さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

攻略至難、されど至高の一戦間近 山中慎介、最大の難敵モレノと激突

2015-09-19 20:48:26 | 関東ボクシング



ボクシングの試合映像については、いろんなものを録画しては、PCのHDDに保存しております。
とはいえ、HD画質のものばかりになった昨今は、容量がいくらあっても追いつかないので、
以前ならなんでもかでも残していたものですが、さすがに取捨選択をしたり、試合によってはレートを落として保存したり、
あれこれ苦肉の策をめぐらせては、やりくりしております。

で、22日に迫った山中慎介キャリア最大の一戦に向けて、パナマの大師匠アンセルモ・モレノの試合は
果たして何試合残ってんのかね、とHDDの中を検索してみたら、6試合ありました。
シドレンコとの二試合、ダルチニアン戦、デラモラ戦、マレス戦。Youtubeで見つけたロリー松下戦、です。

まあ何もそんなことせんでもええのに、ちょっと「予習」しとこかな、なんて思って、ぼんやりと眺めてたら、
なんか段々気が重くなってきました。今更ながら、相当大変やでコレ、という...。


そんなことで、ざっと見返して、やっぱりこの選手、大変な難物、取り扱い要注意物件やなー、という感じです。
せっかくの大試合、いちおうプレビューめいたこともやっとこかな、というところで、以下、とりとめもなく。


===================================================


そういうことで、アンセルモ・モレノの防御から。
足捌き、柔軟な身のこなし、目の良さが、とにかく凄い。

普段練習しているジムで、より足に負担の掛かる、柔らかいマットの上でステップを踏んでいる様子が、
先日、日テレの番組で紹介されていました。
シドレンコ戦などが典型で、ゆったりした数少ないステップで、多くのパンチを外し、適切な移動を実現していましたが、
ここにその秘訣があります。試合の硬いマットでは、鋭いステップが踏めるわけですね。

身体は柔らかく、スウェー、ダックも自在。膝を柔らかく使ったダックの際、ほとんど目線を切らない。
そして目が良い。目で外す自信があり、小さい動作でパンチを躱すので、バランスが崩れず、反撃の手が良い姿勢で出せる。

ただし、ステップに無駄が無く、よける動作が小さい、大変結構なのですが反面、若干自信過剰になって打たれる場面も散見。
大抵は単発で済ませ、後続は断ち切ります。打たれても意外にタフな印象。
もちろん相手は世界上位ばかりなので、時に打たれて当然です。しかし、巧いゆえの陥穽もあるかなと。
今回、山中の左がまともに入って、後続を断つ余裕があるかどうかは、重要なポイントです。


攻撃について。
やや前傾で、手を前に出し加減の構えから、ジャブをポンポンと突き、左に繋げる。
これはサウスポー相手でも基本的には同じ。相手の強打を警戒すると、時に斜に構えることもあり。
おそらく今回の試合では、斜に構える時間帯が多くなるでしょう。最初からそうなるかは不明ですが。

ストレートパンチで距離を作れ、遠くからボディも打てる。相手にしたら非常にきつい。
基本的に軽打、時に機を見て左を強打、といっても7~8割くらいか。
しかしサウスポー相手の時は、意外に体重を乗せ、右肩越しにクロスを狙ったりもする。

山中との比較において、パンチ力では山中が上、と見られていますが、それは全体像としては正しいとはいえ、
モレノにパンチが無いかというと、それは違うと見ます。
むしろ、パンチが無いわけじゃない。なのに、敢えてフルに強打しない時の方が多い、というだけ。
山中が攻めあぐんで疲れ、バランスを失うようなタイミングがあれば、思い切り左クロスを打つ場面もありそう。
この辺はけっこう、怖いところです。


あと、試合運びは基本的に省エネ指向。若い頃からベテランみたいな試合運び。
今回見返した試合に限れば、何回もローブローをアピールし、休憩をもらう場面あり。
そりゃホントに打たれたのもありますが、そうでなさそうなのもあり、です。


で、山中慎介がこの難物をどう攻略するかですが、力ずくで左を振りかざしたりしたら、空転させられるでしょう。
まあ、そんなことはしないと思いますが。

基本的には、いつもの構えからジャブ、ワンツー基調で崩そうとするでしょう。
山中はスリーパンチを使うとバランスが前に出て、そこを打たれた試合が過去にありましたので、
バランスに留意しながら攻めてほしいところです。

具体的には右のジャブとフックを組み合わせた、ダブル、トリプルでのリード中心で攻めたい。
これでモレノのゆったりしたリズムを断ち切りたい。好打がなくてもポイントを拾うくらいの意識で。
モレノをポイント上、劣勢にしつつ闘えれば、その中で山中もいろいろ狙える確率が増えてきそう。
遠くからのボディに左を逆に合わせるとか。強引に押し込んで、揉み合いを増やしてもいい。

山中の左の威力、決定力は、いかなモレノにとっても脅威ですが、それでもなお、
狙って倒せる相手ではない、と思えます。
偶発的に強打が決まる、というのも、少なくとも序盤は難しそう。
試合がよほど上手く運べて、終盤にモレノが疲労していれば可能性はあるでしょうが。

基本的にはポイントで勝つ意識で、そのための手立てを何重にも用意し、辛抱強く闘えば、
その中で倒す機会があるかもしれない。でもそれを当てにせず闘うことが肝心。何やら禅問答みたいですが。


===================================================


本当にとりとめもなく書いてしまいましたが、この試合はとにかく世界最高峰のバンタム級ふたりによる
アルファベット要らずの「世界バンタム級タイトルマッチ」と呼ぶに相応しい一戦です。

脅威のダウンシーン製造機、山中慎介と、ラテンアメリカが生んだ技巧派の最高傑作、アンセルモ・モレノ。
まったく持ち味の違うサウスポー同士が、その力と技を競い合う12ラウンズの緊迫は、
派手な展開や結末があれば当然、そうでなくとも、見る者の目をリング上に引きつけて放さないものになる、そう確信します。


チケットが完売、当日券販売無しという事実が、この試合への評価を、すでにして決めてしまっていますね。
世間様は、他の試合とどこがどう違うのかわからんという向きも多いんでしょうし、玉石混淆の現実を受け容れた上で
体裁を取り繕っているしわ寄せが、こういう真の大一番を闘う選手に来てしまうことには、何とも言い難い感情がありますが、
そうした不満も、このふたりがリング上で対峙している間は、すっかり消え去ってしまっていることでしょう。

その至福、至高の時間が、もうすぐやってきます。
山中慎介、アンセルモ・モレノ、両選手には、試合前から感謝の気持ちでいっぱいです。
大いに楽しみたい一戦ですね。


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 圧倒したが快勝ではない、し... | トップ | ひまわりホールの激闘 大内... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (宇弓)
2015-09-20 14:34:24
いよいよっすねえ(燃)
なんかビックリするくらい山中が快勝しそうな気がして、自分でも不思議なほど妙な安心感に包まれていますが(優笑)

あのモレノのスタイルはまさに専守防衛の王者のスタイルで、
敵地で挑戦者としてあんな自分から出ない横着なスタイルもやりづらいでしょうし。
ウソでも最初は攻め気を出して、自分から出て山中を警戒させないとポイントも取れないだろうし、
そんな慣れない先制攻撃なんてやったら、体あったまってないうちに山中パンチまともに食らって、あっさり軽いダウンの1・2回は取られるんじゃないかと。

あとは身も心も平静取り戻せないまんま中盤くらいでぼっこ凹と、
まあ畑山とセラノみたいな展開を、脳内妄想全開で予想したりしてますが(楽観笑)

さあさあなんにせよあと2日!!
もし山中がぶっ倒しちゃったら、まさに井上が買った以上の衝撃がチケ完売の大田区に走るでしょうね。

山中!!そんな瞬間を遠方から来る皆さんにも、ゴールデンのお茶の間で見てる全国のお客様にもバシッとと見せたってや!!(願)
返信する
Unknown (武衛)
2015-09-20 15:55:38
この試合に向けて色々と整理すると、改めて、山中という男は不思議なボクサーだな、と感じます。基本的には右ジャブとワンツー、それにストレート気味の右アッパーくらいしか攻撃パターンがなく、『神の左』とか言われる強打さえ凌げばポイントメイク出来そうな人なのに、何故か気付けば相手はキャンバスに突き落とされている。それだけ硬質で恐ろしい破壊力を秘めた打撃なのでしょう。その辺は天賦の才そのものであり、望んで得られるようなものではありません。

モレノについては、バンタム級版ナルバエスという印象が強いです。一流には違いないが、リゴンドーやドネアほどではないし、パワーがある訳でもない。プレスして圧力を掛ける事は可能だし、意外と足を止める事もある。井上は自分ならボディから崩すとコメントしましたね。プレスしてボディにダメージを蓄積させ、意識を少しでも下に向けさせるのが一つの常道になろうかと思います。

モレノは自分の打たれ強さにそれなりの自信を抱いているでしょう。一発、二発くらいなら致命傷にはならないと踏んでいて、右も左ほどには警戒していない。しかし山中の硬質なパンチをボディでも腕ガード上でも受けたら、それだけで逃げ腰になるのではないでしょうか。井上のパンチを一発貰っただけで顔色が変わったナルバエスのように。モレノは『動いている』時は見事な防御を見せますが、アブネル・マレス戦のように『動かされている』場合はそこまで見事な防御にはなりません。いかに後者の状態に持っていくか。モレノに「これはまずい」と思わせるか。それが上手く行けば、案外早期KOもあるかも知れません。

もしこの一戦で結果が出たならば、最早バンタムに居る意味もないのですから返上し、激戦区スーパーバンタムに移るべきですね。ビッグマッチ志向ならばなおの事。以前話していたサンタクルスはフェザー級で訳の分からない王座を拵えられて色んな意味で遠い存在になりましたが、代わりに以前から鎮座する『スーパーバンタム級王者』リゴンドーや、今度クイッグと試合するドネアが居ます。特にドネアは、本当なら山中が挑む筈だった人物であり、同門西岡が為すすべなく屈した相手でもあります。相手とするには申し分のない男です。巷の情報では、山中は自分にアンチが居る状況を気にしていて、自分の実力を証明する機会に飢えているとの事でした。今度の試合と、その後のスーパーバンタムで繰り広げられるであろう戦いは、まさにその絶好の機会です。三浦共々、世界雄飛の好機を自分の力で掴み取って欲しいですね。
返信する
Unknown (武衛)
2015-09-20 17:41:46
追記。クイッグ・ドネア戦は消滅したんですね。失礼しました。しかしスーパーバンタムに上げれば戦う機会もあるのは確かです。
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2015-09-20 22:42:58
>宇弓さん

うーん、そういう風になってくれたら凄いことですけどねぇ。私は予習だか復習だかわからんですが、今更映像見返して、不安になってしまいましたけども。
確かに山中が左でどんどん脅かしていって、という展開で抑え込めば判定でも有利でしょうし、捉えられればなお良し、ですね。ただ、山中の攻撃をうまく外す立ち上がりになれば、そこから自分の良いように試合を回していく巧さは相当なもので、最悪のパターンもありそうです。そうなったら敵地もへちまもないような、クリアな判定を勝ち取ってしまうでしょうね。
私としては大接戦になる、というのが一番現実に近いかな、と思っていますが...何にせよ、クリアに勝ったらそれだけで凄いことですよね。もちろんそれを第一に期待して会場に向かいます。

>武衛さん

山中の強打はシンプルである強みと、それを前提にした小さい技術の組み合わせによって、その威力がより積み上げられているということなのでしょうね。ストレートパンチによるボディ攻撃が出来れば、ぐっと展開が楽になりますが、さてそれを許してくれるかどうか。おそらくモレノは攻防両面において、即座に対処をしてくることでしょう。それを見てさらに次、山中が何をするか...という具合に、見所が矢継ぎ早にやってくる、一見地味だけど目まぐるしい、実はスペクタクルな一戦になるかもしれませんね。
私はモレノの「警戒心」については、過去の試合のどれよりも高いレベルのものが見られるのではないかと思っています。山中の実力、彼の現状を考えると、悪しき意味での余裕はかなぐり捨ててくる面があるのではないか、と。

今回勝てると仮定して、上のクラスへの展望はあってほしいし、期待しますね。ドネア戦などはまさに垂涎の試合です。間違って日本でやってくれませんかね(笑)実際は山中が「B面」扱いを受けることも事実でしょうが、そうした問題がモレノ戦の勝利という結果、或いは内容によって、少しでも解決に向かってくれれば最高ですが。

しかし山中に「アンチ」がいるんですか。初めて知りました。いったい何見たら気に入るんですかね、そういう人って。


返信する

コメントを投稿

関東ボクシング」カテゴリの最新記事