浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

一年にも満たない

2012-04-12 22:49:05 | 日記
「亡くなった人に対して生きている我々が出来ることは、その人のことをずっと覚えている、ということだけだ」 
 
人の死を聞いた時、僕はいつもこの言葉を思い出す。
 
村上春樹のエッセイに書いてあった。村上春樹自身の言葉なのか、それとも何かオリジナルがあるのかは分からない。 
 
誰かの死に触れた時にこの言葉は結構心の支えになる。
 
つまり、亡くなった人に対して自分が出来ることが一つだけでもある、と言う意味で。
 
今日、お通夜でした。
 
昔、一緒に働いていたご夫婦のお子さんが亡くなった。たぶん、一歳にもなっていない。
 
これは、辛い。
 
奥さんは僕より少し歳上で、旦那は僕より少し歳下。奥さんは本当に「気風がいい」 という感じで仕事でも姐さんみたいな人。旦那はいいかげん。でもまぁ逆に言えば人を許せる、ということかもしれない。
 
そんな夫婦が我々弔問人に対して真っ赤に目を腫らし、なんとか笑顔で、それでも時折ハンカチで顔を抑え嗚咽していた。
 
棺の中の小さな女の子はおしゃぶりをくわえ、知らなければ本当にお昼寝中とでも思ってしまいそうだ。 

この姿は辛い。

亡くなった人にひとつだけ、その人のことを覚えている、と言うことが出来るにしても、生きていたのが一年にも満たないのであればあまりにも支えが少な過ぎないか、と思う。

どんなものでも、どんな神でも(もしそんなものがいるなら)どうか今日の夫妻を少しでも癒して下さい。