Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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肥満手術と末梢神経障害

2004年11月02日 | 末梢神経疾患
Bariatric surgery(肥満手術)は,日本では耳慣れない言葉であるが,アメリカでは病的肥満に対する一般的な治療として定着している.対象はBMI 35もしくは40以上とすることが多い.手術療法としては食事量摂取制限を目的とした術式(vertical banded gastroplasty)と,加えて栄養吸収を減らすことも目的とした術式(Roux-en-Y gastric bypass)がある.合併症として末梢神経障害が知られているが,因果関係については不明であった.
 今回,Mayo ClinicのDyckのグループにより,肥満手術に伴う末梢神経障害の頻度,臨床像,危険因子についての報告がなされた.方法はretrospectiveに435例を検討,年齢・性別をmatchさせた胆嚢摘出術を行った患者126例を対照とした.435症例中71例(16%)に末梢神経障害が出現し,対照群での発症率3%より有意に多かった.末梢神経障害のパターンは mononeuropathy(n=39;carpal tunnel syndromeが31例で最多),polyneuropathy(n=27;sensory-predominant),radiculoplexus neuropathy(n=5)の順に多かった.危険因子は,①体重減少の程度が大きいこと,②術後の持続する消化器症状,③術後,通院をしないこと,④血清albumin, transferrin値の低下(すなわち低栄養),⑤入院を要する外科的合併症,⑥空腸・回腸吻合術であった.これらの危険因子はpolyneuropathy発症群でより相関を認めた.
以上の結果は,肥満手術と末梢神経障害との因果関係を明らかにした点,ならびに術後の栄養管理の必要性を明らかにした点で重要な報告と思われる.また体重減少によりなぜcarpal tunnel syndromeが生じるかについては原因不明とのことであった.

Neurology 63;1462-1470, 2004

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Topiramateによるpainful diabetic neuropathyの治療は一石二鳥?

2004年10月12日 | 末梢神経疾患
Painful diabetic neuropathy(PDN)は難治性の病態である.近年,末梢神経の易興奮性と,それに伴う中枢への影響(興奮性アミノ酸glutamateの増加・抑制性アミノ酸GABAの減少)が,そのneuropathic painの病態に関与していると推測されている.抗てんかん薬であるTopiramateは,バルプロ酸塩,gabapentinとともに,GABAを調整することによってNa,Ca-channelを抑制するが,今回,ランダム化比較試験(RCT)の結果,topoiramateがPDNの治療薬として有効であることが報告された.具体的には12週間の使用で,半数の症例に改善を認め,またこの間,血糖コントロールを悪化させることなく体重も2.6kg減少させた.つまり,TopiramateはPDNの治療において一石二鳥かもしれない.
しかし,日本ではtopiramateにしても,gabapentinにしても保険で承認されておらず使用できない.欧米におけるRCTで,有効性と安全性が示された薬剤については,本邦においても早期に使用できるようなシステム作りが望まれる.

Neurology 63;865-873,2004

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