さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

大場、乱戦にも揺るがず

2010-11-20 22:29:21 | 大場浩平
今、私は、名古屋から帰りの近鉄特急アーバンライナー車中にてこれを書いている(ジョー小泉風に)。
ということで、今日は名古屋に行ってきました。来週のダブル世界戦の前哨戦的な意味合いもあり(笑)
中部のリングで、デビュー年もわずかの違いである、天才と呼ばれたボクサーふたりの激突。
しかし、大場浩平と中岸風太の対戦は、私の愚かしいまでに過大な期待を、その通りに満たしてはくれませんでした。


ジムの移籍、長期ブランク、親族の死を乗り越え、人生の伴侶も得たという中岸風太の人生は、
私が知らない間に、激動の季節を迎えていたようです。
わずかな間に、対処のしようもない数々の重大な出来事を経ての再起二戦目。
リングに上がった中岸風太は、闘志を抑えきれないかのように、赤コーナーに自らの身体をぶつけていきました。
そして花道に目をやり、まだ姿を現していなかった大場浩平の姿を、探しているようでした。

大場浩平は対照的に、静かにリングに上がりました。
しかしその顔つき、目つきには強い決意が見て取れます。
記録上は初の黒星となったマルコム・ツニャカオ戦以来の、思いのほか早かった再起戦にかける意気込みなのでしょう。
青コーナーに挨拶したのち、初めて中岸と目線を合わせ、軽くグローブタッチをしました。

この時点で、中岸の様子が異常に入れ込みすぎ、と見え、悪い予感がしていたのは確かです。
しかし実際の試合は、その悪い予感を上回るものでした。


初回早々、グローブタッチに応じると見えた中岸が、飛びかかるように右フックを振っていきます。
体格で劣る大場はこれに押され、頻繁にスイッチしてロングフックを振っては、頭からぶつかってくる中岸を持て余します。
そして揉み合いの中、中岸が大場の左腕をホールドしたまま左フックを連打。これが何発かヒットし、大場スリップダウン。
このあと中岸が攻めるのですが、普通にリードパンチを出してからフックにつなげればいいものを、身体ごとぶつかっていき
揉み合いになってまたホールドして左フック連発。レフェリーが初回早々中岸に減点1を宣告しました。


大場を体格で上回り、個々のパンチのスピードで言えば互角で、ボディショットの力強さにも目を引くものがあり、
なのにジャブは後続のパンチとの連携がない単発で終わり、リードパンチとして機能せず。
コンビネーションもほとんどなく、単発のロングを振ると同時に身体ごと飛び込んでは相手ともつれ、揉み合い、
頭を下げて相手をのけぞらしてからまた打つ。
そして好打されたら激しく逆襲、といえば聞こえはいいですが、頭を下げて突進し、大場をロープの間から外へ
押し出しそうになる場面が何度も繰り返される。その状態からさらに大場を打つこともあり、6Rには二度目の減点。
にもかかわらず終盤、再三再四同じことを繰り返していました。

長期ブランクで再起二戦目にしては手ごわすぎる相手、大場浩平相手とはいえ、あまりに冷静さを欠いた試合振りが
本当に残念でした。以前、当ブログにコメントをくれたことのある中岸選手には、きつい表現になるかも知れませんが、
彼の才能からすれば、今日の試合について、私はあらゆる意味で不満足です。真の捲土重来を期待します。



対する大場浩平は、自分より大柄な中岸のラフファイトに序盤は完全に巻き込まれ、ほとんどまともに反撃ができませんでした。
しかし3Rあたりから徐々にジャブや小さい連打が決まりだし、展開が変わり始めます。
4Rワンツー、右ボディアッパー。6Rにも右ボディ、完全に効いて中岸が身体を曲げます。
7Rも懸命に上体を振っては突っ込んでくる中岸を、見事な当て勘で捉えること再三。
終盤はボディが効いて動きが落ちた中岸をほぼワンサイドに打ちまくって勝利を決定付けました。
何より、乱戦のさなかにあっても、可能な限り冷静さを保ち、要所で的確な好打を重ねた
中盤から終盤の戦いぶりは、さすが大場といえるものであり、彼の確かさ、揺るぎなさが試合そのものも救った、という感じでした。
判定は大差の3-0。大場、初黒星からの再起戦を勝利で飾りました。


ということで、中部の天才対決は、私の過大な期待を満たすものではありませんでした。
まあ、いくらなんでもレナード、ハーンズ戦は無茶を承知の冗談でしたけど(^^;)
もうちょっとお互いの良さが、見目鮮やかな形で表現される一戦になってほしかったというのが正直なところです。



と、試合後、少々ささくれ立った気持ちで会場を去ろうとしていたら、大場浩平のインタビューが始まりました。

試合後、中岸選手と何を話していたんですか?という問いに

「...実は以前、中岸選手とは電話番号を交換したことがありまして」
「もちろん、試合が決まってからは電話などはしていないんですが」
「また電話するね、と言われました」

「(中岸は)何が何でも勝ちたいという気持ちだったのでしょうし...別に、こなくそーと熱くなったわけでもないのですが、
(逆に)自分はまだまだ、闘う気持ちが足りないところがあるのでしょう」

「世界チャンピオンになる、という決意でカムバックしてきました。でも年内はゆっくり休みたいです」

最後はいつもどおり軽く外して、笑いを誘ういつもの大場浩平でありました(^^)


初黒星からわずかの期間で思いのほか早く再起を決意し、神戸の真正ジム、あのツニャカオがいるジムで出稽古するなど、
彼の再起への意欲はいよいよ本物のようですね。
乱戦の中でも己を見失わず、冷静に闘い抜いた姿にも、彼の決意が見て取れたように思います。
山中慎介、岩佐亮祐といった新鋭が台頭してきたバンタム級、
もう一度日本タイトルとの絡みも見たいところですし、再度、その実力を証明して、初の世界戦へと進んでもらいたいです。

コメント (4)
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