非国民通信

ノーモア・コイズミ

自衛隊にだけ許されること

2015-08-05 23:45:11 | 政治・国際

予備自衛官採用の企業優遇=防衛省発注工事で(時事通信)

 防衛省は、地方防衛局が発注する工事に関し、予備自衛官を雇用した建設会社を優遇する落札方式を導入した。自衛隊を退職した予備自衛官は、災害など緊急時に自衛隊の応援要員となるが、定員割れが問題となっている。自衛隊OBの再就職を後押しすることで予備自衛官の充足率を高める狙いがある。

 対象になるのは、駐屯地や演習場などの予定価格6億円未満の建設工事で、具体的には体育館や事務庁舎の整備が想定される。駐屯地などの事情に精通した予備自衛官を配置することで、工事の品質向上が図れる利点がある。 

 防衛省は当初、昨年9月にも新方式で発注する方針だった。しかし、財務省などから入札の公平性を確保するよう求められ、制度の基準に、企業の信頼性や社会性を新たに追加。工事現場に配置された予備自衛官が作業に直接従事することや、配置日数が30日以上などの条件を満たした応札企業には加点することにした。

 さらに、工事を実施する駐屯地の勤務経験者は2点、同じ都道府県で勤務経験があれば1点、隣接県なら0.5点と、配点にも差をつけた。こうした修正により、関係省庁の了承を取り付け、7月からの運用開始に至った。

 予備自衛官は、年間最大20日間の訓練を受ける義務がある。仕事と訓練の両立が難しいため、2014年度末時点で3万2396人と、定員4万7900人を大きく下回っている。(2015/08/01-16:23)

 

 官公庁OBの再就職先の企業や団体が公共事業を請け負っているケースは多々ありまして、その辺は癒着云々と批判されてきたわけです。多少の後ろめたさもあるのでしょうか、表向きは発注側も受注側も公明正大を装いOBの就職実績を考慮したなどとは決して口にされないものですけれど、自衛隊の場合は随分と堂々としていますね。公務員でありながら例外的に誹謗中傷の標的にされない自衛隊であるからこそ可能な決定なのかも知れません。

 まぁ、官公庁側にとってはともかく営利組織である民間企業にとって、コネは金を出す価値があります。社内ではろくに働かない人であろうとも、官公庁という優良顧客とのパイプ役になってくれるのであれば、それは新卒の社員なんかよりもずっと高い給料を出す価値があると判断されるのです。とかく給与を受け取る天下りOBの側ばかりが非難されるところですが、良くも悪くもそれは雇用側が「金を出す価値がある」と考えた結果であり、批判されるなら天下りを受け入れる側もまた、と思わないでもありませんね。

 ともあれ、自衛隊OBを受け入れることで「公式に」防衛省発注の事業を受注する上で有利になることが決まったわけです。どうせならヨソの省庁でも導入すれば、ある意味でフェアなのではないかと思ったりしますが――まぁ自衛隊だからこそ許されるものがあるのでしょう。同じ公務員でも政治家から公衆の面前で面罵されるのが当たり前の立場もあれば、逆に感謝されるのが当たり前の自衛隊、なんとも格差を感じる話です。

 そうは言っても、自衛隊好きの人々によって自衛隊の仕事は次々と増やされるであろうことが予測されるわけで、普通に生活のために働いている自衛隊員であれば「割に合わない」と感じる場面はこれから増えていくでしょうか。私が自衛隊員であったなら、あんまり仕事は増やして欲しくない、自衛隊の活動領域を増やして欲しくないと思うところです。どれほど世論が自衛隊に好意的であろうとも、受け取る給与は特別と言えるほどではありませんしね。

 なお予備自衛官は「仕事と訓練の両立が難しいため」との理由から定員割れであることが伝えられています。その解決策として、OBのいる会社に優先的に発注するという落札方式が導入されることになったようですが、どうしたものでしょう。この辺は日本的な労働環境、正規に就職したら会社のために何もかも拘束されるのが当たり前の雇用事情に踏み込んで欲しいところです。「仕事と○○の両立が難しいため」というのは、なにも予備自衛官に限ったことではありません。子育てでも何らかの夢を追う類でもそうですし、政治活動でも同様です。もうちょっと、正規に就職していても別の生き方ができる社会であって欲しいと思います。

 しかしまぁ、「自衛隊の応援要員」が定員割れとなれば、いざ人員が必要になったときにはどうするのでしょうか。自衛隊の活動範囲を広げれば、何かが起こったときに本職の自衛官は海外展開中で人手が足りない、という事態に陥る可能性は増えていくものと予測されます。新人研修として社員を自衛隊に体験入隊させる会社も多いですが、現役の自衛官、予備自衛官に続く「丙種」自衛官としての役割を期待される民間人が出てきても、それくらいは不思議ではありません。既に民間の船員を予備自衛官として徴用するなんてプランも防衛省にはあるようですし(参考、否定できる根拠はない)。

 

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2 コメント

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Unknown (nordhausen)
2015-08-08 21:16:41
ところで、北朝鮮による拉致問題絡みで、「救う会」の人たちはしばしば「拉致被害者救出のために自衛隊を北朝鮮に派遣しろ」と主張しています。しかし、そもそも居場所が分からないのに自衛隊を派遣しても、恐らく徒労に終わる可能性がありますし、無駄に自衛隊員の仕事を増やすだけでしょう。それに、自衛隊を持ち出して拉致問題が解決するのかは非常に疑問ですし、自衛隊の派遣自体が北朝鮮への軍事介入だと見なされかねませんね。
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Unknown (非国民通信管理人)
2015-08-09 11:26:16
>nordhausenさん

 まぁ、「そっちが本当の目的なのだ」としか言い様がないですね。流石に拉致被害者が生存しているとは、救う会の人達だって本当は信じてはないでしょう。ただ拉致被害者を大義名分にしているだけですから。
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