豪州落人日記 (桝田礼三ブログ) : Down Under Nomad

1945年生れ。下北に12年→東京に15年→京都に1年→下北に5年→十和田に25年→シドニーに5年→ケアンズに15年…

PB医務室

2001-10-01 20:54:24 | 医療業務
10月1日(月) 快晴 

 アイロン台

船内ではビニールの買い物袋いっぱいの洗濯物を5ドルでクリーニングしてくれます。洗面所で自分で洗うこともできますが、船室で下着や靴下を乾かすのは厭なのですべて外注で済ませています。船内には3箇所のアイロン室があります。しかし普段の服装はTシャツに短パンなので、あまり利用されていません。何故か僕の部屋の真ん前にアイロン台があります。僕には全く必要はありません。時々ウクライナの女性クルーが下着にアイロンをかけています。

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    PB医務室

I氏、悪寒を伴う40度の発熱。風邪や腎う腎炎の症状はない。こんな時にピースボート医務室はお手上げだ。本来の目的が応急手当なので検査設備が非常に貧弱だ。聴診器、体温計、血圧計を除くと、試験紙による検尿、血糖、簡単なレントゲン、それがすべてだ。症状、経過から判断して、特定の病気を想定して、抗生物質やステロイドを投与して診断的治療を実行する必要にも迫られる。しかし見込み違いの場合、次の寄港地で病院を受診した時に、診断に手間取り、患者を積み残していくことになりかねない。今回はそのようなケースが予測されるのだ。骨折や外傷はそれだけで診断がついているし、やるべき処置も明確なので、むしろ安心できる。

PBでは船医の応募資格として「45歳以上の内科医」としている。1人で判断しなければならないので内科診断学の素養が要求される。しかし患者が内科的な疾患のみとは限らないので、全科を見渡せる経験のある医師ということで、年齢制限を設けているのであろう。若い医者は観光気分で応募してくる者もいるから、との理由もあるかもしれない。

船医は離島の医師に似ている。限られた条件の中で状況を切り開く力量が要求される。僕も下北で6年間の僻地医療を体験した。自分の力でできることと、できないことがよく分かる。だから毎日何も心配をしていない。

看護婦は前回クルーズまでは1人勤務だったが、今回から2人に増員された。医師同様専門的な知識よりも、医療全般の知識と経験が要求される。医師1人、看護婦2人で600人余の乗客とスタッフの健康管理をする。2床の入院室もある。

僕たちの医務室の隣に200人の乗組員のための医務室がある。こちらにはロシア人だか、ウクライナ人だかの医師がいる。ロシアの医療は日本より大分遅れているらしく、医療設備も貧弱だし、医薬品も少ない。扁桃腺炎でも皮膚病でも紫外線の照射が主な治療法のようだ。あれで治療効果があるとは思えないが、日本人でも漢方や民間療法の強請剤などをありがたがる風潮があるから笑い事では済まさせない。高価薬が不足しているらしく、高熱を出しているウクライナ人などに抗生物質を点滴静注してやりたくなるが、それはできない決まりになっている。日本側は外国人スタッフも含めて海外傷害保険に加入しているが、ウクライナ側は健康保険制度はないようだ。この辺の事情はあまり細かく詮索するとPBやJGがいい顔をしない。



映画「ロックス(アルカトラズ)」

読書「都市と水」 高橋裕

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