ということであと2階級。ライトフライ級ですが、これまたお馴染みの顔ぶれ。
マガジンによるエントリー、一回戦は以下の通り。
ローマン・ゴンサレスvs寺地拳四朗
イラリオ・サパタvs具志堅用高
柳明佑vsウンベルト・ゴンサレス
マイケル・カルバハルvs張正九
ローマン・ゴンサレスをライトフライに置くというのは...やはり階級またぐ選手は難しいですね。
エストラーダ戦以外、強敵との闘いはないので、ピンとこないところもあります。
ミニマム級に置いても良かったかもですが、それやると外さないといかん人が出てくる...。
井岡一翔との「スーパーvs正規」統一戦(書いてて、馬鹿らしくなってくる単語ばかりです)が行われず、井岡が防衛戦を重ねるのと平行して、何故かロマゴンの方がノンタイトルマッチを続けているという、あの倒錯した状況は、今思い出しても異様の一語でした。
しかし当然、強いことは強い、それにエストラーダ戦という良い試合があってくれたので幸いです。
動画あれこれ貼るまでもないですが、ライトフライとなると、やはりこれは、ということで。
フルラウンドもありますんで、未見の方は是非。良い試合です。
WOWOWで見たとき、不勉強なもので、エストラーダのことは何も知らず、驚いたものです。
さて、寺地拳四朗。
長谷川穂積去りし後、毎日放送「せやねん」の看板ボクサー?となりつつありますが...。
デビュー戦から全試合、映像なり観戦なりで見ています。
アマチュアの頃から、プロ関係者の間でも評価が高かったらしく「お父さんがあの人(寺地永会長)じゃなかったら、プロ転向の際、争奪戦になっていた」という話でした。
小粒ながら技巧派として、どこまで行けるかな、という見方をしていましたが、最近はもう、世界上位の強豪をさりげなく倒してしまう凄みを身に付けています。
「ニッコリ笑って人を斬る」スマイリング・アサシンです。ここまで強くなるとは、想像を超えています。
ロマゴンと共に、現役でのベスト8選出ですが、現状の108ポンド級ボクサーとしては、世界最強の評を得ている、と言っていいでしょう。
動画ですが、拙ブログで以前貼った、昨年末の試合を取材した「せやねん」を。
しかし、色々あって、洗濯機どころじゃなくなってしまいましたかなー。
あ、世界戦まとめ動画も。この人のまで作ってあるんですねー。素晴らしい。
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ロベルト・デュランが、パナマ・ボクシングにメキシカンの攻撃性を加えた異端のファイターだとすれば、パナマにおいてはこれが正統派というか、主流と見るべきタイプのボクサー。
パナマの軟体サウスポー、日本のボクシングファンにとっては「仇敵」たるイラリオ・サパタです。
中島成雄、友利正を二度ずつ破り、穂積秀一も退けたという結果もそうですが、その試合内容が歯痒いというか、もどかしいというか。
中島、友利は初戦では惜敗、という感じながら、再戦で「今度こそ」と向かっていくと、前回とは違って差を付けられ、というに留まらず打ち込まれ、という負け方でした。
穂積秀一も、ラシアル戦の挫折を経て、それこそ「これでもか」と国内上位や王者クラスとのライバル対決を重ね、試練を乗り越えての再挑戦だっただけに、何とも悔しい敗戦だったと思います。
また、その防御重視、というか、いちいち目端の利いた闘いぶりは、当時の日本におけるボクシングファンの感情を逆なでするところがあり「憎たらしい」と見る向きが大半でした。
今の目で見れば、何も...特に汚い真似をするでなし(ちょっとだけしてましたかね...)相手のパンチ避けるのが悪いんか、という話なんですが、やはり人が心で思うことは止められず、フラットな目で評価する、という風ではなかったかもしれません。
しかし時代は少しずつ変わるもので、チキータやカルバハルが世界王座を獲る前、確か「ゴング」系の格闘技雑誌に、増田茂という若いライターが、ジュニアフライ級史上最高のボクサーは誰だ、というテーマで寄稿していて、そこで具志堅、張正九、柳明佑よりも、サパタをベストに選出していました。
ああ、日本のボクシング評論でも、こういう評が出るようになったんやなあ、と感心したのを覚えています。
そもそも、単に技量力量を云々する以前に、ライトフライ級で戦った相手の顔ぶれを比べるだけでも、カスティーヨ、中島、メレンデス、オリボ、ヘルマン・トーレス、ネトルノイ、ウルスア、友利、張正九らと闘ってきたサパタが一番上、という見解があったとて、何の不思議もないのですから。
ただ、試合ぶりは、結果知ってから見るには退屈だ、といえばそうかもしれません。きっとそうです。
ですんで、良いハイライトないかな、と探したら、画質が良く、網羅された試合もほぼ完全、というものを見つけました。
ただ、またしても横幅がアレだったんで、自分で直して上げました。近々消すかも知れません。お早めに。
唯一、試合として見て面白いというか、スペクタクルといえる試合があるとすれば、皮肉ですが負けた試合です。
第一次の王座から転落した、アマド「パンテラ」ウルスア戦。
クーヨ・エルナンデスに、強打者だがもう衰えた、と見限られていたというメキシカン相手に、短くも激しい打ち合いを繰り広げ(てしまい)、番狂わせのKO負けを喫した一戦です。
技巧派とか慎重とか、日本では言われましたが、元々の喧嘩坊主の血が騒ぐのか?けっこう打っていくときもありました。
それでも食わないから流石、となるのが常でしたが、この試合は、そうはいかんかったらこうなる、という事例ですね。
さて、国際的評価ではファイティング原田に劣るものの、国内での評価はそれに匹敵し、歴代最高のボクサーと評されることも多いサウスポー、具志堅用高。
ルイス・エスタバの11度防衛の記録を更新した際には、国民栄誉賞の授与も取りざたされたくらい、ボクシングの枠を超えて広範に支持されたスーパースター。
日本歴代最多の13連続防衛記録は、いまだに破られていません。
バランスが良く、右リードが多く出て、高いガードから重心をしっかり落としてボディストレートが打て、左右のコンビネーションが滑らかに繋がる。
サウスポーは受け身に闘い、左合わせ、右引っかけて回っていればいい、という従来の常識を完全に終わらせた、新時代のサウスポーとしても、特筆されるべき存在だと思います。
ただ、辛辣な評としては「原田はプロの3割5分打者、具志堅は高校野球の5割打者」という比喩で、対戦相手や試合の質を厳しく見るものもあります。
それも一理はあるのでしょう。
フライ級王者カントや、対立王者サパタ、さらに言うなら国内最強を誇った天竜数典との対戦などは実現しませんでしたが、本人曰く「相手はTV局とジムが全て決めて、自分の希望が通る余地はなかった」とのことで、その思惑の範囲内でしか闘えなかった。それはもう、本人には如何ともし難い話だったのでしょう。
(ちなみに「カントやサパタのような巧いタイプは得意だった。仕掛けて、崩して、勝つ自信があった」とのことです)。
まあ、様々な限界があったのは事実です。しかし、スーパーバンタムのゴメスと共に、軽量級の新設階級を大きく発展させる大活躍を見せ、その闘いぶりは、ゴメス同様、長期政権の王者らしからぬ、攻撃的かつ爆発的なもので、単に勝てば良い、というのでなく、必ず倒す、圧倒的に勝つ、という強固な意志に貫かれた、志の高いものでした。
今はジム会長のみならず、タレントとしても有名になりました。
現役時代を知らない世代向け?に、その試合ぶりを見せるという番組が作られることがありますが、まるで猛禽類が獲物に襲いかかるようなその姿に、驚嘆の声が上がるのが常です。
それが何より、具志堅用高というボクサーの価値を現している、と思います。
動画はまたまたこちらのものを。
ところでセサール・ゴメス・キー戦って、一度見てみたいんですが、無いんですかねえ...。
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防衛回数で言えば最多、17度防衛の記録を持つのが柳明佑。
強打者ではないはずですが、世界王者になってからは意外にKO防衛も多く、相手のレベルが高いと映えるタイプと言えるかも。
ガードを高く上げ、コンパクトなフォームで連打して攻めるボクシングで、張正九と並立しての王者在位時代は、韓国ボクシング界、最後の黄金時代と言えるものでした。
この人の試合は一度、直に見ています。府立体育館での井岡弘樹戦、第一戦の方でした。
まさかの王座転落でしたが、とにかく打つときに、しっかり当てる先を見て打っている...当たり前や、といえばそうですが、こういう連打で押して攻めるタイプにしては、珍しいほど下を向かず、顔の向きがぶれないなあ、というのが印象的でした。
出した手数が高い確率でヒットして、故にきっちり攻勢が取れて、そこからさらに攻めの展開を繰り広げていく。それが出来るのは、あの目の力なのかもしれない、と思ったものです。
また、その果敢な闘いぶりは、批評家にも「感動的」と評されるほどのものでした。
中南米の強豪を多く下していた頃は、当時の日本のランカー陣では、到底攻略出来るものではないだろう、とも見えました。
しかし防衛回数が伸びる中、時にかなり格下の挑戦者(日本やタイ、インドネシアから)を選ぶこともあり、その辺はちょっと感心出来ないところでしたかね。
井岡に雪辱し、タイトルを奪還したのち、細野雄一に勝って引退しましたが、その頃、関係者が米国におけるマイケル・カルバハルとの対戦を企図していた、という話もありました。
結局、韓国とアメリカにおける柳の商品価値の落差を埋められなかったのでしょう、実現はせずに終わりましたが、出来れば見てみたかったですね。
あの頃の柳では厳しかったか、という気もしますが。
動画はハイライト、これも自分で直して上げました。近々消すかもです。著作権の関係で、音が出ません。
張正九、柳明佑の時代が終わりかける頃、メキシコから新たに現れた怪物候補、という触れ込みだったウンベルト「チキータ」ゴンサレス。
技術に優れ、強打を秘めた小柄なスイッチヒッターで、実際に返り咲きを狙った、敗れざる元王者、張を下すなど、当時軽量級ゾーンを支配していた韓国勢を攻略しました。
だた、最初の「喧伝」が凄かっただけに、実際に李烈雨(レパード玉熊にKO負け)戦で見たとき、割と無理をしない風にも見えて、そんなに衝撃的な選手でもないな、と思ったものです。
まあ、あの頃の韓国勢、世界上位相手に、力ずくで対抗するのはリスクが大きい、ということもあったのでしょうが。
しかし、西海岸やメキシコで見せる試合ぶりは、小さい身体を伸ばして打ちかかり、豪快に倒す、というものもけっこうありました。
日本ではリカルド・ロペスの方が圧倒的にファンが多いですが、強さと巧さを兼ね備えた、レベルの高いファイターでした。
意外にも、カルバハル以外の2敗が比国(パスクア)、タイ(サマン)でしたが、この辺は打たれて脆いとは言わずとも、平均以上に頑丈では無い、ということだったんでしょうかね。
どちらも地元の試合だったので、韓国遠征の試合と違って「勝負」して、それが裏目に出た、ということなんでしょうか。
さて動画。ハイライト、これも幅を直しました。近々消すかもです。
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史上初の軽量級100万ドルファイター、マイケル・カルバハル。
「小さな石の拳」という異名は、正直いまいち凄みが無いなあ、と思っていましたが、デビュー戦(後の世界王者グリグスビー)から、判定とはいえ、えらい打ち合いで、それ以降、試合の度に強烈KO、判定でも激戦の連続。こら凄い、と早々に納得させられました。
有名なのはチキータとの三試合ですが、ムアンチャイからの王座奪取、サラサール戦のワンパンチKO、メキシコの岩石サウスポー、ハビエル・バルゲスとの激闘など、凄い試合が多すぎます。
キャリア晩年になっても、コロンビアの怪物パストラーナや、後の4冠王ホルヘ・アルセとの試合がありましたしね。
大橋秀行と双璧を成すほど、軽量級にしては足を使わず、正対して打ち合う選手で、これで通るんなら最強だろうなあ、と思いましたが、負けた試合はチキータ戦含め、やっぱり動かれたら難しくなる、というところでした。
もっとも、生半可な相手ならすぐ捉えましたから、やはりレベルの高いところでの話ではありますが。
対戦することのなかった、張と柳のふたりによる「支配」が終わり、メキシカンのチキータと、メキシコ系アメリカ人のカルバハルが新たなこの階級の王となると、当然のように二人は直接対決しました。それも三度も。
この辺りが、日本や韓国のボクシング界との違いというか格差というか...歴然と違うな、と痛感するところです。
また、日本から井岡も大橋も、他の誰も挑戦していないのも、何とも...何ひとつ、新たに、変わったことをやる意志がないのだな、と、この辺りは当時、日本のボクシング界に対して、失望の念が沸き上がってくるところでもありました。
動画ですが、まず、レオン・サラサール戦のKOシーン。
ライトフライ級ですよ、これで...。
ロビンソン・クエスタ戦。
もうちょっと、体重相応にかわいらしいボクシングがありそうなものですが...(笑)。
主要試合のハイライト。
さて、防衛記録では歴代2位、しかしその激しい闘いぶりで、柳明佑以上に鮮烈なイメージを残す、小型アーロン・プライアー「韓国の鷹」張正九。
その闘いぶり自体の魅力に加え、日本が誇るチャンピオン、具志堅用高の記録を超える、という、韓国の国民感情を直截に刺激するテーマを抱えて疾走し、かの国の国民的スーパースターとなったファイターです。
韓国人ファイターの持つ闘志、タフネスと同時に、動いて外す防御もあり、スピーディーで多彩な連打を打ち分ける。
成り行き任せ、みたいな感じでスイッチするが、案外バランスを崩していない。
全盛期は特にそうでしたが、足がしっかりついてきていて、打つときは身体を回して打てる。
アタマはちょっと気になるけど、あくまで「当て」にはしていない、という印象でもありました。微妙な表現ですが。
低迷期の日本を尻目に、韓国人ボクサーの国際的評価を上昇させた旗頭であり、サパタを二試合かけて攻略した後、ヘルマン・トーレスとの三試合、大橋秀行との二試合、韓国人キラー渡嘉敷勝男や、若き天才チタラダとの激戦、死地からの生還という趣きだったイシドロ・ペレス戦での新記録達成など、その防衛ロードは、長くも激しいものでした。
83年、前年に友利正を返り討ちにしたイラリオ・サパタが、その次の試合で序盤にストップされて負けたという報は、当時のファンにとり驚きだったと思います。
弱冠19歳での戴冠戦から、トーレスとの再戦までのハイライト、とりあえず自分で上げます(笑)
探しても、あまり良いのがなかったので。近々消すかもです。
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ということで、各年代の二強に、ロマゴンと拳四朗を加えるというトーナメント。
なかなか難しそうですが、深く考えずに(これこれ)やってみましょう。
ライトフライの頃のロマゴンは、圧倒的だったミニマム、八重樫戦や米国進出で気合い十分だったフライと違い、ちょっと谷間の時期だったような印象あり。
足を使う拳四朗を捉えきれず、カウンターを徐々に被弾、好打もあるが悪く回る。僅差で拳四朗。
サパタが長いジャブ突いて、軽い連打を狙うが、具志堅が飛び込んで左ボディストレート、連打で対抗。
具志堅の波状攻撃をクリンチでも止めきれず、サパタ徐々に劣勢。後半は具志堅の攻勢がまさる。具志堅。
柳とチキータ、打ち合えばそれぞれ持ち味出して互角だが、困ったら足使って、なおかつ重いパンチで相手を止められるチキータがまさる。
カルバハルの強打迎え撃ちに、張がトリッキーに動いて襲いかかる。大激戦だが、小回りの利く張が競り勝つか。
準決勝、拳四朗vs具志堅。サウスポーを苦にせずカウンターで迎え撃つ拳四朗だが、具志堅の攻撃の厚みがまさる。具志堅。
チキータvs張、実際の対戦はチキータが勝っているが、全盛期なら張がスピードでまさり押し切る。張。
具志堅vs張、ラフでトリッキーながら正確に当ててくる張を、具志堅が左で捉える場面もあるが仕留めきれず。
ラフファイターがちょっと苦手な具志堅を、張が攻めきる。張。
うーん、こうなりましたか...と、他人事みたいに言っておりますが(笑)
まあ、どの組み合わせも楽しいですね。なんだかんだ言って、好きな選手ばっかですから。