非国民通信

ノーモア・コイズミ

一票の格差是正論議に見る格差への視点

2015-08-02 10:53:04 | 政治・国際

参院選改革「仲間が生き延びるようにした」自民・溝手氏(朝日新聞)

 自民党の溝手顕正参院議員会長は30日、二つの「合区」の導入などで定数を「10増10減」する参院選挙制度改革について、「自民党にとって、我々の仲間にとってどれだけ損をするんだろうか、得をするんだろうか。表に出して言うべき言葉ではないかもしれないが。私の頭に絶えずあったことは事実だ」と述べた。

 自民党岸田派の会合で語った。一票の格差の是正より、自民党議員の損得を考慮したと受け取れる発言だ。

 自民は当初、合区に慎重で、連立を組む公明党や民主党などが共同提出した「10合区」案を受け入れなかった。溝手氏は30日の会合で、今回の選挙制度改革について「できるだけ仲間が生き延びることができるようにするのも一つの責任だと思い、対処してきた」とも語った。

 

 民間企業では「出世する力」を持った人が高い地位を得るものですが、政治家の場合はどうでしょうか。現代の政治家の場合は「票を集める力」が何よりも大事なようですね。実務能力が低くとも昇進を重ねる人がいるのと同じで、政策立案能力や良識に欠けていても、当選する能力さえ高ければ議員としての立場は自ずから強くなっていくわけです。目の前の仕事を片付けるよりも上長にアピールする努力を欠かさなかった人が出世していくように、政策よりも議席を増やすことを考えている政治家の方が党の要職に近いのだと感じます。

 それはさておき、上記引用は当然ながら問題発言で、安倍内閣のガバナンスが問われるところでもあります。そうは言っても「一票の格差の是正より、自民党議員の損得を考慮」云々との朝日新聞の報道姿勢もどうしたものかと思わないでもありません。一票の格差が生まれる背景としては、有権者が減少を続けていく選挙区と、有権者が増加していく選挙区が挙げられます。要するに、人が減って過疎化が進む地域と、人口の流入が続く都市部があるわけですね。ここで議席数が据え置きのままだと、当然ながら一票の格差が拡大する、と。

 しかし人が減っていく弱い地域と、人が増えていく強い地域、両者の間で是正されるべき格差とは何なのでしょうか? とかく「一票の格差」ばかりが問題視されがちですけれど、それは私には票の重み「以外」の格差への鈍感さと感じられます。そして人口が減少していく弱い地域の議席数を減らす、地方の代弁者を国会に送り込む機会を減らしていくこと、逆に強い地域の議席を増やしていくことは、当然ながら票の重み「以外」の格差を広げようとするものです。「一票の格差」を是正せよと叫ぶ人々が呼びかけているのは、果たして一票の価値が重い地域の人々でしょうか、それとも一票の価値が軽い地域の人々でしょうか? それは弱い地域の人々でしょうか、あるいは強い地域の人々でしょうか?

 今回の10増10減は、自民党に不利と目されています。議席を減らされるのは自民党が強い選挙区で、逆に増やされるのは野党がそれなりに対抗できる選挙区である、と。しかしまぁ、議席が減らされる選挙区とは上述の通り、過疎化の進む弱い地域です。人口の減少が止まらない貧しい選挙区で支持を受ける政党と、人口が増えていく強い選挙区で浸透している政党、「弱者寄り」なのはどちらの党なのでしょう。議席を減らされるのは、有権者が減った選挙区、衰退している地域です。そうした地域で有権者の支持を集められないことに、自民党以外の野党支持層は内心でどう思っているのか、興味深いところです。まぁ、地方切り捨てで都市型政党を追求するというのなら筋は通ります。

 

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