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柴田典子の終活ブログ「エンディングノート知恵袋」

エンディングデザインコンサルタント柴田典子のブログ。
葬儀に関わらず「賢い老い支度」として終活全般のお話もしています。

妹が大きく見えた結婚式

2009年02月14日 | sibatanoriko?
妹の様子が変だと、母が気にしていました。
急に電話も来なくなり、連絡すると「忙しい」というばかり。

私にも思い当たる節がありました。
「娘が京都へ遊びに行きたいといってるけど?」と聞くと
いつもなら「何時でも来て!大歓迎」という妹が
「今チョット忙しいの、今度にして」というのです。

その直後に、理由がわかりました。
義弟がガン宣告を受け、手術を受けていたのです。
5%の成功率に妹夫婦は掛けました。
ガンと知っていたのは妹夫婦とほんの数人の親族だけです。

呉服屋をしており、お客様や取引先にも内緒の話です。
同居の両親にも内緒。
中学生の子供2人にも内緒でした。

背中には大きな傷跡が出来、ガンだけでなくその傷の痛みも大きな苦痛でした。
それでも、休みになると親子4人で温泉に出かけ湯治をします。
出来るだけ一緒にいるようにしていたのでしょう。

しかし、ガンの再発、急速な進行。
入退院の繰り返し、妹は殆ど病室に泊まりこみます。
ガン宣告から2年がたち、義弟は亡くなりました。
42歳。
長男は16歳、次男は15歳でした。

看病をする間、妹は私が知る限りでは一度も泣くことをしませんでした。
愚痴ることもなく、いつもニコニコして穏やかに義弟に付き添っていました。
そして、葬式も、その後も妹は悲しみをもらす事はありません。

子供たちは父親がガンとは聞かされていません。
でも、心の中ではそう感じ取ってたそうです。

父親の葬式のとき、長男は「将来、自分が後を継ぐ」と決めたそうです。

義弟は「自分が死んだら店は辞めろ」と妹につげていましたが
結局、女手ひとつで、何とか店を守ってきました。
その間に舅も看取っています。

長男は大学を卒業後3年間の修行をし、昨年店を継ぎました。
そして今日、結婚をしました。

どちらかと言えば無愛想な甥ですが、皆さんの祝辞から
「なかなか、気遣いのある頼もしい男」と意外な面を聞かされました。

お嫁さんは5歳年上のしっかり者のお嬢さんです。
彼女もお母さんを病気で亡くしています。

若い2人が考えた式は、親を亡くしてもその分の愛情を受けた
おじいさん、とおばあさんに感謝をすることです。
突然、名前を呼ばれた双方のおじいさんとおばあさんは
驚いて、オロオロしています。
金屏風の前に立たされ、プレゼントと手紙を貰いました。

その次に、結婚式をするために尽力してくれた
ホテルの担当者にも、感謝をしました。
これも突然の事で、担当してくれた若い女性は泣き出していました。

式の終りに妹が挨拶をします。
涙を浮かべても流す事はなく、落ち着いた笑顔での挨拶でした。

甥やお嫁さんが泣き出しても
そっと微笑んで見守っています。

さっき、妹と電話で話しました。
以前は義弟の背中に寄り添い頼りなさが見えた妹が
今日は、とても大きく見えたのです。
いいえ、今日だけではなく
義弟がなくなってから、ずっとそんな風に見えるのです。

妹は「亡くなった主人の代わりをしなくてはいけない。
今日もそう思っていただけ」といいます。


2年間の闘病は壮絶なものだったと聞いたことがあります。
亡くなった後も苦しい日々があったに違いないはずの妹ですが
それを聞くと「生きている時に、一生分の愛情をかけてもらったから
大丈夫」と答えが返ってきました。
これは彼女の本心だと思います。

ご遺族の悲しみに触れる機会が多い私ですが
本当にそんな気持ちになれるのか?
何かにつけ、ムッ!としてしまう私には
残念ながら理解しがたいのですが。