浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

がんばればいいんだよ、がんばれ

2012-10-06 21:52:08 | 
「がんばれ」って言葉があんまり好きじゃない。なんつーか具体的じゃないでしょ。

たぶん、この本に出てくる球児たちもそう思っているんじゃないかな。


開成高校というのは東京の私立の男子校(中高一貫)なんだけど何せ頭がいいことで有名。3年連続くらいで東大合格者全国トップ。そんな学校に野球部があるなんで知らなかった、ごめん。

ごめんついでに結構強いらしい、ごめん。2007年には東京大会でベスト16になっている。しかも最後の試合で負けた学校が甲子園に行っている。

その野球部を追ったドキュメント。

アメリカに「マネーボール」という本があって(映画にもなった)それが大層面白かった。メジャーリーグでもっとも選手の年俸が安い球団がどうやって金持ち球団に勝ったかというノンフィクションなんだけどここに描かれるのはまさに「弱者の兵法」だった。開誠高校野球部も正にそれ。

強豪校と違い野球エリートなんてほとんどいない。そもそも試験が難しいので入ることも大変。グラウンドにはナイター設備が無いうえに練習日も少ない。

そういう彼らがどうやって勝つのか。

もちろんそういう「マネーボール」的戦略も面白いんだけど、たぶんこの本のテーマは野球じゃない。もし野球だけなら野球にまったく興味のない僕は楽しめないもの。

じゃあ何がテーマなのか?

うーん、うまく言えないけどいろんなことなんだろうな。

部員はみな「理屈っぽい」。頭のいい子たちなんだろう。

ちょっと引用してみる。
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著者:いまの課題は何かな?
選手:問題は頃に対するアプローチですね。ある動作に入って球を捕って投げる。そのアプローチに対する対応力が僕はないんで。
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あのさぁ、そんなこと難しく考えているから勝てねーんだよ(笑)

いちいち彼らの話は理屈っぽくてめんどうくさい。いいから来た球ガーンと打てよ、と言いたくなる。

でもね、彼らが社会に出て、野球ではない何か、たとえば仕事に向かった時にこういう理屈っぽさって「論理的思考能力」と言われて重要になるんじゃないかと思う。

目の前の野球だけを考えたら彼らに「あのさ、それじゃダメだよ」と言いたくなる。でも彼らの10年後、20年後を考えると「そのままでいいよ」とも言いたくなる。

どっちがいいのかなぁ、と思うと僕が言えることはただ一つ。

うん、まぁ、がんばれ。

何と言うかまぁ。

がんばれ!