Vascular cognitive impairmentの病型としては以下のものが知られている.
1.多発梗塞性認知症
2.局在病変型梗塞認知症
3.皮質下血管性認知症(subcortical ischemic vascular disease;SIVD)
4.CADASIL
5.低酸素・低灌流による認知症
6.脳血管障害を伴うアルツハイマー病
7.血管性軽度認知機能障害
このなかで,SIVDは,「小細動脈硬化を背景とする小血管病」であるビンスワンガー病と,多発小梗塞(ラクナ)性認知症が含まれる.前者は白質が主として侵され,後者は穿通枝領域の小梗塞が主体となる.しかし,両者は厳密に分類することは困難であり,白質と穿通枝領域の病変を合併することはしばしば経験する.これらの疾患では血管因子を背景として緩徐進行性に認知機能が低下することが多いといわれている.
今回,SIVDの病態についての論文が報告された.マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)は神経炎症を介して,血液脳関門を破壊し,ミエリン塩基性蛋白を分解する強力なタンパク分解酵素として知られる.本研究ではSIVD患者において,髄液のMMPを測定し,血液脳関門(BBB)の破綻のマーカーであるalbumin indexとの関連を調べている.
結果として,髄液中のMMP-2 index(髄内産生)が低下していること,MMP-3活性は増加していること,albumin indexがMMP-2 index低下と有意に相関することが明らかにされた.また急性脳虚血においてBBBの破綻に関与することが知られるMMP-9についての検討では,MMP-9 indexはalbumin indexと相関しなかった.MMP-2 indexとMMP-3 activityを組み合わせると,SIVDと健常者を高い特異性をもって鑑別可能であった(P<0.0005).
以上の結果は,SIVDのBBB破綻,白質障害においてMMPが重要な役割を果たしていることを示している.意外なことは,なぜMMP-2が増加でなく低下したのか(仮説を挙げているものの機序不明とのこと),そしてなぜMMP-9がalbumin indexと相関しなかったかである.さらなる研究が望まれる.
Stroke. 2011;42:1345-1350
リンクはFacebookページからいくと便利です.
1.多発梗塞性認知症
2.局在病変型梗塞認知症
3.皮質下血管性認知症(subcortical ischemic vascular disease;SIVD)
4.CADASIL
5.低酸素・低灌流による認知症
6.脳血管障害を伴うアルツハイマー病
7.血管性軽度認知機能障害
このなかで,SIVDは,「小細動脈硬化を背景とする小血管病」であるビンスワンガー病と,多発小梗塞(ラクナ)性認知症が含まれる.前者は白質が主として侵され,後者は穿通枝領域の小梗塞が主体となる.しかし,両者は厳密に分類することは困難であり,白質と穿通枝領域の病変を合併することはしばしば経験する.これらの疾患では血管因子を背景として緩徐進行性に認知機能が低下することが多いといわれている.
今回,SIVDの病態についての論文が報告された.マトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)は神経炎症を介して,血液脳関門を破壊し,ミエリン塩基性蛋白を分解する強力なタンパク分解酵素として知られる.本研究ではSIVD患者において,髄液のMMPを測定し,血液脳関門(BBB)の破綻のマーカーであるalbumin indexとの関連を調べている.
結果として,髄液中のMMP-2 index(髄内産生)が低下していること,MMP-3活性は増加していること,albumin indexがMMP-2 index低下と有意に相関することが明らかにされた.また急性脳虚血においてBBBの破綻に関与することが知られるMMP-9についての検討では,MMP-9 indexはalbumin indexと相関しなかった.MMP-2 indexとMMP-3 activityを組み合わせると,SIVDと健常者を高い特異性をもって鑑別可能であった(P<0.0005).
以上の結果は,SIVDのBBB破綻,白質障害においてMMPが重要な役割を果たしていることを示している.意外なことは,なぜMMP-2が増加でなく低下したのか(仮説を挙げているものの機序不明とのこと),そしてなぜMMP-9がalbumin indexと相関しなかったかである.さらなる研究が望まれる.
Stroke. 2011;42:1345-1350
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ぜひいろいろ意見交換などさせていただきたいと思います.
よろしければご連絡いただければ幸いです.
http://www.facebook.com/shimohata?sk=info
SCDもパーキンソン病もプリオンもアミロイドβも神経変性疾患は研究すればするほど謎が深まりますね。
プロテオミクスやグライコミクスの発展が鍵だと考えていますが、書店でも取り扱いが少なく残念です。
先般、新潟市内で専門書店を訪れましたがやはり両者共に少なかったですね。
臨床医家の方からもプロテオミクスや分子生物学は取っつきにくいと伺いますが是非とも交流したいものです。