田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

パパラッチを探せ  麻屋与志夫

2010-01-19 19:03:41 | Weblog
part2 パパラッチを探せ   栃木高校文芸部

3

「ぼくだけのほうが目立たないから……」
おれもいくという番長をおしとどめた。
ほかにも理由があった。
番長が敵対しているのが吸血鬼だと明かすには早すぎる。
「宇都宮餃子でもたらふくたべてきますよ」

オリオン通りにあると知美にきいてきた。
ネイルショップ「ドラゴン」はすぐみつけられた。
tattooタトゥ―の店もかねていた。
というより、店名からしてネイルのほうがあとからの出店なのだろう。
暗い洞窟につづくような狭い階段をおりる。
したから女連れの男があがってきた。
みるからにこわそうなオニイサンだった。
連れの女が龍之介をみてアラっという顔になった。
なにみとれてる。いくぞ。男から声がトンだ。

龍之介はブルージーンズにフリースの黒のブルゾンをきていた。
せなかにこれもユニクロのパックパックをせおっていた。

店内はかなり広くカーテンの奥ではかるい機械音がしていた。
手彫りではなく。
マシーンを使用している。
かすかな音が伝わってくる。
隣にネイルの看板がでていた。

「男のひとはしないわよ。あんたするき?」
女の子が笑っている。

「それに爪が夜に光ることはないわね。
蛍光塗料でも塗ったんじゃないの」

そういうことだったのか。
納得して路上にもどったところで取囲まれた。
「みかけない顔だな」



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パパラッチを探せ  麻屋与志夫

2010-01-19 05:48:40 | Weblog
part2 パパラッチを探せ

2

陽光の下にさらされた空き地。
雑草が無慈悲にも踏みにじられていた。
植木の大きな靴あとがのこっている。
踏み荒らされていた。
ヨモギの匂いがしている。
その餅草の匂いは母の手作りの草餅へとつながった。
春の匂いであり、五月の端午の節句の想いででもある。

そして雛人形。

渡辺の綱。

連想ゲームのようだ。

そうだ、アイツラは昔から腕の一本くらい切り落とされても平気なのだ。
平然と腕を取り戻しにくる悪鬼だ。
だから……鉤爪を回収にきた。
そこで……。
実像の消えてしまった被写体を不審に思って。
なにかないかと乱闘の場にもどったパパラッチ。
奥本とハチアワセ。
「なにもおちていないな。
おれも確かにおかしいとみた。
逃げ方もすばやかった。
まるでふいに消去されちまったみたいだった。
それにあいつらの爪がはじけ飛ぶのをみた」
「ですよね。おかしいですよ」
「だいたい宇都宮の下野高校の影番が栃木まで出張ってくるんだ」
「それだって、おかしいな。遠いんですか? 宇都宮までは」
「東武の電車で30分くらいかな。なんだ、コレ」
「奥本クンの携帯じゃないかな」
「おい。知美、奥本に携帯してみろ」
 体は大きいが、リアクションはスバヤイ。番長が携帯を閉じるとすぐに、彼の手の中のよごれた携帯がなった。
「困るな番長。誘拐現場をあらされては」
「オス。亀田センパイ。ごぶさたしてます」
「おれとなんか、まめにあわんほうがいいがな」
ここで昨夜悲鳴がした。という通報があったので、かけつけたところ、番長がいた。
番長はアタマをごしごとかきながら、昨日の経緯をせつめいした。
「なにか光っているな」
奥本の携帯はもちろん没収。
その証拠品を透明なプラスチックの袋にいれながら亀田刑事がつぶやいた。


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