田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

蝉のぬけがらに寄せるGGの想い  麻屋与志夫

2012-08-29 12:04:37 | ブログ
8月29日 水曜日

●GGは夜明けに目覚めた。
塾の黒板の裏側に位置する書斎のベットで、早い目覚めを向かえた。
すっきりとした目覚め。
快適だ。
よく眠れた後の心地よい朝だ。

●一度だった。
たった一度、低いだけだった。
室温が25°になっていた。
それだけで、快適な朝、気分良くパソコンを開いた。
寝ていても汗をかかなかった。

●人間の感覚はすごいとおもった。
たった一度の温度差を敏感にとらえことができる。
これほど爽快な朝はひさしぶりだ。

●今年の夏は暑かった。
日本の南では経験したことのない降水量を記録した。
関東は日照り。
わが栃木県では北関東名物の雷雨もほとんどなかった。
自然がどうかしてしまったのか。

●今年の夏、裏庭の木をきった。
杏の木が二本。
白木蓮。
共に三十年くらい茂っていた木だ。
夏にはこんもりとした木陰ができた。
裏庭に面した廊下はいつもひんやりとしていた。

●カミサンの呼び声に応えて、おおいそぎで裏庭に出た。
雨が降らないので白くひび割れ地面に蝉の抜け殻が点在していた。

●「木を切ったからだわ。せっかく七年目で土の中からはいだしてみたら……しがみついて羽化する木の枝も葉もなかった。かわいそうなことしたわ」
カミサンが涙ぐんでいる。

●蝉にはこの自然の変化がどうして起きたのか理解できなかったろう。

●木に登り羽化するべきなのに。
その木がなくなっていた。

●背中が割れて羽化し、飛び立つことができない。
そのまま死んでいるものがおおかった。
鳥についばまれてむざんな死にかたをしているものもいた。
このわずかな空間に。
これほどおおくの蝉が。
羽化するために、地中から這いだしていきたのだ。

●洗濯物を二階で干すために、なんども往復していた。
カミサンもいつまで若いわけではない。
もし階段を踏み外しでもしたら……。
ということで裏庭の木をきったのだった。

●新しくできた洗濯物の干場。

●そして、いま土を掘り返している。
バラを地植えにするための広がだ。
やがて、美しいミニバラ園がつくられるだろう。
バラの花々が美しく競い合うだろう。

●地面では蝉の亡骸が日に日に干からびていく。

●蝉は七年間地中で生きている。
毎年夏になると、無残な蝉の生態をこうして七年間は見つづけることになるな。

●「七年間か」GGはおもわず吐息をもらした。

●フルタイムの小説家になる夢はそのころまでには果たせるのだろうか。

●七十年間無名作家。七年間くらいはフルタイムの作家として生きたい。

●GGのすがりつくべき緑なす木はどこにあるのだろうか。

   切り株にしがみついて
    

    


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