ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『日本史の真髄』 - 98 ( 藤原道長の栄華 )

2023-05-23 18:12:26 | 徒然の記

 〈  第十八闋 月無缺 ( つきにかくるなし )    藤原道長の栄華     7行詩  〉

 今回も予定通り順番に、「書き下し文」と「大意」を紹介します。( 漢字のない部分をカナ表示にしています。)

 〈「書き下し文」( 頼山陽 ) 〉 7行詩

   月に缺 ( か  )くる無く 日に缺くるあり 

      日光は太 ( はなは ) だ冷えて月光は熱し 

   枇杷第中 ( びわていちゅう ) に銀海 ( ぎんかい ) 涸 ( か ) る

   金液 ( きんえき ) の丹 利 ( と ) きこと鉄のごとし

   既生魄 ( きせいはく )  蒡死魄 ( ぼうしはく ) 

   日月並び缺けて天度 ( てんど ) 別 ( わか ) る

   別に大星 ( だいせい ) の光の殊絶 ( しゅぜつ ) せる有り   

 〈 「大 意」( 徳岡氏 )  〉

   望月 ( もちづき )の欠けたることもなし、だが太陽には蝕がある

   枇杷邸の内で 帝の瞳の銀の海は涸れ

   薬と称して献じられた金液丹は、その効きめ、鍛えた鉄の凶器の切れ味そっくりだった

   すでに生きながら魄 ( はく ) であった朕 ( わたし )だ。いっそ死んでハクとなろうよ。貴方はそう言って位をおりた

   やがて日月いずれも衰えて、天の度 ( のり ) は別ものとなった

   日でも月でもなく巨大な星の おそろしく光り輝くのが出現したのだ

 いつもの通り、文字が読めても意味は理解できません。渡辺氏も読者の事情が分かっているらしく、頼山陽の詩を離れた解説をします。息子たちのためにもっと分かりやすくするため、私はさらに順番を入れ替え、前第十七闋の関連部分から紹介します。

 「さて、六十五代花山 ( かざん ) 天皇を欺いて出家させ、第六十六代一條天皇を擁立した藤原兼家・道兼父子であるが、関白の地位は道隆に行って、なかなか道兼に移らず、道兼がようやくその地位を得ると七日にして死去した。」

 これが前回の詩の内容で、一條天皇の母は兼家の娘詮子( あきこ ) だったというところまででした。

 「次の世代の地位争いは、道兼の弟である道長と、道隆の子伊周 ( これちか ) との間に起こった、叔父・甥の競争である。」

 副題にある通り今回は、藤原道長の栄華の詩です。第十八闋の最初のページに戻り、書き出しの部分を紹介します。

 「藤原時代が後宮政治であることは、誰でも知っている。それが道長の時代に至って、極点に達したこともまた周知のことである。朝廷をめぐってその閨閥が、いかに濃厚に交差しているかは想像に余りある。」

 入り組んだ閨閥の系図を、氏は読者のため作っていますが、大変な作業だったようです。

 「この作業の方が、原稿そのものを書くよりずっと時間がかかった。道長の娘たちから生まれた男の子 ( 孫 ) たちに、それぞれ別の娘たちが嫁ぎ ( つまり叔母・甥の婚姻 ) 、さらにそこから生まれた男の子 ( ひ孫 ) たちに、別の娘や息子たちから生まれた娘たちが嫁ぐ ( この場合も叔母・甥の婚姻 ) 、ということがいくつも重なる。」

 「系図には深く関係のない部分は省略したが、いかに網の目のような入り組み方であるか、一見してわかるであろう。」

 氏の労作が挿入されていますので、よく分かりますが、複雑なため記憶するのが難しく、すぐ忘れそうです。どうしても見たい人には、氏の著書を図書館で借りられることをお勧めします。大事なことは、この近親婚で道長の栄華が保たれたと言う事実です。なぜこうなったのか、日本だけの特有の話なのか、次回はこの点に関する氏の解説を紹介します。

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