」映画です。

大変な仕事、上司はダメで命令がコロコロ変わる。そもそも成功できるか分からない難しいミッション。おかげで家庭はボロボロ。失敗すれば大変なことになるけど、成功しても栄光はない。

元から無茶な作戦なんだ。ここで逃げても誰からも文句言われないだろう。

でも、、、

「でも、やるんだよ!」

という映画です。

いいよ~、これ。