さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

真正ジムの両雄、揃って予想以上の試合内容 山中竜也完勝、小西伶弥大健闘

2018-03-18 23:06:20 | 関西ボクシング




今日はCSフジNEXTにて、神戸での「ダブル世界戦」の生中継を見ました。
「セミ」から、簡単に感想を。


日本ミニマム級王座を返上した小西伶弥ですが、その次に、一階級上げて
いきなりWBA1位、カルロス・カニサレスとのWBA「正規」王座決定戦に出る、と聞けば、
ボクシングファンとしてはご多分に漏れない、厳しめの感想しか、持ちようがありませんでした。

ただし、この辺、もうあれこれ言い尽くされた部分を外して、
単にカードとして見れば、転級初戦で、元日本王者が世界上位ランカーに挑む、という一点に絞る、
という前提で、見ものではある。そういう風にも思いはしました。


カルロス・カニサレスは、田口良一と引き分けた試合を直に見たのですが、
足が良く動き、攻めればまとめて打てる、しかし多彩さはまだ、それほどではないか。
全体的には、世界ランカーとしてはまずまずの力あり、と見ていました。
小西は体格面でも不利だろうし、スピードでも劣りそうで、
どのように食らいついて「降りて」きてもらえるかだろう、と思っていました。


しかし実際試合が始まると、小西が体格、パワーで見劣りせず。
初回はヒット数でカニサレスが上でしたが、小西は打たれても怯まず、堪えもしない様子。
2回には執拗なボディ攻め。ローブローも散見されるが、レフェリーは注意せず。


カニサレスは田口良一戦でも、快調なスタートを切るが、ボディを打たれてから、
足を使い出す場面があり、真正ジム側は当然それを見ていたのでしょう。
カニサレスは打っても止まらず、逆にボディから打たれ、表情が早々に弱気になっていました。

ただ、小西は「これならやれる、攻められる」という、良い方の自信と同時に、
「これなら少々打たれても大丈夫」という、悪い方の自信、
善し悪し両方の自信を持って闘っているな、という印象も持ちました。
そして、打つ際、小西のガードが下がり、戻りが遅いのも目につきました。
日本タイトルまでの相手なら、この隙を鋭く突ける選手はいなかったでしょうが、
カニサレスならここを打てるだろう、とも見えました。


3回、カニサレスのコンパクトなワンツー、打ち下ろしの右が決まり、小西ダウン。
ダメージ甚大の小西、立ったがクリンチが出来るようになるまで、だいぶ時間がかかる。
その後はクリンチ、ホールドで食いつき、ゴング間際にはボディ打ちも出せるまでに回復しました。

「倒しどき」を逃したカニサレスに、豊富な練習量を思わせる回復を見せた小西が逆襲。
4回、右から左ボディ。カニサレスの膝が僅かに落ちる。
5回から7回、カニサレスは右カウンター、一本狙いで、後は足使うが、ボディ打たれて失点続き。
小西はボディ攻撃以外にも、6回は左フック、7回は右カウンターと、上への好打もあり。


このまま押し切れるか、もう一発、切れのあるヒットがあれば勝てる、と見ていましたが、
解説の長谷川穂積の「疲れてきつい展開に、カニサレスが慣れてくる」という指摘が、
終盤に向けて、徐々に現実になっていきます。

8回、カニサレス奮起、手数を出す。対して小西、やや手数減る。
9回、カニサレスは半ば背中を見せる「逃げ」足ながら、動いて手を出す。

10回開始前、カニサレス陣営はマウスピースを敢えて入れずに選手を出す。
レフェリーがチェックして、マウスピースを入れるよう指示。
セコンドが白々しく、マウスピースに水をかけ、カニサレスの口に入れて、再開。

10回、小西の左ロングフックがヒット。小西が取ったと見えたが、
11、12回は、もう足を使う余裕もないカニサレスが、打ち合いで手数を出す。
対する小西は、疲れからかスタンスが乱れ、打つフォームを作れない時間帯あり。
休みなくヒットとミスブローが飛び交い、場内歓声に包まれ、試合終了。


カニサレスの方に、ダウンを奪ったアドバンテージはあれど、
どちらがよりダメージを相手に与えていたかとなると、それははっきり小西の方だと見えました。
これは小西が勝ったなと思って、自分の採点を見返すと、114-113でカニサレスの勝ちになっていて、
自分の仕業に、自分で首を傾げていると、公式採点は3-0で同じくカニサレス。
しかも、思った以上にカニサレスにポイントが行っていました。

えー、そうかなー、と思いながら、自分の採点でも結果は同じ、でも得心いかん、という、
どこまでもアホな話ではありますが、見終えてそんな感じでした。

小西がボディ攻撃のダメージを与えて取った回はかなりあったと思いますが、
別の回でカニサレスが苦しいながらも当てて動けば、ボディのダメージは採点とは関係ない、
という、ラウンド一つずつが独立した採点対象である、という見方を厳密に適用すれば、
こういう数字にもなりうる、ということなのでしょうね。
というか、自分でそのように採点しているのだから、でしょうねも何もあるか、という話なんですが...。


いずれにせよ、小西伶弥はこの試合内容でもって、その評価を大幅にアップさせたと思います。
ミニマムの時よりも、減量から解放された好影響か、良い体格、体調を作っていて、
防御には課題あれど、田口良一と引き分けたカニサレス相手に、堂々たる奮戦ぶりでした。
世界を言うなら、せめて久田哲也と闘ってからにしろ、と内心思っていましたが、
充実期にある久田にも引けを取らない実力を示した、脱帽ものの試合内容でした。


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メインの山中竜也は、WBO4位のモイセス・カジェロスに8回TKO勝ち。
絵に描いたような「完勝」での初防衛でした。

カジェロスは福原辰弥戦しか見ていませんが(メキシコ向け放送の動画でした)、
アウトサイドからのパンチを執拗に、上下に散らし、打ち合いに持ち込むファイターで、
山中竜也がどれだけ巻き込まれずに済むかだ、と思っていましたが、
山中の自在な動きが、攻防共に光りました。


山中は以前見たときより、上体が大きく見えて、力みなく動き、
小さい動きで外し、小さい振りの左を当てていく、好スタート。
2回には左から、右アッパー。カジェロス接近するが、サイドに回って外し、打つ。

3回、カジェロスは左ボディ。しかし山中、左に回って追撃を外す。
4回、山中が左でコントロール。ジャブ、ボディから、右カウンター。
5回、カジェロス少し攻めるも、山中がボディから上とヒットを重ねる。
カジェロス両手を挙げて強がるも、こういうときは大抵...としか見えず。

6回以降もワンサイド、山中離れてよし、くっついてよし。
7回ジャブから右アッパー、離れて4連打。
8回左フックのカウンターで、カジェロス「決壊」寸前のぐらつきよう。
この回終了後に棄権、TKO。極めて妥当な判断でした。



山中竜也、難しいとされる初防衛戦とはいえ、昨今の事情は昔日のそれとは違うし、
相手との相性もあったでしょう。
しかし、それを割引いても、見事な勝利でした。

小まめに動いて位置を変えつつ打つ多彩な左、右アッパーも有効でしたし、
今、何打てば当たるかの取捨選択に、ほぼ間違いがなかった。
以前見たときよりも、総合的にレベルアップしていた印象でした。
この内容を見せられると、京口紘人陣営が構想しているという「統一戦」もアリかな、と思います。



山中竜也、小西伶弥は、勝敗では明暗を分ける形でしたが、
揃って、予想を上回る「出来」を見せました。
世界タイトルとしてどうこう、という点では、言えば不足も言えるのでしょうが、
今回の二試合は、真正ジムにとり「成果」と言いうるものだったのではないでしょうか。

共に今後が楽しみですが、山中は次、指名試合ということらしいです。
1位のロベルト・ランデロは、21歳で16勝11KO無敗とのことで、
これを乗り越えての「先」に期待です。
小西伶弥は、この試合内容で評価を上げたと思いますが、それを確定させるためにも、
世界再挑戦への過程で、久田哲也や、それに類する強敵との対戦を期待したいですね。



コメント (2)
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