さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

ヘビー級トーナメントは結果以前に壮観 誰も彼もが偉大

2020-04-20 09:18:53 | 海外ボクシング




ボクシングマガジンのオールタイムベスト企画、ヘビー級のトーナメント、以下が一回戦の組み合わせです。

マイク・タイソンvsウラディミール・クリチコ
ジョー・フレージャーvsジョー・ルイス
ジョージ・フォアマンvsイベンダー・ホリフィールド
レノックス・ルイスvsモハメド・アリ


ウラディミール・クリチコについては、最近の王者ですんで、敢えて動画は要らないでしょう。
彼の「ベスト」はいつ頃、どの試合か、と言われると、爆発力と不安定さを併せ持つ前半と、自重して安定した後、に大別できるそのキャリアを見渡しても、正直、どっちもどっちというと悪いですが、一長一短あり、ですね。
試合として見たら、クブラト・プーレフ戦は面白かったですが「ベスト」ではないし、アンソニー・ジョシュア戦も結果は負けですし。

ただ、タイソン戦はというと、その体格とのしかかり戦法で、タイソンを相当苦しめるだろうと思います。
前記事で述べた「ビンテージ」タイソンなら、それでも切り込んでいって、苦しみながらも勝つ...と思いたいところです。
試合として「面白い」のは、キャリア前半に当たった場合かもしれません。その場合、タイソン勝利の確率がより高まるでしょうが。


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ジョー・フレイジャーのベストは、アリの追放期間中、バスター・マシスを倒してニューヨーク州認定王座を獲得し、WBA王者ジミー・エリスを破って王座統一、そしてアリとの Fight of Century に至る頃、でしょう。
時期的には69年から71年。マシス、ジェリー・クォーリー、エリス、ボブ・フォスター、そしてアリを連破しています。
こちらが上記の5試合をまとめた動画。





フォスター戦のフィニッシュなど典型ですが、左フックは強振ですが大振りではなく、バランス復元は速いです。
従って下、上のダブルも滑らかに繋がり、相手にしたら防ぎようがないですね。
アリ戦の勝利に至っては、本当に感動的としか言えません。ファイターの献身、奮闘を見たくばこの試合を見よ、というところでしょうね。


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対するジョー・ルイスは、時代背景などを考えると、アリ以上のグレートなのかも知れません。
アンチヒーローたるジャック・ジョンソン、そして穏健な形で黒人の社会進出を実現したルイス、時代の変革を象徴したアリ。
この3人は、それぞれの形で時代を画したヒーローだと言えましょう。

ルイスは、正統派のスタイルと、強打をコンビネーション出来る攻撃力の高さが、この時代としては抜きん出ています。

こちらの動画は、マックス・ベア(新鋭時代に元王者をKO)、ジム・ブラドッグ(「シンデレラ・マン」を倒し戴冠)、マックス・シュメリング第二戦(かつて敗れた元王者に雪辱)、ビリー・コン(劣勢から「強連打」で逆転)、ジャージー・ジョー・ウォルコット第二戦(後の王者を逆転KOで返り討ち)の5試合です。





最初のベア戦などは、ヘビー級ボクシングにおける当時の常識と、ルイスの技術的先進性との落差が、ありありと。
ベストを選ぶならシュメリングとの再戦でしょうか。正確な強打による速攻の中に、ルイスの持つ破壊力、殺傷本能のようなものが存分に見えます。



フレイジャーvsルイスは、ジョージ・フォアマンが歴戦の疲弊を抱えたフレイジャーを捉えて打ち据えた二試合のように、ルイスがフレイジャーを捉えうるか、なんですが...正直、ちょっと難しいと見えます。
ベストのフレイジャーなら、ルイスの攻撃をリズミカルな動きを伴った前進で外し、左フックを決めてしまうだろうと。
動画の4試合目、ビリー・コン戦のように、左フックのダブルコンビネーションを外しきれない場面もあります。
ここはフレイジャー勝利、ということで。



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次のフォアマンvsホリフィールド、実際に対戦してますが、あくまでカムバック後のフォアマンと、ですので、ベスト比較となると、違ってくる...と見ます。

フォアマンのベストはフレイジャー(初戦)、ノートンに勝ったときで決まり。
こちらはフレイジャー戦。ジャマイカはキングストンでの開催。
アリを破ったヒーロー、フレイジャーのこの王座転落は、当時、正しく「惨劇」として見られたことでしょう。






こちらはノートン戦。これも、アリを破った男が「酷い目」に遭った、という絵ですね。







ホリフィールドは...正直、ベストはクルーザー級かな、と思いますが、負け越したとはいえリディック・ボウとの三試合、そしてタイソンを破った星が光ります。
あと、個人的には、転級間もない頃のマイケル・ドークス戦が好きです。





しかしベストのフォアマンなら、小柄なホリフィールドを小さいジャブで捉え、上下左右の「強連打」で打ち据えるだろう、と見えます。
ここはフォアマン勝利で。


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で、アリvsレノックス・ルイス戦なんですが...ルイスのベストというのが難しいです。
時期によってわかりやすく分けられないというか、良い出来の試合と、そうでないときがけっこう、ごっちゃになっています。
ゴロタ、ブラント、ボタ、ラクマン第二戦のような快勝系の試合、タイソン戦の完勝があるかと思えば、凡戦あり、油断負けあり、という具合で。

ハイライト動画貼っておきますが、ボクサーとしての見た目「ルックス」は若い時の方が良いですね。
もっとも実際、勝っていくために、あれこれとボリュームアップが必要なのでしょうが。





良いときの比較で行けば、かつて粂川麻里生氏が書いたとおり「ラリー・ホームズのジャブと、フォアマンの強打を持つ」怪物ボクサーパンチャーであるルイスが、60年代の快足アリを捉えられるか、という比較になり、かなり難しい予想になりますね。
ここはスピードの差でアリが上回る展開になるだろう、ということで、アリを推します。


ルイスの試合でいくと、ラストファイトとなったこの試合が一番好きかもです。
再戦してほしかった、と思う反面、この両者の「破壊力」を見ると、気軽にそんなこと言うたらいかんのではないか、という気もするくらい。
もはや恐竜同士の喧嘩ですね、こうなると。








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トーナメント一回戦は、そういうことでタイソン、フレイジャー、フォアマン、アリの勝ち残り、となりました。
自分で決めといてナニですが、これでは実際に実現した70年代のヘビー級対決にタイソンを乗せただけ、ですね。

ここから先は、タイソンがフレイジャーに勝ち、アリがフォアマンに勝ち(実際の結果そのまま)、決勝でタイソンがアリに勝つ、というところですが...。
ベストの比較、ということで考えると、本当に難しいし、実際にあったら本当に凄かっただろうなあ、と思います。
そして、徴兵忌避によるブランクを経て、ベストの自分を失ってもなお、フレイジャーやフォアマン、ノートンと「実際に」闘って見せてくれたアリは、その社会的な側面を取り除いて、単にボクサーとしてだけ見ても、やはり偉大だったのだなあ、と。

そんなことで、優勝はタイソン、と一応しておきますが、改めてアリへの畏敬の念が心中に生まれた次第、でした。
また、ヘビー級の歴史をざっと振り返る良い機会でもありました。ジョー・ルイスの勝ちっぷりなど、後世の目にも痛快に映りますし、誰も彼も、凄い王者ばかりですね...。
個人的にはウラジミール・クリチコより、ラリー・ホームズを入れて欲しかったと、最後にひとつだけ異論を(笑)



コメント (3)
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