田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

トマソン教師の憂い

2008-01-20 18:22:46 | Weblog
1月20日 日曜日 晴れ
●日曜日だが塾の特訓をした。その後、塾生を誘って宇都宮餃子館まで餃子をたべにでかけた。「すきなものをたべていいわよ」とカミサンが彼らにいっている。

●わたしは特訓を休んでしまい、いまここにいない、S 君のことを思っていた。このプランをたてたときいちばんここに連れてきたいのは彼だった。受験勉強のプレッシャーに耐えきれずこのところ口もきかなくなってしまった。

●この町の教育現場に身をおくこと43年になる。東京オリンピックでは県の通訳をした。それが通訳としての最後の仕事だった。それいらい、ずっと教壇に立ち続けている。あれからこの町のとくに英語を勉強する生徒もずいぶんとかわってしまった。

●英語と国語の勉強が嫌われている。努力すること、がんばりぬく精神か希薄なのだ。悲しい。なんとかならないものかと、こちらは必死で教えようとする。生徒はますます逃げる。しまいには教室で眠ってしまう。S 君がそうだ。中3になってから入塾した生徒だ。基礎的なことがぜんぜんわかっていない。中二のクラスにもダブって出席していいから。ということで励ました。下級生のクラスは嫌。出席したくない。たしかに上級生としてのメンツがあるのだろう。心ないことをしたと反省した。それでは、一対一で教えるからといっても、拒絶された。

●うてるだけの手はうった。あとは食事でもしながら心の緊張をもみほごしてやるほかはない。それで立てた計画だった。S 君はこなかった。この日の特訓と食事会のことは、家のものにはいっていないのだろう。

●教師としての無力感に泣きたくなる。現実はテレビドラマの学園青春もののようには展開しない。もっと暗いやりきれないものだ。S 君がすわっているべき席をじっとみつめた。ああ、ここに彼の笑顔があったらな。なんともいえないやるせなさにわたしは、苛まれていた。

●「ごちそうさまでした」生徒たちの元気な声もうわのそらできいていた。

コメント
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