さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

田中亮明、逆転ならずも銅/プロが普通に出る五輪、ならば

2021-08-06 07:06:42 | 関東ボクシング



昨日のフライ級準決勝、田中亮明vsカルロ・バーラムは、もうプロがどうアマがどうというのを通り越して、ボクシングの凄まじさが凝縮された、凄い試合内容でした。

田中はスタートから前進して、ワンツー、ボディアッパーを打ち込みに行くが、パーラムは右で応戦、というのみならず、その前に細かい足捌きを見せ、後退して上手く間を取った上で、当てて来る。
準々決勝では、余裕を持って「見下ろす」構えで来たゾイロフ相手に、機動力を生かしてヒットを取っていたが、田中の圧力を受けても同じように「やれる」ところを見せて、2回までをフルマークで連取しました。

3回、10-8に出来てもイーブン、という、RSCに持ち込みでもしないと勝てない、絶望的な状況。
しかし田中は、本当に逆転を狙い、左右を強振して出る。少々打たれてもおかまいなし、関係ない、という風。
文字通り「捨て身」の猛攻に、パーラムはヒットを返しつつも、その気迫に圧されていたように見えました。

しかし田中の思いは届かず、判定となりパーラムの勝利。田中亮明の東京五輪はここで終わりました。
準々決勝の試合後、こんな状態だったと報じられていますが、張り詰めた心身はおそらく、限界に近かったのでしょう。
加えて、コロナによる一年の延期も含め、様々な苦難があったことでしょうが、それを乗り越えた上でのこの闘いぶりは、文字通り全身全霊を込めた、という表現がぴったりで、見ていて圧倒される思いでした。


過去に田中亮明の試合は何度かちらほら見たことはありましたが、今大会の試合ぶりのような強烈なものを感じたことは、正直言ってありませんでした。
五輪の地元開催というものが、これほど選手を奮い立たせるものなのか。だとするならば、諸手を挙げて祝福されざる?ものであったとしても、東京で五輪を開催した甲斐は充分あったというものだ、と言ってしまいたくもなります。
まあこれは、ボクシングファンとしての独善でしかない戯言ですが。


ということで女子ふたりに、男子ひとりのメダル獲得という結果を出して、東京五輪ボクシングの日本代表は闘い終えました。
ウェルターの岡澤セオンも、結果として金メダル獲得のロニエル・イグレシアス相手に「2-0」の判定を出していたり、ミドル級の森脇唯人を破ったキズニャクも決勝進出を果たしていたりと、メダルに届かなかった選手も、語られるべき試合を残した、と言えるでしょう。
総じて、全選手がほぼ、持てる力を出し切った、非常に充実した試合内容ばかりだった、と思います。成松大介の負傷棄権は残念でしたが。

日本のアマチュア(とされる)ボクシング界には、他にも優れた選手が沢山いますし、例えば堤駿斗が出場していたらどうなっていたかな、と。
今後、プロだけではなく、こちらの様々な大会も改めて、かなう限り見ていきたいものですし、そう思う人が今後、少しずつでも確実に増えていくだろう、とも思います。



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ところで、日本では今大会と前後して、プロ転向する選手が数多く出ていますが、今回の五輪では、すでにプロキャリアが数戦ある、という選手が何人も、普通に出場していました。
アメリカならまあ、そういうものかなと思いますが、ロシアや中央アジアにもちらほら。時代は変わったものだ、とここでも改めて。

一例として、昨日、フェザー級の決勝で敗れたものの、銀メダルを獲得したアメリカ代表、デューク・レーガン。
こちらの動画にあるように、すでにプロデビュー済みだったりします。
トップランクが銀メダル獲得を祝して、再アップした動画です。ご紹介。







仮に日本で、それこそ上記の堤駿斗がプロデビューして、プロキャリアと平行して、とは行かずとも、数試合経験した後、パリ五輪を目指す、としたら....想像するだけで楽しいですね。それは他の選手でも同様に。
何しろ、ルール上、出場資格さえ獲得出来れば、プロが五輪に出ていても全然OKなわけですから。
日本のボクシング界も、世界の趨勢の良いところはどんどん取り入れ、様々にある垣根を取っ払って、協力し合う関係を築いて、発展と繁栄を目指してもらいたいものです。



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もうひとつ、明日行われるフライ級の決勝戦、田中を破ったパーラムの相手はガラル・ヤファイといって、あのカリド・ヤファイの弟とのこと。
サウスポーですが、顔は兄とそっくりで、闘いぶりはパワフルな前進から強打を繰り出す、下手なプロよりもプロ仕様、という感じのもの。
今すぐプロの世界戦に出して、エストラーダやロマゴンあたりと「ド突き合い」が出来そうな、というと大げさかもですが、本当に私のようなものが短絡的に思い描く「アマチュア」のイメージからは、だいぶかけ離れた選手です。
この選手とパーラムの対戦というのは、これはなかなかの見ものではないでしょうか。
将来、プロの世界タイトルマッチで対戦していてもおかしくないような、という気もするくらいです。要チェックです。さいわいなことに土曜日ですし、是非見たいものですね。




コメント (4)
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