田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

作家の休日  麻屋与志夫

2009-07-04 21:41:32 | Weblog
7月4日 土曜日

●「きれいな湖畔……。若いときにきてみたかったわ」

ひさしぶりでカミサンの――いまとなっては口癖の詠嘆的な言葉がもれた。恋人同

士のころにくれば、もっと感動しただろうに。あまりに恵まれなかったあの頃の

ことを追想しているのだろう。ひごろは、あまり、いや……ほとんど口にしな

い回顧からくる感傷なのだが、感激したときなどふと彼女がもらすことばだ。

●わたしは、いま書いている「奥様はバンパイァ」のストーリの展開のことばかり

考えていたので、すぐには応えられないでいる。まいにち小説を書きつづけている

と、現実の日常に小説の世界が混在してしまう。

●わてたしたちは、いま水戸の『千波湖』の湖畔を歩いている。『清宮質文』の版

画展を観てきた。興奮からまださめていない。湖面を吹きわたってくる風がここち

よくわたしには感じられる。

       

●「あのころの苦労があったから、いまのこの境遇が幸せに感じられる」わたしは

そんな平凡なことしかいえないじぶんがなさけない。

●書きかけの原稿だけでもなんぼんあるのだろうか。

○「玲加。あれからどうしたの? ……心配していたんだよ」

美菜が近寄ってきたので玲加はふりかえった。美菜は襟にネックウオマーをしてい

る。どうして??? もうこんなにあたたかな気候になっているのに。

●あすはそんな出だしで書き進めるか。まだ小説の世界からぬけだせない。

●湖面に黒鳥が泳いでいる。ブラックバンパイアの変貌の姿ではないか。まだ小説

の世界にいる。

       

●「あなた向こうに見えるのが『好文亭』ですって。さあ歩き続けましょう」

道を教えてくれた水戸のひとにわたしは軽く目礼した。カミサンはもう歩きだして

いる。カミサンとの距離を縮めるためにわたしは、小説の世界からぬけだした。

●はブログです。

○は小説の世界です。

●混同しないでくださいね。

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