ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『天皇の軍隊』 ( 大濱徹也氏の著書 )

2018-03-25 00:07:03 | 徒然の記

 大濱徹也氏著『天皇の軍隊』(  昭和53年刊 教育社 ) を、読了。

 三潴(みつま)氏の著書の後に、この本を読みますと、両極端の思想に接することになります。天皇崇拝の三潴氏から、左翼系教授の話ですから、興味深い経験をさせられます。

 昭和12年生まれの大濱氏は、存命ならば81才です。東京教育大(現筑波大)卒業後、同大の歴史人類学系教授、名誉教授を経た後、国立公文書館フェロー、淑徳大学客員教授をしています。肩書きは、日本の歴史学者です。

 簡単に言いますと、東京裁判史観に立った、「天皇の軍隊」の歴史的解説書です。

 東京裁判史観に立っていますから、「極悪非道な日本軍」はどのようにして作られたかを、明治初期から資料を基に説明しています。

 明治時代の日本は農民が80パーセントでしたから、無知蒙昧な彼らが、どのようにして皇軍の兵として鍛え上げられたかを、批判的な視線で叙述しています。

 でも私は、今ではこうした左翼教授の著書を手にしても、さほど驚かなくなりました。敗戦以来つい2、3年前まで、学者と言われる人物の出す書物は、ほとんど全て、東京裁判史観の上に立って書かれていると知ったからです。

 「日本だけが間違った戦争をした」「日本軍だけが、他国を侵略し、暴虐の限りを尽くした。」・・とこれが出発点で、何が何でも日本は間違いを犯した、悪い国として語られます。

 本論に入る前に、著者が使っている「15年戦争」という言葉を、説明しなくてはなりません。

 15年戦争とは、昭和6年(1931年)の満州事変から、昭和20年(1945年)にポツダム宣言を受諾し、太平洋戦争が終結するまでの戦争を、総称した呼称です。日本の先の戦争を、原因から結果まで論じることができるとして、反日学者・ 有識者などに利用されているのだそうです。

 保守系の人物や学者は、幕末から敗戦までの全ての戦争を「東亜百年戦争」と言いますので、「15年戦争」という用語を使うのは、反日・左翼学者と公言するのと同じことになる、と「ねこ庭」は理解しております。

 ・日清戦争が戦死者977人、傷病兵28万4526人であったのに対し、日露戦争は、戦死者4万6423人、傷病兵166万8076人となるほど、苛烈な戦争であった。

 ここで氏が言いたいのは、日露戦争時の傷病兵166万8076人のうちに、性病にかかった兵士が1000人あたり、2、30人いたという事実です。

 211ページの中の、139ページの部分の叙述ですが、なぜ最初から紹介せず途中からやるのかと言いますと、氏が反日・左翼教授ということを示す言葉を発見したためです。

 日本だけの特殊事情であるように氏は語っていますが、世界のどこ国の軍隊も、兵の疾病対策には苦心しています。精神的、身体的病気から、兵の健康を守ることが、軍の士気を大きく左右するからです。

 そうであるのに氏は、兵の花柳病 ( 性病 ) に関する話を、大正元年から昭和2年までの資料に基づき、次のように説明します。

 ・これほど花柳病が、兵を侵す病毒となった原因は、兵士の個人的な理由である以上に、非人間的兵営生活が彼らを抑圧し、安い私娼の世界へ走らせたためであった。

 ・それは、兵士個人の自覚の欠如からきた病気であるというよりも、兵士を物として扱った軍隊が、必然的に負わねばならなかった社会病理の典型だったのである。

 性病の浸透は、軍隊生活の非道な圧迫と、理不尽な日々から生ずるもので、全ては軍に責任があると氏は主張します。そして次のように続け、韓国を喜ばせる慰安婦問題につないでいきます。

 ・ここに帝国軍隊は、兵士の頭脳のみならず人体の下部にいたるまで、兵士の心身を監視統轄する必要に迫られた。

 ・それは15年戦争下において、軍の督励指導のもとに、従軍慰安婦の名で女たちを戦地に送り込む、遠因となっていたと、言えよう。

  ネットで調べますと、憎むべき売国詐欺師だったあの吉田清治が、『朝鮮人慰安婦と日本人』という本を出したのが、氏の著作が出版される1年前の、昭和52年でした。

 朝日新聞だけでなく大濱氏も、吉田清治の大嘘を活用し、「日本軍罪悪説」を世間に広めていたことが分かりました。

 朝日新聞は吉田清治の本の出版以後、約40年間もの長い間、慰安婦の捏造記事を世界に発信してきました。朝日新聞だけでなく、氏のような反日・左翼の教授や学者たちと、反日野党の政治家が騒ぎ立てたのですから、日本の歴史が台無しにされるはずです。

 どんな内閣もマスコミが一斉に、3ヶ月間ネガティブ・キャンペーンをすれば倒される、というのが常識らしいのですが、振り返りますと確かにそうでした。

 日本中の新聞が大見出しで攻撃し、テレビが毎日悪口を報道すれば、誰でもその気にさせられてしまいます。かっての「ねこ庭」は、マスコミが攻撃すれば、叩かれる人間が悪いのだと考えていました。

 マスコミを信じていたからですが、慰安婦問題以来、彼らの捏造の悪どさを知り、信頼するのを止めました。

 氏の著書が出版された昭和50年代なら、まだ「ねこ庭」がなかった時なので、私も「お花畑の住民」になっていたかもしれません。

 氏の本は、反日・左翼の活動がいかに広範囲に、しかも巧みに行われていたのを、教えてくれる材料でもあります。これだけ日本中が、東京裁判史観で染められていたら、自民党の議員諸氏を「国会で眠っていたのか」と攻め立てるのも、一方的かと思ったりします。

 いやそんなことではなく、自民党の議員の中に、朝日新聞や反日学者と同じ意見を持つ者がいるのですから、「憲法改正」の困難さが一層分かります。

 今回も話が横道へ外れましたが、ついでにもう一つ、横道へ進みます。

 ネットで私が調べたところでは、日清戦争時の日本軍の総数は、約24万人で、日露戦争時は、約30万人となっていました。

 そうだとすれば、氏の言う日清戦争時の「傷病兵28万4526人」と、日露戦争時の「傷病兵166万8076人」とは、いったいどこから持ってきた数字なのでしょう。

 軍人の数より傷病者が多い多いのですから、おかしなデータです。「ねこ庭」のように、いろいろ調べる人間が少ないせいで、氏のでたらめな数字が見過ごされていたのでしょうか。そうなると、氏の本自体が朝日新聞に負けない捏造の悪書となります。

   1. 「国民皆兵の虚実」 2. 兵営への道   3. 兵営生活の虚実

   4. 天皇と「股肱の臣」 5. 兵士たちの素顔 6. 出征兵士と留守家族

   7.  「皇軍」哀歌

 以上7章に分かれ、氏の意見が述べられていますが、続ける気持が無くなりました。読者が疑わないのを良いことに、おかしな数字を使う心根の卑しさが私を失望させます。

 期待する人はいないと思いますが、本日で氏の本の紹介を終わりにします。

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