食べろエメス

仲買さんでも初めて見る魚が魚市場にやってきた。どうやらハタの仲間なのだろう、名前は“エメス”という。長年仲買をやっている者にしても初めて耳にする名前の魚だ。薩摩半島の沖合、種子島や屋久島あたりの魚で、刺身での味は上々のものという触れ込みである。しかしその確認は取れていない。
エメスとにらめっこをしている仲買のところに、ひょっこり現れたのがクアトロのシェフである。
「スタちゃん、いいとこに来たわ、変わった魚があるんだけど、買わない、欲しいよね、欲しいでしょ」
エメスを仕入れてきた、クアトロのシェフである。その刺身の味を後で教えてくれと仲買さんに頼まれてきた。
鹿児島からやってきた新しい魚、エメスの運命はスタちゃんの評価にかかっている。