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Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)に対する間欠的ステロイドパルス療法の効果

2005年02月16日 | 末梢神経疾患
 CIDPの治療として,現在,副腎皮質ステロイド内服かIVIgが選択されることが多いものと思われる.今回,Washington大より,CIDPに対する間欠的ステロイドパルス療法(intermittent intravenous methylprednisolone; IVMP)の有効性が報告された.方法は1992年から2003年までに経験したCIDP症例57名(うち39名が解析可能)に対するretrospective studyで,IVMP群,IVIg群,免疫抑制剤内服群の3つの群を比較した.IVMPは16名で,方法としてはinitial dose 1000mgのmethylprednisoloneを3~5日間点滴し,翌週より週1回1000mgのmethylprednisolone点滴を行い,その後,様子を見ながら治療頻度・薬剤使用量を2ヶ月から2年かけて漸減していた.IVIgは7名で,total 2g/kgを2日間以上かけて点滴し(一般的な使用量),以後,症状に応じて1~6ヶ月ごとにIVIgを繰り返していた.免疫抑制剤群は16名で,内訳はprednisone 12名,cyclosporine 4名であった.評価は筋力の改善(quantitative dynamometryにて定量的に評価)と副作用に対して行った.
 結果として,治療開始後6ヶ月および終診時(平均4.5年後)における筋力は各群間で有意差を認めなかった(ただし,経口免疫抑制剤群は6ヶ月の時点で改善がやや不良の傾向).副作用の面では,クッシング症候群様変化・体重増加を示した症例は,prednisone内服例で58%であったのに対し,IVMP群では19%と少なかった.
 以上より,IVMPは今後,CIDPの治療として検討してよいのかもしれない.とくに血液製剤の使用を嫌がる患者や,容姿の変化を心配する患者では考えてみる価値はある.しかし,あくまでもprospective studyの結果ではないことと,現在,本邦ではCIDPに対し,ステロイドパルスの保険適応はないことも認識したうえで行うべきであろう.

Arch Neurol 62; 249-254, 2005

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ギラン・バレー症候群の家族内発症例

2004年11月16日 | 末梢神経疾患
ギラン・バレー症候群(GBS)は先行感染後に発症することが知られている.とくにC.jejuni感染後には1000人に1人の割合で発症すると言われているが,発症機序に何らかの遺伝的背景が関与するものと考えられる.GBSの家族内発症例の報告はこれまで世界において7家系ほどの報告があるが,今回,あらたに12家系(計25人)の家族内発症例がオランダより報告された.遺伝形式は特定できず,メンデル遺伝より複合的な病態(complex genetic disorder)が疑われた.また次世代での発症ほど発症年齢が早くなる傾向を認めた.先行感染や臨床症状,重症度などは家族間でばらばらであった.
 さらに多くの家族内発症例を集積することが宿主側の要因を解明する上で必要であろう.

Neurology 63; 1747-1750, 2004

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肥満手術と末梢神経障害

2004年11月02日 | 末梢神経疾患
Bariatric surgery(肥満手術)は,日本では耳慣れない言葉であるが,アメリカでは病的肥満に対する一般的な治療として定着している.対象はBMI 35もしくは40以上とすることが多い.手術療法としては食事量摂取制限を目的とした術式(vertical banded gastroplasty)と,加えて栄養吸収を減らすことも目的とした術式(Roux-en-Y gastric bypass)がある.合併症として末梢神経障害が知られているが,因果関係については不明であった.
 今回,Mayo ClinicのDyckのグループにより,肥満手術に伴う末梢神経障害の頻度,臨床像,危険因子についての報告がなされた.方法はretrospectiveに435例を検討,年齢・性別をmatchさせた胆嚢摘出術を行った患者126例を対照とした.435症例中71例(16%)に末梢神経障害が出現し,対照群での発症率3%より有意に多かった.末梢神経障害のパターンは mononeuropathy(n=39;carpal tunnel syndromeが31例で最多),polyneuropathy(n=27;sensory-predominant),radiculoplexus neuropathy(n=5)の順に多かった.危険因子は,①体重減少の程度が大きいこと,②術後の持続する消化器症状,③術後,通院をしないこと,④血清albumin, transferrin値の低下(すなわち低栄養),⑤入院を要する外科的合併症,⑥空腸・回腸吻合術であった.これらの危険因子はpolyneuropathy発症群でより相関を認めた.
以上の結果は,肥満手術と末梢神経障害との因果関係を明らかにした点,ならびに術後の栄養管理の必要性を明らかにした点で重要な報告と思われる.また体重減少によりなぜcarpal tunnel syndromeが生じるかについては原因不明とのことであった.

Neurology 63;1462-1470, 2004

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Topiramateによるpainful diabetic neuropathyの治療は一石二鳥?

2004年10月12日 | 末梢神経疾患
Painful diabetic neuropathy(PDN)は難治性の病態である.近年,末梢神経の易興奮性と,それに伴う中枢への影響(興奮性アミノ酸glutamateの増加・抑制性アミノ酸GABAの減少)が,そのneuropathic painの病態に関与していると推測されている.抗てんかん薬であるTopiramateは,バルプロ酸塩,gabapentinとともに,GABAを調整することによってNa,Ca-channelを抑制するが,今回,ランダム化比較試験(RCT)の結果,topoiramateがPDNの治療薬として有効であることが報告された.具体的には12週間の使用で,半数の症例に改善を認め,またこの間,血糖コントロールを悪化させることなく体重も2.6kg減少させた.つまり,TopiramateはPDNの治療において一石二鳥かもしれない.
しかし,日本ではtopiramateにしても,gabapentinにしても保険で承認されておらず使用できない.欧米におけるRCTで,有効性と安全性が示された薬剤については,本邦においても早期に使用できるようなシステム作りが望まれる.

Neurology 63;865-873,2004

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