質問されると、目を「右に動かす」タイプは要注意!【悪魔の対話術】(ダイヤモンド・オンライン)
アメリカの心理学者L・カッツとE・ウッディンが130世帯の人たちについて調べたところ、すぐカッとなりやすい人は、穏やかな人に比べて、58パーセントも多くケンカを起こしやすいことが明らかになっている。
この元になるコラムは7月1日に掲載されたもので、それがどういう事情かgooニュースに転載されたのが昨日のこと、なぜ今頃になってこんな記事をピックアップしてきたのか、ポータルサイト管理者の意図が知りたいところです。
それはさておき、色々な意味で衝撃的な調査です。何でも「カッとなりやすい人は穏やかな人に比べて喧嘩を起こしやすい」のだとか。当たり前ですね。笑撃的です。なぜ、そんな当たり前のことを仰々しく語っているのか、それを考えると気になって眠れません。
まぁ、経験的に見知っているけれども、その根拠は実ははっきりしない、そういうこともあります。カッとなりやすい人が喧嘩っ早いのは誰でも分かることですが、それがなぜなのか科学的に証明されているかと言えば、たぶん否なのでしょう。当たり前と思われていることも実は当たり前ではないかも知れない、自明のことと信じられていることを敢えて証明しようと努めるのも学問です。ですからこの調査に当たった心理学者も、それ自体としては意義のある調査だったのでしょう。
人事担当者なら、ぜひ覚えておいてもらいたい法則がある。
それは、質問に対する応募者の目の動きをチェックして、「右を向く人」ほど、怒りっぽく、攻撃性の高いタイプであることだ。
スタンフォード大学の臨床心理学者ラキュエル・ガー博士たちは、28名の男性に、一連の質問を30秒以内でつぎつぎに答えさせるという実験をやってみた。
私たちは、質問をされると、クセなのか、目を右か左に向けてしまうものである。
ガー博士は、質問への返答ではなく、実験参加者の目の動きだけを見ていた。そして、質問の70%以上で左を向く人と、右を向く人にわけて、それぞれのグループに特徴的に見られる性格傾向を調べてみたのである。
その結果、質問をされて「右を向く」人たちは、他人への攻撃性が高いことがわかったのだ。
とはいえ、これはあんまりです。たぶんマレービアン博士の実験と同じで研究過程で得られた副次的なデータを換骨奪胎、欲しいところだけを抜き出した結果なのでしょう。曰く「質問をされて右を向く人たちは他人への攻撃性が高い」とか。引き合いに出されたガー博士のことは知りませんが、その人の実験の眼目は、そんなところにあるのではなかったと思うのですがね。
なんでも被験者は僅かに28人だとか、これだけでも傾向を割り出すには不足です。しかも最終的な調査対象となると「質問の70%以上で左を向く人」「質問の70%以上で右を向く人」です。右も左も向かずにガンくれる人(日本じゃこれが常識とされているわけで)、上を見る人、下を見る人、そして右50%左50%と、どちらか片方を見るとは限らない人、こうした人を除いた「質問の70%以上で左を向く人」「質問の70%以上で右を向く人」は、果たして何人いたのでしょうか? 10人くらいでしょうか? 10人に質問しただけで「それぞれのグループに特徴的に見られる性格傾向」などと言われても無理があります。
被験者の左と右に何があるかも重要ですね。例えば片側にだけ窓があって強い日差しが差し込んでいるのなら、それは「右を向いた」「左を向いた」と言うより「窓の方を向いた」「窓のない暗い方を向いた」と考えるべきものです。あるいは、被験者の左側には屈強で強面の助手が、右側にはセクシーで愛嬌のある助手が立っていたならどうでしょう。こうした状況で右か左かを問うのはナンセンスです。
このガー博士の実験の狙いや結論はそんなところにはなかったと思うのですが、ともあれ引用元のコラムでは「質問をされて右を向く人たちは他人への攻撃性が高い」と結論づけられています。少なくともここに引用された情報を見る限り、「右を向く人~」などという結論は荒唐無稽なのですが、コラムの著者は疑いを持つどころか、「人事担当者なら、ぜひ覚えておいてもらいたい法則がある」などと大々的にプッシュしている始末です。しょせんビジネス本などこのレベルなのでしょうけれど、この手のヨタを鵜呑みにするような人事担当者が私に不採用を言い渡してきたのだと思うと、色々な面でノーフューチャーですね。
人を(例えば血液型などで)カテゴライズし、そのフィルターを通すことで、
安心したり偏見を持ったりすることを望む人が多いです。
『○型の説明書』なんかがその典型で、これに比べれば、
お国柄のジョークの方がまだしもマシです。
少なくとも、ジョークという前提で聞きますから。
この研究者が何者かは知りませんが、人文・社会系出身の人は、
因果関係と相関関係を意図的に混同したり、
自説を補強するような相関を示す実験結果のみで、
結論を出したりする人も含まれます。
ときに、『仮説』=『結論』、『相関関係』=『因果関係』という、
自然科学系だったら、まともに見向きもされないような内容であることも。
救いがないのは、人間は往々にしてそういう話の方が好きなんですね。
まぁ血液型性格診断と同レベル、スイーツ向け雑誌に載っているような占いと大差ない代物なのですが、ビジネス本でタチの悪いのは、それが非常に信用されやすい、それを信じるかどうかで選別されることすらあるなど、ですね。ジョークという前提で聞かれているなら良いのですが、もっともそうなりにくいのがビジネス本の世界であります。