田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

朝食がすんだかただけお読みください。麻屋与志夫

2022-02-19 06:42:16 | ブログ
2月19日 土曜日
朝食がすんだかただけお読みください。

朝顔の外に漏らすな朝の露。
七十代で前立腺肥大になった。
おしっこがまめになる病気だ。
夜に至っては八回くらい通うことになる。
「春(ハル)―ンにいくよ」とよく妻に言う。
要するにpeeにいくということだ。
広い寝室に離ればなれに寝ているのだが、なにしろ築100年になる古民家だ。
床がギシギシする。
そのつど妻が目覚めてしまう。
別の部屋を寝室とすればいいのだが、ドッコイ、そうはいかない。
わたしは二度も脳梗塞で倒れている。
夜の寝ている間に発作が起きたらどうしょう……。

「肥大と癌はちがいますよ。いますぐなんらかの治療をしなければいけません」
わたしは放射線治療を選択した。
前立腺肥大の後で前立腺癌になった。

B2にある放射線科の治療室。
廊下。みんな最終宣告をうけたようにしょぼんとしている。
喉のあたり赤いマーク。やせ細った女性。
わたしも下腹部に赤の十字架の印がついていた。
廊下の長椅子。
となりの男。
涙目。

「どうしました?」
「ぼくは女房にしか見せたことがない。それを衆人環視のなかでさらすとはなさけない」
「あいては医療関係者だけですよ。お医者さんは、ぼくらの鼻をみると同じですよ」
「そうは言われても」
「Exhibitionismになったつもりにふるまえばいいのですよ」
くだんの男は沈黙。
「ストリッパーが舞台にたったきもち」
男はうなだれている。
「flasher」
「わかつていますよ。ぼくは大学教授です」
「御見それしました。だったら学生たちに顔をみせることには慣れているでしょう。性器をさらしていると思わない事です。精気にあふれたこのおれの男の根性をみろ! くらいのきもちになってください」
教授は元気になって、治療室に入っていった。
「あなたは、どんな人ですか」
田園調布のご婦人のように上品な喉に赤いマーカーの線のある婦人に声をかけられた。



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