さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

当たるパンチはあったけど/天衣無縫/スリルの中で闘う/逸材、またも停滞す

2014-03-26 17:52:57 | 関東ボクシング


月曜火曜と、ホールで観戦してきました。
二日続けてホールで試合を見るのは多分初めてだと思いますが、
出場選手と客層、興行の進行、雰囲気などが日によって微妙に違い、面白かったです。
主要試合について、以下、簡単に感想を。

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大竹秀典と中島孝文の再戦は、ファイター大竹がボクサーファイター中島を攻め切って判定勝ち。
初戦は見ていないのですが、見た方に確認したところ、前回は接戦、今回は、より差がついたとのこと。
私もクリアに大竹の勝利と見ました。一応つけた採点は97-93、大竹でした。

とはいえ、中島にも光るものがありました。ドリームジム三浦会長の指導を受けた
中島のバランスの良いスタイルと、右クロスの威力は目を引くものがありました。
そして、このパンチと返しの左フックは、何度か大竹をクリーンヒットしていて、
明白に抑えた回もありました。4回、7回などはこの好打で中島がクリアに取ったと見えました。

しかし、はっきりと「当たるパンチ」があり、当然それでさらに追撃をしたかったであろう中島は、
それを出来ずに敗れました。普通ならまともに打たれて怯み、試合展開を相手のものにされて
不思議でない試合で、大竹は果敢な前進と手数で間を詰め、中島が良いフォームで打てる機会を
最小限に食い止めて攻めきり、勝利しました。 

両者を別個の試合で見たら、見た目に鮮やかなのは中島の方かも知れません。
しかし、心技体を直接ぶつけ合うボクシングという闘いにおいて、より揺るぎない強さを持ち、
それを懸命に生かして闘う大竹が、中島の強さを半ば封じた、そういう試合でした。

再戦でまたも敗れた中島、好選手でしたが、当たるパンチがはっきりしていて、
でも追撃をさせてもらえない試合展開は、さぞや苦しく、辛かったことでしょう。
好試合でしたが、勝負の厳しさを強く感じた試合でした。

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天笠尚とビンビン・ルフィーノが月曜のメイン。
初めて直に見る天笠は、TVで見る以上に破天荒で、見どころ沢山、まさに「見もの」な選手でした。

サウスポーの強打者ルフィーノは、踏み込みの速さこそやや落ちていたものの、
左強打はまずまずの威力。左を打って右回り、天笠のリーチをかいくぐり打つ。
天笠はどう出るかと思ったのですが、基本、丁半博打みたいな感じで、
右を打って、当ててはいるが左をもらい、という、いかにも危ない序盤。

しかし3回、振りの小さい右でルフィーノを倒す。追撃してもう一度。
この辺はもう、天性というか何というか、理屈ではない感じ。4回も優勢。
しかし5回からルフィーノ立て直し、左を当てて右回りの流れが戻る。

天笠は割と、漫然と打たれては正面から追って右、という悪い流れ。
と思ったら、ルフィーノが右に出られないよう、ロープ際で左サイドに出て追い、右を当てる、
見事な攻撃も見せる。おお、と思ったが一度きり。この辺はようわかりませんでしたが、
7回にまた右ストレートを決め、ここは追撃で打ち込み、8回にストップ、でした。

もちろん天笠の試合はTVで何度も見ていますが、直に見るとまさに破天荒、天衣無縫、
出たとこ勝負もええとこですが、それでも勝つ。
抜群の体格、組み立てなどあまり関係ない?一撃の威力、天性のタイミングと当て際の強さなど、
あらゆる面で、えらいボクサーやなー、と感心するやら呆れるやら、でした。

でもそれもこれも含めて、見ていて退屈しない、魅力あふれる選手でした。
こういうのも、プロとして「有り」なのだろうと思います。
ただ、私ら客は面白がって見ていれば済みますが、周囲はハラハラし通しだったでしょうね。
試合後の山上会長もそんな感じの表情で、何とも可笑しかったです。

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火曜日はセミに赤穂亮が登場、確か日本では負けていない曲者リチャード・ガルシアと。

過去の試合でその巧さを見せつけているガルシアに、赤穂は自信満々で出る。
距離を詰めて、でもガードが下がっていて、なのに強気に出る。
左フックをガルシアのガードの上からでもお構いなしに叩き、下がらせた、と見えた
その直後に右を合わされ尻餅をつく、悪いスタートでしたが、すぐに立ってまた出る。

2回、またガードの上から左、そして右。これがガルシアの目に入ったらしく、ダウン。
ガルシア、一度立ったが目を押さえて膝をつき、カウントアウトとなりました。

赤穂が左フックを叩けばガルシアは右を合わせ、左ボディを狙えばガルシアは左を上に。
赤穂の攻め手とガルシアの対応が序盤からはっきり見えて、いったいどちらが勝るのか、と
思っていた矢先のエンディングでした。

赤穂は傍目には危ないと思う場面でも、逡巡無く攻める意志の揺るぎなさを感じさせました。
ちょっと物足りない風でインタビューを受けていましたが、この選手の思い切りの良さ、というより「強さ」は、
普通の選手のそれとはちょっと次元が違うものに見えました。
そのスリルは観客を魅了するものであり、そして同時に、彼自身が思う以上に危険なものでもある。
そういう闘いの中を、赤穂亮はこれからも、変わりなく生きていくのでしょう。そう確信した試合でした。

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メインは岩佐亮佑がリチャード・プミクピックとOPBF初防衛戦。
小柄ながら、低い姿勢から右を再三狙ってくるプミクピックに対し、
ジャブより速い左をヒットして突き放す岩佐でしたが、中盤から失速気味。

プミクピックは岩佐にストレートパンチで突き放されると手が止まるが、
右を振って攻める時はなかなか迫力があり、岩佐が出鼻に左右のアッパーを決めても
止まることなく攻めていました。

序盤は岩佐が余裕を持っていましたが、折り返しのあたりからパンチの切れ、力感が落ちました。
拳を痛めでもしたか、それともスタミナに問題があるのか、よくわかりませんが、
昨年見せた苦戦の試合と似た感じ。減量苦が原因ならば、転級もありうるのでしょうか。

恵まれた体格、リーチを生かして突き放す、相手の出鼻に力み無い構えから、
丁寧にストレートを連打する形のとき、岩佐には盤石の強みがありますが、
その形が崩されたときに、立て直しが効かなかった。
相手が正攻法で来れば巧く強いが、変則的なタイプにはちょっと苦しむ傾向があるのかも知れません。

小柄な相手を高い頻度で捉える左ストレートや連打、カウンターの狙いの鋭さなどには
逸材ならではの輝きがありますが、それがどのような理由であれ、同じ試合の中であんなに
光ったり消えたり、では、世界挑戦に期待、とはとても思えません。

出だしは良かったんですが、終わってみればちょっと残念な試合でした。
岩佐がこの停滞をいかに脱し、世界へと繋げていくか、不安ながら注目したいと思います。

コメント (2)
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