Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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片頭痛治療薬Sumatriptanに伴う脳血管攣縮

2005年01月11日 | 頭痛や痛み
突然の片麻痺,左半側空間無視にて発症した43歳女性についての症例報告.この症例は慢性頭痛の既往があり,過去6ヶ月間,sumatriptanを25 mg内服していた.発症時MRI拡散強調画像では右MCA領域に限局した異常信号を認め,血管造影検査では鞍上部内頸動脈およびACA,MCA,脳底動脈にびまん性両側性血管攣縮を認めた.髄液は正常.Sumatriptanが血管攣縮を引き起こした可能性を疑い,内服を中止,発症7日後に行った血管造影で顕著な改善を認めた.
脳血管攣縮を原因とする脳梗塞(いわゆるcerebral vasoconstriction syndrome)は,一般に塞栓源が見つからない場合,動脈硬化やその危険因子を認めない場合,若年発症である場合,脳血管炎の合併が考えにくい場合,発症後速やかな改善を認めた場合などに疑うべきである.血管収縮作用のある薬剤が原因となるほか,片頭痛自体や妊娠・産褥,さらにCa拮抗薬が有効とされるCall-Fleming syndrome(いわゆる可逆性分節性脳血管収縮;Cephalalgia 2003;23:218)も原因となる.しかし診断には急性期における血管造影が必要で,かつ器質的変化を常に認めるわけではないため,実際にはその診断は難しい.事実,本例のように脳血管攣縮にsumatriptanが関与したと考えられる症例報告は検索した限り3例ほどであり,その因果関係の証明も困難と言えよう(一方,冠動脈攣縮の報告は複数ある).Cerebral vasoconstriction syndromeは少なからず存在する可能性も指摘されており,原因不明の脳梗塞では,内服薬および片頭痛,妊娠の有無を確認の上,積極的に血管造影を検討すべきであろう.

Neurology 63; 2128, 2004
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