Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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COVID-19と頭痛@第49回日本頭痛学会

2021年11月22日 | 頭痛や痛み
11月19日~21日に第49回日本頭痛学会(大会長;静岡赤十字病院今井昇先生)が開催されました.現地・リモート参加を合わせると過去最高の参加者と伺いました.大変,企画が充実し,活気ある学会でした.私はシンポジウム1「COVID-19と頭痛」を大会長の今井先生とともに企画させていただきました.頭痛はCOVID-19の急性期から慢性期,ワクチン後に至るまで重要な症状であるものの,その診断や治療は容易ではないためです.テーマは5つで,病態機序(下畑),脳症と頭痛(髙橋牧郎先生;医学研究所北野病院),急性期の頭痛(秋山久尚先生;聖マリアンナ医科大学),後遺症としての頭痛(鈴木圭輔先生;獨協医科大学),抗抗体治療・ワクチンと頭痛(柴田護先生;東京歯科大学)でした.以下,重要なポイントを列記します.

*急性期では,感染後の症状(発熱,呼吸器症状)が出現してから1~3日後ぐらいに頭痛が出現することが多い.
*急性期に頭痛を合併する頻度は報告により大きな差がある.軽症例で頭痛の合併が多いという報告もあるが,重症例では頭痛を訴えにくい状況である可能性もある.
両側性で前頭部に強い頭痛が多い.性状はさまざまで,片頭痛様の頭痛を呈する患者もいる.
*一次性頭痛との鑑別が重要であり,COVID-19感染症を示唆するred flagsを確認する必要がある.
*筋痛,関節痛などのその他の部位の疼痛症候群を合併する症例が多い.
*アセトアミノフェンやイブプロフェンといった鎮痛剤が奏効しない症例が多い
*ボツリヌス注射やトリプタン,抗CGRP抗体は有効な患者とそうでない患者が存在する.つまり病態の多様性が示唆される.
*急性期の頭痛では,脳炎・脳症,脳静脈洞血栓症のような予後不良となる神経合併症を見逃さず,免疫療法,抗凝固療法など適切な治療を開始する必要がある.
*感染により既存の頭痛の悪化を認める症例や,新規発症持続性連日性頭痛 (NDPH)をきたす症例がある.
*IVIGに加え,トシリズマブ,コロナ中和抗体カクテル療法後にも無菌性髄膜炎を含む頭痛が生じうる.
*ワクチン接種の直後から,ないし遅発性に頭痛が生じ,長期持続するケースがある.産生されるサイトカインが関与する可能性もあるが病態は不明である.

以上より痛感したことは,COVID-19に伴う頭痛の病態機序は三叉神経血管系の関与が示唆されるものの,まだほとんど分かっていないこと,とくに重症例ほど頭痛の評価は困難であり,研究自体が難しい可能性があることです.今後,病期ごとの頭痛のメカニズムの解明と診断・治療のエビデンスの確立が求められます.

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