Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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当科のIgLON5抗体関連疾患症例がStanley Fahn Lectureship Award講演で紹介されました!

2022年10月08日 | 自己免疫性脳炎
マドリードで開催されたMDSコングレス(パーキンソン病・運動障害疾患コングレス)にて,Stanley Fahn Lectureship Awardを受賞されたK. Bhatia教授(Queen Square, London)による講演で,私どもが報告したIgLON5抗体関連疾患症例が詳細に紹介されました.私はあとからオンデマンドで視聴しましたが,現地で聴講された京都大学高橋良輔教授よりご連絡をいただいたときには,多くの世界のエキスパートにご紹介いただき「夢ではないか?」と思いました.



Bhatia教授の講義はじつに示唆に富むものでした.運動異常症の原因遺伝子や自己抗体が続々と明らかになる現代において「神経症候学を大切にする臨床家は時代遅れか?(Is the Clinical Phenomenologist Obsolete?)」というタイトルのご講演でした.答えはNOで,むしろその役割は益々重要になるという含蓄深い講演でした.以下がその根拠です.

◆希少疾患のなかに治療可能な因遺伝子を見い出せるかは臨床家にかかっていること
◆1つの表現型もさまざまな遺伝子により生じるが,症候を適切に評価しないと正しい遺伝子にたどり着けない恐れがあること
◆遺伝子変異を認めた場合,臨床家に本当に意味があるものかの判断が求められること
◆同じ表現型でも,各症例の原因にあった治療を行う精密・緻密な治療「precision medicine」がすでに始まっており,遺伝子変異,自己抗体を認めたときに,最新の正しい治療ステップを理解していることが求められること

私どもの症例はその「precision medicine」がうまく行った事例として,講演のラスト近くで紹介されました.治療不可能と考えられた大脳皮質基底核症候群のなかに,IgLON5抗体を見出し,適切に免疫療法で治療したことが評価されました.私たちは現在,治療できないと考えられている脊髄小脳変性症や進行性核上性麻痺のなかにも自己抗体が存在することを報告し,前者に対しては医師主導治験を開始しています.治療できる神経疾患を見いだせるよう頑張っていこうと思います!

Fuseya K, et al. Corticobasal Syndrome in a Patient with Anti-IgLON5 Antibodies. Mov Disord Clin Pract. 2020 May 5;7(5):557-559. (doi.org/10.1002/mdc3.12957)
Takekoshi A, et al. Clinical Features and Neuroimaging Findings of Neuropil Antibody-Positive Idiopathic Sporadic Ataxia of Unknown Etiology. Cerebellum. 2022 Sep 3. (doi.org/10.1007/s12311-022-01468-3)
特発性小脳失調症を対象とした多施設医師主導臨床試験のご紹介(http://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/research/idca.html)

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