田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

12 幻肢痛  麻屋与志夫

2023-01-12 09:30:32 | 超短編小説
超短編 12 幻肢痛
「ぼくと結婚してください」
 女は男の顔をじっと見つめた。
 男の手には高価そうなエンゲージリングがきらめいていた。
 あの人、タレントだった。
 公務員だなんてウソついていた。
 でも、わたしも彼に言ってないことがある。
 幻痛が左指にはしった。
 ありもしない手に痛みが走る。
 テレビではウイデングマーチが流れている。
「こんどの彼も。裏切ったら殺してやる」
 幻痛は激しくなるばかりだ。


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超短編 ぼく12歳なんだ 麻屋与志夫

2023-01-12 06:30:45 | 超短編小説
11超短編  12歳
「キングのスタンドバイミーのメインキャストは12歳なんだ」
 彼女はうれしそうな顔でさきをうながした。
「マキャモンの少年時代の主人公も12歳なんだよ」
 彼女は笑顔できいている。
「男の子の12歳は、女の子の生理がはじまる前みたいな歳なんだ」
 彼女はうなずく。
 この男の患者はときおり、記憶をとりもどす。
「だからぼくはもうすぐ男になる」
 彼女は、そうそうと顔であいづちをうつ。
「そうしたら結婚してください」 
 彼女は黙ってしまう。
「おねがい、結婚して」
 沈黙。
 彼女は目の前の紙切れに目をおとした。
 大正12年-12月-12日生まれ
 正確にはカルテにあるとおり大正12年なのだ。
 12歳ではない。でも12にこれでは、こだわるわね。
 クリニックの女医さんは患者の男を慈愛に満ちた顔でみている。
「あなたが、大正生まれだということに気がつけばいいのにね」


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