ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『日本史の真髄』 - 97 ( 花山天皇の晩年 )

2023-05-10 13:42:32 | 徒然の記

 〈  十七闋 七日関白 ( なぬかくわんぱく )    藤原氏内部の権力闘争   8行詩  〉

 「冷泉天皇と藤原伊尹 ( これただ ) の娘懐子 ( かねこ ) の間に生まれた、第六十五代花山天皇が帝位を去れば、円融天皇と野心家兼家の次女詮子 ( あきこ ) との間に生まれた皇子 ( みこ )  が、皇位につくことになる。」

 「これが第六十六代の一条天皇になる。このかたは、花山天皇を欺いて出家させた道兼から見ると、女姉妹 ( きょうだい ) の息子、つまり女系統の甥、つまり〈 表甥 ( ひょうてつ ) に当たる。 〉」

 ややこしい説明になりますが、この話が分からないと、二人が何のために陰謀を企んだのかが理解できません。

 「この表甥が天皇になられると、その爺、つまり外祖父となる兼家は、長く待望していた氏 ( うじ ) の長者となり、摂政・太政大臣になった。これは筋書き通りでなので、次の一行となる。」

   表姪 ( ひょうてつ ) は帝となり、爺は國に當 ( あた )る

 「ところが、花山天皇を欺いて出家させた道兼の方は、うまくいかなかった。道兼は、これほどの策略を実行するくらいだから、心性すこぶる荒っぽかった。兼家を関白にした第一の功労者なのに、兼家は平惟仲や平国平の意見に従い、自分の後継者を長男の藤原道隆にした。」

 父の出世の役に立ったのは自分であり、関白の位を自分に譲るべきなのに、自分の兄の道隆に譲ったのはけしからんと怒りました。そう思っていたので、父兼家が死んだ時、喪中でも悲しまず、お客を集めて遊び事などをしたため、世間の評判を落としたと言います。

 「しかし道兼は出世しなかったわけでなく、関白になれなかっただけである。兄の道隆が死んだ時は、右近衛の大将を経て右大臣であった。兄の子たち、つまり道兼の甥たちは、何とか道兼を抑えようとしたが成功せず、道兼は父と兄の後を継いで関白となった。」

 「しかし、たった七日しかその位につかず死亡したので、世の人は彼を〈 七日関白 」と言った。これが頼山陽の詩の最後の一行である。」

   吾は博 ( はく ) す 七日 ( しちじつ ) の関白 ( くわんぱく ) 職

 天皇を祭り上げ、政治の実権を握っていた摂政・関白の地位は、これほどまでに彼らの心を奪うもので、一族間の争いを招きました。権力の持つ魔力と、これを求めて争う彼らを笑うのは簡単ですが、現在でも、政権のトップの座を狙い政治家たちが争っています。日本だけでなく、アメリカ、中国、イギリス、フランス、ドイツと、変わらない有り様がニュースを賑わせています。

 「時代時代の権力者にいい様に祭り上げられ、利用されて来た天皇・皇室の歴史。史実は史実、それを尊ぶと言うのならただ有り難がり、縛られるのでは無く、其処に在る「失敗」「間違った選択」から学び、先々を考え、新しい選択をする事こそが肝要であろう。」

 先日紹介した共産党親派のボウフラ君の意見ですが、息子たちのために、ボウフラ君の意見の正しさと間違いについて、説明しておきます。

 ・藤原氏一族に祭り上げられた天皇のお姿を批判する意見には、一面の理がある

 ・天皇を利用した藤原氏一族への批判には、一面の理がある

 ・しかし権力を争い、醜い戦いをしている人間は世界中の国にいる

 それなのに、日本の歴史を読み、頼山陽の詩を読み、共産党とその親派であるボウフラ君は、なぜ日本だけを蔑視し、否定する意見を述べるのか。

 今更言う必要もありませんが、彼らには世界を見る目がなく、70余年前の敗戦以来、日本だけがダメな国であるという妄想を抱き、自分の生まれた国を憎む歌を歌い続けているのです。

 息子たちのためには渡部氏の解説を紹介する方が、よほどためになります。

 「出家した花山天皇は、数年後に京都へ入り外祖母  ( 藤原伊尹の娘懐子 ) の家で暮らされた。和歌や芸術の面で優れた才能を示し、風流者と呼ばれ、道兼の後に出た権力者、道長との関係はすこぶるよかった。」

 ここでもう一つ、東京裁判への出頭前夜自決した、近衛文麿元首相の言葉を思い出せば、古代から現代に続く歴史の流れを感じることができます。

 「陛下を裏切る人間がいるとしても、ただ、近衛家の場合は別である。多年皇室の恩寵を賜り、時には皇室に数々のご迷惑をかけてきた、藤原、近衛家であるからして、天皇と運命を共にしなければならないと思う。」

 皇位をうかがうことはしなかったとしても、兼家・道兼親子の話を知りますと、数々のご迷惑をかけた来たのは事実ですから、近衛公の言葉が実感として伝わります。

 ということで、氏の解説は次の詩に移ります。

 〈  十八闋 月無缺 ( つきにかくるなし )    藤原道長の栄華   7行詩  〉

コメント (2)
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