さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

「再挑戦」のために必要な「証し」 伊藤雅雪、パーフェクトな再起飾る

2021-07-04 18:29:41 | 関東ボクシング




ということで昨日はG+、伊藤雅雪vs細川バレンタインの生中継がありました。
簡単に感想。


初回から、伊藤雅雪の気合いが並々ならぬものと見える。
それは表情のみならず、ジャブで探って右を厳しく叩くボクシングからも見て取れました。
細川バレンタインとて、間合いを外さずに対し、反撃する「ルート」を探り続ける姿から、同様の決意が見えましたが、戦局自体は一方的に、伊藤の優勢へと流れていきました。

2回も同様の流れ。伊藤、左を伸ばして右を肩越しから。3回はそこに右アッパー、左ボディが追加される。
この回バッティングがあり、伊藤の右目周辺が少しだけ切れるが、大勢に影響はなし。

4回、細川も左ジャブ、右からアッパーと返す。両手下げ気味の構えなら、このくらい攻め手がないと話が合わない。
しかし5回、細川の右を外して伊藤が右カウンターする。この辺は伊藤のセンス。
そして古い表現ですが「ホイップ・パンチ」という感じのスリーパンチが決まる。肩の力を抜いて、弾くような打ち方。

6回、さらに伊藤優勢。左で測って右、右で探って左。ラスト、左ジャブを力入れて打ち、その後左右6連打。
フロリダで勝った試合でも見せた、脅威のコンビ。
7回、細川のジャブを目で外し、バネ仕掛けのように右が返る。
8回、伊藤が右ヒットから猛攻。手応えありか。クリンチを試みる細川を突き放し、右のパワーパンチが入ったところでレフェリーストップとなりました。


試合全般に渡り、伊藤の良さが十全に出た試合でした。
元々センス抜群で、細川のジャブを外すヘッドスリップや、カウンター、リターンのタイミングなどにそれは出ていましたし、加えて世界王座獲得の過程で挑んだスタイル変更...好機に見ず、追撃を狙い、さらに厳しく詰めるボクシングが、クリストファー・ディアス戦に近い形で実現されていた、と思います。

それは心身共に、そうとう厳しく追い込んで仕上げてきたから、とも見るべきなのでしょう。
知る限り、伊藤は一切言いませんが、昨年の三代大訓戦は、やはり調整段階で無理をしていた面があったのでしょう。
今回の試合を「この伊藤なら、もう一度三代と闘えば」と見る者に思わせるための闘い、だと見做すなら、100点満点の試合だった、と思います。
解説の浜さんが試合後に語った、世界云々という話を持ち出せば、5点減点、ではあるにせよ。



対する細川バレンタイン、完敗でした。
間を外さずに対峙し続け、カウンターも狙いましたが、大半は外され、終わってみれば負ったリスクに見合うリターンは何一つ得られず、と言わざるを得ない内容でもありました。
しかし、彼のやり方で「勝負」をし、結果は撥ね付けられてしまいましたが、それでも見応えある試合を作った。
彼もまた、この試合の、もう一方の「主役」ではあった、と見ます。健闘でした。



と、こういう良い試合を見終えて思うことは、日本のライト級はやっぱり、なかなかの充実、盛況だなあ、ということです。
ロマチェンコの牙城に挑んだ中谷正義、国内タイトル独占の吉野修一郎、そして元世界王者伊藤、その伊藤を破った三代大訓、いずれも世界ランカー、或いはそれに準ずるレベルの実力を備えたボクサーばかりです。

おそらくですが、20年前にWBA王座を争奪した畑山隆則、坂本博之らと比べても遜色ない、或いは上回る実力を持つ顔ぶれだ、と言えるでしょう。
坂本博之が「平成のKOキング」として浮上した頃と比較すると、坂本ひとりが出たら、あっという間に挑戦者枯れ、日本王座返上、という流れになってしまった、あのお寂しい時代が、ウソか笑い話のようですらあります。

こういうクラスが日本にあることを、ファンとして素直に喜びたいと思います。
そして、このクラスの「決勝」戦と目される試合の実現を、まずは期待します。そして、今回そこに「再挑戦」する資格を勝ち取った、と言える、伊藤雅雪の存在も、加わっていてほしい、と。

見る者にそう思わせる、認めさせる、充実した内容の完勝でした。伊藤雅雪に拍手です。お見事でした!




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4 コメント

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Unknown (アラフォーファン)
2021-07-04 20:17:40
まずは良い時の伊藤くんでしたね。世界防衛戦あたりからちょっと崩れだし、三代くん相手の時は雑な試合になってましたがしっかりあのスムーズなワンツースリーと打てる連打にボディも良かったです。細川さんが動きがあまりなかったのと、元々二階級上の体格を使いもっと揉み合いするかと思ったらそれもしないので、良い形になった面もありましたが。
ただ年末の霧は晴れつつありますね。さて、吉野さんはそろそろでしょうか。今名前ある選手たち、いきなりSL級のベルト返上した鈴木くんも含め、粒揃い。そろそろ、対決を見たいです。
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Unknown (海の猫)
2021-07-04 21:10:49
伊藤が素晴らしかった!左が非常に多彩で効果的、相手をしっかりと見た丁寧なボクシング。慎重に戦いながらも攻める時はしっかり攻める。再起に向けて、自身のボクシングを今一度しっかりと作り直してきたように見えました。改めて伊藤のセンスの良さや恵まれた身体能力に惚れ惚れしました。
対戦相手のタイプが違うので一概には比べられませんが、やはりここ最近の試合では自分を見失い、ボクシングが雑になっていたと思います。今回は本当に「いい顔」をしていましたし、強い伊藤が見られたことを非常に嬉しく思います。

この階級では世界どうのというのは簡単には言えませんが、国内だけでも魅力的な組み合わせがいくつもあるので、まずはそれを期待ですよね。吉野と三代は三代のコメントによれば、自身の怪我でタイミングが合わなかったとか。次はまずそこが組まれるのか、スケジュール的に別もあるのか。いずれにせよ楽しみです。
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Unknown (hiro)
2021-07-05 01:00:03
さりげない動きですが、この試合G+の後に、A-Signチャンネルでも放映されるとか。お金など色々と大変とは思いますが、やはり多くの方に見てもらいたい選手の試合が、その機会増えたことが嬉しいです。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2021-07-05 18:03:43
>アラフォーファンさん

推測ですが、世界王座陥落後、階級の選択が定まらなかったのかも知れません。基本、ライト級ながら、国内興行でスーパーフェザー再挑戦の可能性もあったらしいですし。ライト級に的を定めた後、肩の負傷に疾病と続き、そこに三代戦というのは、色々難しかったのでしょうね。体調面からだいぶ違って、伊藤の良さがかなり出てましたね。細川はあの正直な対応の仕方で「勝負」して、その上で勝ちたかったのでしょう。勝ち負けだけを言えば厳しい結果ですが、彼がやろうとしたこと自体には、敬意を払いたい、と思った次第です。
吉野は仲里周磨、三代は西谷と、これもなかなかのカードを勝ち抜かねばなりませんね。その後も楽しみですが、それ以前もまた同様です。


>海の猫さん

良いの当てたあと見る、高度な狙いを持ち、鮮やかな勝ち方を思い描く選手ならではの現象ですが、その才能にかまけたボクシングでは上は目指せない、という自覚をもって、自身のスタイルを改造した希有な例としての伊藤雅雪が、その良さを再び取り戻した、と見えた試合でした。ボクシングの質は、今後も維持されると期待していいのではないでしょうか。さらなる怪我や病がなければ、ですが。
記事に書いた4名以外にも、鈴木雅弘が降りてきますし、仲里や西谷も充分魅力的な「惑星」です。色々と見どころありですし、実際の試合でそれをひとつでも多く見せてほしいですね。


>hiroさん

また動画貼って告知したいと思っています。些少ながら視聴の機会が増えればと。また、最初から最後まで、見どころ多い試合でした。結果以前に、その中身を見る価値がある試合でもありましたしね。
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