7月4日 土曜日
●「きれいな湖畔……。若いときにきてみたかったわ」
ひさしぶりでカミサンの――いまとなっては口癖の詠嘆的な言葉がもれた。恋人同
士のころにくれば、もっと感動しただろうに。あまりに恵まれなかったあの頃の
ことを追想しているのだろう。ひごろは、あまり、いや……ほとんど口にしな
い回顧からくる感傷なのだが、感激したときなどふと彼女がもらすことばだ。
●わたしは、いま書いている「奥様はバンパイァ」のストーリの展開のことばかり
考えていたので、すぐには応えられないでいる。まいにち小説を書きつづけている
と、現実の日常に小説の世界が混在してしまう。
●わてたしたちは、いま水戸の『千波湖』の湖畔を歩いている。『清宮質文』の版
画展を観てきた。興奮からまださめていない。湖面を吹きわたってくる風がここち
よくわたしには感じられる。
●「あのころの苦労があったから、いまのこの境遇が幸せに感じられる」わたしは
そんな平凡なことしかいえないじぶんがなさけない。
●書きかけの原稿だけでもなんぼんあるのだろうか。
○「玲加。あれからどうしたの? ……心配していたんだよ」
美菜が近寄ってきたので玲加はふりかえった。美菜は襟にネックウオマーをしてい
る。どうして??? もうこんなにあたたかな気候になっているのに。
●あすはそんな出だしで書き進めるか。まだ小説の世界からぬけだせない。
●湖面に黒鳥が泳いでいる。ブラックバンパイアの変貌の姿ではないか。まだ小説
の世界にいる。
●「あなた向こうに見えるのが『好文亭』ですって。さあ歩き続けましょう」
道を教えてくれた水戸のひとにわたしは軽く目礼した。カミサンはもう歩きだして
いる。カミサンとの距離を縮めるためにわたしは、小説の世界からぬけだした。
●はブログです。
○は小説の世界です。
●混同しないでくださいね。
one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
↓
●「きれいな湖畔……。若いときにきてみたかったわ」
ひさしぶりでカミサンの――いまとなっては口癖の詠嘆的な言葉がもれた。恋人同
士のころにくれば、もっと感動しただろうに。あまりに恵まれなかったあの頃の
ことを追想しているのだろう。ひごろは、あまり、いや……ほとんど口にしな
い回顧からくる感傷なのだが、感激したときなどふと彼女がもらすことばだ。
●わたしは、いま書いている「奥様はバンパイァ」のストーリの展開のことばかり
考えていたので、すぐには応えられないでいる。まいにち小説を書きつづけている
と、現実の日常に小説の世界が混在してしまう。
●わてたしたちは、いま水戸の『千波湖』の湖畔を歩いている。『清宮質文』の版
画展を観てきた。興奮からまださめていない。湖面を吹きわたってくる風がここち
よくわたしには感じられる。
●「あのころの苦労があったから、いまのこの境遇が幸せに感じられる」わたしは
そんな平凡なことしかいえないじぶんがなさけない。
●書きかけの原稿だけでもなんぼんあるのだろうか。
○「玲加。あれからどうしたの? ……心配していたんだよ」
美菜が近寄ってきたので玲加はふりかえった。美菜は襟にネックウオマーをしてい
る。どうして??? もうこんなにあたたかな気候になっているのに。
●あすはそんな出だしで書き進めるか。まだ小説の世界からぬけだせない。
●湖面に黒鳥が泳いでいる。ブラックバンパイアの変貌の姿ではないか。まだ小説
の世界にいる。
●「あなた向こうに見えるのが『好文亭』ですって。さあ歩き続けましょう」
道を教えてくれた水戸のひとにわたしは軽く目礼した。カミサンはもう歩きだして
いる。カミサンとの距離を縮めるためにわたしは、小説の世界からぬけだした。
●はブログです。
○は小説の世界です。
●混同しないでくださいね。
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