さて、お盆休みも終わってしまいました。次のまとまった休みまでを思うと早くも憂鬱です。ともあれ、まとまった時間があるときこそ転職活動に精を出さざるを得ないわけですが、たぶん結果は芳しくないでしょう。現在の仕事よりも条件の悪いところへの転職はともかく、今より条件が良いところへ転職しようとなると、それは私に限らず誰にとっても難しいと思います。とはいえ形式上は正社員でも、どう見ても短期間で社員が続々と辞めていった(辞めさせられた)結果であろう妙に平均年齢の低い(ついでに給料も低い)会社に入ったところで、状況は余計に悪くなるばかりですし……
まぁ、なかなか仕事を選べない時代です。それだけに国や自治体も雇用対策を打ち出すものですが、実態はいかほどのものでしょうか。以前にも述べたことですが、こういう時代に栄えるのは「就職ビジネス」です。就職予備校であったり、就職コンサルであったり、人材紹介であったり。雇用情勢が厳しくなればなるほど、「人を就職させる仕事」の需要は高まるわけです。実際のところ、国や自治体の行う就労支援もまた「人を就職させる仕事」を作り出すばかりで、本当に雇用を創出しているかと言えば、甚だ怪しいところです。
雇用を増やす上で最も単純で確実なのは、自治体で直接雇用してしまうことです。実際、そういうケースも見受けられるものの、この場合は非正規の一時的な雇用でしかない場合が普通です(しかも薄給)。自治体が仕事にあぶれて困っている人に「アルバイトをさせてやる」ぐらいの感覚なのかも知れません。一時しのぎのための軒先は貸すけれど、早めに自分で仕事を見つけて出て行ってくださいと言ったところでしょうか。そうではなく、公務員の正規採用数を増やせば安定した仕事に就ける人が増えるのですが、残念ながらそれは世論が許しません。今は公務員人件費の削減を至上命題とする政党や政治家が支持を集めてしまう時代、雇用対策プロジェクトのための予算を組むのは許されても、同額を人件費として積み上げることは許されないのです。
だから自治体が「アルバイト」を提供する以外には、民間企業に「雇わせる」よう働きかけを行うしかなくなります。そういう経緯で「求人開拓業務」という新たな仕事――自治体側からエリア内の民間企業に「求人を出してください」とお願いする――仕事が出てくるわけです。これがどういう結果を生むかというと、「断り切れずに求人は出したけれど、採用するつもりはない」いわゆる「カラ求人」の増加に繋がります。その辺の具体例としては、下記リンク先で紹介されているエピソードをお読みいただければと思いますが、ともあれカラ求人が増えた分だけ「(数値上は)中小企業は採用に積極的」という都市伝説ができあがったりして、なおさら雇用環境は混迷の度合いを深めるわけです。
参考、空求人
上記リンク先のエピソードは企業側から見たものであるため触れられていませんが、実のところ「求人開拓業務」に携わっているのは自治体(ハローワーク)職員とは限りません。自治体が直接、求人開拓を行うのではなく、自治体が人材紹介会社(派遣会社など)に求人開拓業務を委託しているケースも多々あります。ある意味、公共事業ですね。自治体が金を出して発注し、その業務を請け負った派遣会社が求人開拓に乗り出すわけです。まぁ、ある意味ではノウハウを活かす形に見えるのかも知れません。しかし、派遣会社が求人開拓に従事しているのかというと――
確かに派遣会社の社員が担当エリアの企業に求人を出してくれと要請して回ることもあるでしょう。ただし、それだけではありません。派遣会社が、自社に登録している派遣スタッフへ、「求人開拓業務」を斡旋するケースもまた多いのです。自社が開拓した求人を派遣スタッフへ紹介するのではなく、自社が請け負った求人を開拓する業務を紹介するわけですね。ある意味、多重下請けみたいなものです。往々にして末端で求人開拓に携わるスタッフの取り分は、普通に派遣社員として働く場合より少なかったりするのですから笑うしかありません。しかるに、そういう仕事の斡旋が割と多いのですから困ります。私自身、つい先日そういう仕事を紹介されたばかりですし。
参考、失業者に紹介する仕事か?
実のところ、似たような仕事は去年にも何度か紹介されたことがあります。その当時に感じたことは上記リンク先でお読みいただければと思いますが、懲りずにまた来たかという感じです。去年の段階であれば私は失業者でしたし、今だって転職活動中の派遣社員ですから、とても「他人を就職させる仕事」に携わる資格があるとは考えられないのですけれど(でも去年は応募してみました。不採用でしたが)、派遣会社側はそこまで気を回さないものなのでしょう。雇用情勢が大変だからと国や自治体が「求人開拓業務」のために予算を組む、でも実際に「求人開拓業務」の実働部隊は就労支援が必要な非正規雇用層だったりする、何とも虚しいサイクルです。
ちなみに昨年と今年とで紹介された内容は微妙に違うものではありますが、昨年の募集要項によると「人材紹介会社や学校の就職課、あるいはハローワークで3年以上働いた経験がある人」など、割と厳しい要件が多めでした。一方、先日紹介されたばかりの仕事は「興味と意欲がある方なら、営業未経験でもOK。」とのことです。ふ~む、敷居が低く設定されているのは悪いことではないですけれど、それで求人開拓業務が務まるのでしょうか。偶々なのかも知れませんが、実際に求人を開拓しようという意識、他人を就職させようとする意識の多寡が窺われる気がしないでもありません。派遣会社からすれば自治体から業務を請け負った時点で終わり、自治体も競争入札で安い金額で請け負ってくれる業者を選ぶしかないので結果は問いにくい、みたいなことになっていたら目も当てられない話です。
記事とは直接関係ありませんが、サイドバーのリンクにある「ニートの海外就職日記」が閉鎖してしまいました。ある程度の支持もあっただけに残念です。
http://infosecurity.jp/archives/15291
http://d.hatena.ne.jp/odamemo/20110808/1312808799
しかもそれが雇用対策と呼ばれるなんて、やるせないというか、どこにぶつけていいか分からない、いら立ちが募るばかりの話ですね。
こんなの明らかにお互いが馬鹿にしあっているだけなのに、それでも正規公務員を増やすのに反対とは皆そんなに馬鹿にされるのが好きなのかと言いたくなります。財政再建うんぬんの前に、もう本当に日本経済は破綻しているのではないのでしょうか。
ところで、管理人様がおっしゃっている、現在の製造業モデルに代わる経済モデルとは具体的にどのような物なのですか。
これは例えば高度の技術や知識を持った人材や文化産物などの知的財産(あまり好きな言葉ではありませんが)を中心に展開していくことなのでしょうか。
駄文失礼しました。
国民には労働の義務があるのに、企業に雇用の義務がないのはなぜ??
企業にも、雇用の義務を義務付けるべき。
そのうち復活しないかと密かに待っているんですが、難しそうですねぇ。極右層が持つ愛国心みたいなものを、雇用側優位の世界観に抱いている人も多いだけに、こういうこともあるのでしょうか。
>ヘタレ一代さん
日本経済は諸々の面で悪い方向にしか向かっていませんからね。それでも経済を回復させるより、イデオロギー的なものを優先させる論者が政府なり経済誌なりに多いのですから始末に負えません。
ちなみに状況としては脱・製造業も一時は棚上げにせざるを得ない感じですが、私が念頭に置くのは要するに「モノ」ではないサービスを売ることです。車とか家電とか、十分に行き渡ったモノを性懲りもなく作り続けるのではなく、金融サービスから情報コンテンツなど、「普及したら終わりではないもの」にシフトしていくことですね。
>IBAさん
それはダメコンサルが人を騙すときの定番でもあります。その気になって「自分でお金を増やす」などと言い出した人は99.9%くらいの確率で散財しているのではないでしょうか。まぁ何ですか、労働の義務と雇用の義務はセットにならないと辻褄が合わないもののはずですが、労働側にのみ一方的な義務を負わせるところに日本の原点があるのかも知れません。