Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

貴族的抗議活動の素材

2020-10-19 | 生活
ヴィーンの新監督フィリップ・ヨルダンの特集番組を聞いた。とても良かった、三時間番組の音楽部分は突っ込みどころ満載で二三分も聞く必要は無い、周知の通りだ、しかしインタヴュー部分は一通り聞いた。想定以上に親近感を持てた。先ず父親は有名なスイスフランス語地域の二流指揮者だったが、母親はヴィーン育ちのバレーリーナだった。そしてルツェルンで育ったことは知っていたが、母親の仕事の関係で国籍はアイルランドらしい。もしかするとカトリックの家庭なのかもしれない。素朴さがそのように感じさせて、ヴィーン訛りも、スイス独語も喋らない。英語、書き言葉ドイツ語が母国語で、フランス語は外国語のようだ。しかし、父親の関係か典型的なフランス発声のドイツ語を話す。

父親はチューリッヒのカペルマイスターをしていたが、母親がバレー関係で照明係と知り合いだったことで最初の本格的舞台経験は同地での「魔笛」の少年トリオで、アーノンクール指揮で歌って、そのアーティキュレーションに苦労してという話しから、またピアノを主体としてヴァイオリンも習い始めたという事だった。しかし指揮者を目指していて、ウルムでデビューした時は父親がとても喜んでくれた事、なぜならばそれまでは不細工な指揮ぐらいしか出来ていなかったからという事で、勿論父親は自分の苦労もあってか真っ当な職業を勧めていたという。

父親がパリで「ばらの騎士」を振る時にアシスタントとして19歳の息子を使ってくれたことが最初の仕事だったという。そして、父親の書き込みの総譜を使う事に成ったりと、また死の直前にヴィーンでまさに父親の楽譜を使って、また死の時には「ファウスト博士」を振っていた忘れがたい辛い思い出などを語った。やはりこの人の素直さは二代目にある人のそれだなと思わせる人の良さである。因みに爺さんはヴィーンで彫刻を習っていたという。

しかし何よりも感動させてくれた素直さは、自身のキャリアに関する言及で、ロンドンやミュンヘンでの超一流の監督就任はならなかったが、楽団の有名なヴィーンで先ずは五年その質向上の音楽劇場化に尽力しようと思ったという発言だ。元々トーンハーレには殆ど行かずチュ―リッヒの劇場に通っていたのもそうした劇場人間の性向で、劇場指揮者として演奏会をやる必要性はその反対と同じだという。だから座付楽団を鍛え直すためにもパリで演奏会をしたという。同時にヴィーンでは、現在のあまりにも出来の凸凹のある状況から歌手を含めたアンサムブルとしてボトムアップして行きたいとの抱負があるようで、先ずは現在の60演目から二割減らして、練習時間をその分増やして、客演指揮者も現在のように演目毎から厳選された客演指揮者陣に絞りたいとしている。

そして何よりも気に入ったのが今後の抱負として、身の丈知らずの事を考えていない様で、流石にその辺りは自身の能力を知っていてとても偉いと思った。素人では出来ないことだ。このインタヴューを聞いた感じが我々欧州の感覚であって、そもそも飛び回るような指揮者ではなく堅実な劇場指揮者である。それ以外のイメージはタレントに集るような商売人が勝手に作ったものでしかない。玄人筋で叩かれないのはこういう態度だろう。

自分自身の十の新制作でも今迄の常套の上演から刷新させたいと、ダポンテオペラを中心にヴィーンのモーツァルトを軸に置くという。まさしく先頃まで遣っていたようなガタガタのモーツァルトを刷新するという事のようだが、本人が振った演奏が流れるとこれはまたどうしようもない。任期を全う出来るか。バイロイトのそれも五重唱への本人の思いつきも披露されて流れたが、やはりエーファの歌も何もかも駄目だ。しかし、評論家は小まめに懇切に批判して行くのがいいと思う。素直なお坊ちゃんにはそれが一番効く。

発注したマフラ―が届いた。先ず色はチャコールグレーでドイツ語では正確にはアントラツィートとされる其の侭石炭の一種の色だ。どうもヘッセンのラーン河畔のライカ本社と同じ町の生産者にはグレーとしか書く宣伝力しかないらしい。ブラックもあったので迷ったがこちらの方が通常のスーツには合いやすい。そしてイタリア製の生地は今迄経験した事の無いような化学処理をしていない絹の肌触りで、真綿で包まれた王家の出でなければあまり馴染みが無いかもしれない。日本の着物等でも一寸違うような感じで柔らかい。しかし同時に目的であるマスク代わりに使うには、肌に馴染むだけでなくて、少なくとも現時点では立ってくれる。立つという事は、顔から離してフェースガードのような使い方が出来るので、息がこもらず眼鏡を曇らせたり、呼吸の音で楽音を阻害する事が無いように鼻まで隠せる。少なくとも座っていて50ユーロ罰金とは言わせないだけの誤魔化し方は出来る。音の反射も最小限だと思う、寧ろ起毛されているので吸音効果がある。夏は使えないが、今迄は毛の精々カシミアものしか使った覚えが無いので、この価格ではとても良い買い物をした。音楽会におけるマスク使用へのプロテストとしては十二分に満足のいく製品であった。音楽会等ではこれをいつも首に掛けておけば事足りる。



参照:
11月8日から変わる規制 2020-10-16 | ワイン
縛られた「蝶々夫人」生中継 2020-09-09 | 生活

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