Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

「ワイン飲み競争の絵」デジタル登記

2005-02-02 | 歴史・時事
ついに幻の「ワイン飲み競争の絵」、ネット初公開である。未払いだった「公的機構会費」強制取立て執行の脅しに、向かい側の役所に出向いた。執行人を訪ねたついでに、ロビーに飾られている町の秘宝である15世紀の絵画を眺めてきた。陽の差し込まない壁面に、立派な額縁に収まった2x1メートルほどの少し黒ずんだ油絵が飾ってある。手前下のガラスのケースには、通称「ロルッシュのコデックス」の分厚い複製本が収まっている。これのオリジナルは、1300年前に書かれたこの地方で最も古い登記簿である。ロルッシュは、アルプス以北では珍しいカロリンガー様式の修道院で有名な町の名前である。

ここの修道院廃墟と門はユネスコ指定になっている。ダルムシュタットと公会議やカトリック荘園で最も有名なヴォルムスの中間に位置するベルクシュトラーセの町ロルッシュは、永く宗教思想のメッカとして有名であった。ここで著された数多くの貴重な古文献の一つがこのコデックスである。ヘッセン南部のここから150キロ四方で書かれていない土地はないというほどに地図付きで主要な不動産を網羅している。その他にも北海からウルム近郊ボーデンゼー、バーゼル、アルザス、ゲントまでを盛り込んである。その全てが神の名の下に守り神の殉教者ナザレスからとして、登記されたところは全て賜ったものとなり、教会の覇権が自動的に及ぶ仕掛けだ。数箇所の地所については、流石に厚かましすぎると思ったのか現地の修道所の名前が併記されている。既に町自体が教会の元で印を下賜されているから、至極当然な成り行きである。

こうしてシュパイヤー郡の我が町にも、ワイン地所が進呈されたとある。ここからは、郷土史の専門家や専門の学者に聞かない限り定かでないが、この絵について推測してみる。少なくともこの飲み較べは各々が後見人をつけているところから、真剣勝負である事が分かる。地元修道所は、上の登記などを根拠に年貢とは別に、覇権を盾に自己消費用のワインを町のワイン農民達に要求したのだろう。つまり飲み競争をする事で、農民が自己消費する量と奉納の比較が出来る。こうして勝てば要求を増やす事が出来、負ければ現状維持以上は望めない。なにか現在の役所の年間予算のようなもので、飲み干さなければいけないのだ。

明らかにこの絵の視点は、飲みつぶれる修道所長を揶揄する農民にあるので、上の説明で合点がいく。すると、農民の身寄りとして描かれている戸口で心配そうに中を窺がう女性は誰だろうか。フランドルの画家ブリューゲルの絵のように、なにか一つの物語が綴れそうである。効果を狙ったのだろうか、それとも何かの隠喩か。如何なものだろうか?


参照: 伝承「ワイン飲み競争」の絵 [ 歴史・時事 ] / 2004-12-30

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4 コメント

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昔、女将に。 (つあぞんね)
2005-02-05 02:03:09
こんな感じの絵が飾ってあった、ドイツ・ワイン街道沿いの田舎の居酒屋を思い出しました。掲載された絵の様に明るい色ではなかったのですが、その店の黒褐色の絵は、ワインを食事と一緒に楽しむのにぴったりでした。そこの女将が、絵の雰囲気の人でした。元気でいるかな? 親父や娘はいいっぷりでいるかな? そんなことをつまみにドイツの赤ワインを飲みたくなりました。いい感じの絵を有難う。
オリジナルとパロディー (pfaelzerwein)
2005-02-06 17:44:04
つあぞんねさん、初コメントありがとう。上の絵も書いたように、可也暗いのですが自動補正したら明るくなってしまいました。こうすると描かれている情景が分かりやすいく、カリカルチャーのようで面白いのでそのままとしました。指摘のパロディーの方は壁画ですから大きくて明るい。もう一つ偽作でも試してみるのも良いのでは?



近況報告は改めて。こんな感じ?

Unknown (tomo爺)
2005-02-13 16:44:41
 

綴りの誤りなど、ご指摘頂き有り難う御座いました。巣箱博物館のアドレスは以前と同じで、いつの間にか開かれていました。

 鳥や巣箱に関する面白い話がありましたら是非見せてください。巣壺の絵はbruegel以外にドイツの画家H.avercampnの絵の中にも描かれているようです。
近々巣箱の事を書きます。 (pfaelzerwein)
2005-02-14 07:44:17
tomo爺さん、いらっしゃいませ。是非、近々巣箱の事を書かせて頂きます。ご期待に副うかどうかは分かりませんが、お陰で面白い話のネタを見つける事が出来ました。TBを張って頂けるようなものが書けたら良いなと思います。



そちらのBLOGアドレス(URL)が欠けているので、次回は付けてください。そうすれば読者の皆さんがそちらを訪問する事が出来ますので。

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