まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ山復活させ隊 NEWSLETTER 914 

2014年05月27日 |  マツタケの林地栽培 

5月31日(土)は、まつたけ山復活させ隊第441回活動日です。午前10時に京都市左京区岩倉 村松 138-20 香川山(自称:下記の§活動拠点へのアクセスを御参照下さい)にお集まり下さい.活動の様子は、宮崎 昭さんが当日夜、報告します。

 本日は、京都精華大学 地域環境学(板倉教授)受講生25名が参加します.地域のいいものを発見し、学ぶというユニークな授業の一環です.岩倉地区には、近代的マツタケ学発祥の地とも言える尼吹山があります(香川山BCから西南方向に直線で約600m).一般的には知られていないでしょうが知る人ぞ知る、世界の宝です.

 午前中、マツタケの話、次いで里山林再生の必要性などについて討論します.昼食後、各班の作業予定をディスターブしますが、幾人かの学生の作業体験をお願いすることがあります.よろしくお協力のほど願い上げます.
 食当の皆さんにもご迷惑をおかけします.昨年参加の学生たちは手作りのピザの美味しさに感激していました.

気温が高くなって来ました.熱中症やマダニなどに咬まれないように、虫刺され、そして事故に気をつけて、マツタケ山づくりを楽しみましょう! 各地で山火事が発生。入梅までは要注意月間です.私たちも昼食の準備に火を使います。火の後始末には十二分に気をつけて下さい。 
 
前回の活動の様子です.
 食当班の皆さん!毎回の奉仕ありがとうございます.皆さんの活動抜きには、まつたけ山復活させ隊のマツタケ山づくりも成り立ちません(写真1,2).午前の作業を終えて、楽しみの昼食タイムです(3,4).各班の作業です.新人も活躍しています(5,6,7,8,9,10,11,12,13).写真は左クリックで拡大します.
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マツタケ山づくりの話17

      <マツタケは、人による原生林の破壊によって登場し、人による里山林の破壊によってその生を終わろうとしている> 
 
 マツタケとはどんなきのこであるのか、次いでその生息地であるアカマツ林が含まれる里山林の危機と進み、日本ならではの発想「マツタケの生活する里山林」づくりを担う市民の運動を紹介して参りました。
 
 前回まで、マツタケの出ている(orだろう)林を確保しよう! その特徴をまとめてみよう! と進んできました.では手入れを!とはやる気持ちを抑えて、もう少しマツタケ山づくりの科学を学んで下さい.お急ぎの方は、トロント刊行の「マツタケ山のつくり方」を御覧ください。多くの図書館で購入戴きましたのでそこでお探し下さい。
 
 今回も、(株)トロント刊行(03-3408-1521)の「マツタケ山のつくり方」と岩泉まつたけ研究所の実践と大学の講義資料などを参照しつつ、その実際を書き進めます。 少し退屈で堅い話が続きますが、マツタケとアカマツのことをよく知って作業することが間違いのないそして早道です。目を通してください。

マツタケ山づくりの科学

感染のメカニズム
マツタケとアカマツの根の接触によって両者の細胞の中では代謝が互いに活性化され、マツタケは宿主に侵入しようとするし、宿主はそれを阻止しようとする.植物は生来的に抗菌様物質を持っている.アカマツの場合、ピネン類がそれにあたる.マツタケの菌糸はアカマツの表皮の細胞壁を溶かし侵入しようとする.アカマツはその周りにリグニンを蓄積し、また、タンニンを分泌し対抗する.なのでマツタケは、アカマツと相利共生するも、いささか寄生的であるように見える.

ホルモンの分泌
マツタケが盛んに発生するアカマツ林で、マツタケのシロの外側の土壌の断面を見てもアカマツの細根はあまり多くはないが、マツタケの子実体直下の土壌の断面はアカマツの細根が充満している.マツタケ二次菌糸が根に感染するとインドール酢酸(IAA)という植物ホルモンが合成され、アカマツの根は徒長気味になるがフォーク状やテング巣状の分岐が盛んで伸長が促進される.これはアカマツの吸収根の表面積の増大であり、アカマツにプラスのことである.先述の濱田先生は「マツタケがアカマツの根を育てる」と言われたがそのように見える.

活性菌根は抗菌様物質を出す
マツタケの菌根で生理的に活性の高い状態のものを活性菌根という.この菌根は土壌微生物の排除効果を持つ.この現象はマツタケだけやアカマツの根だけでは決して起こらず両者が揃って初めて引き起こされる(小原弘之 1964).岩泉まつたけ研究所で、マツタケのネズの菌根形成の実験でネズの菌根が微生物を排除する効果を持つか調べた.ネズのマツタケ菌根も抗菌様物質を産生する.

 アカマツ林土壌から分離した細菌(Bacillus sp.)を寒天培地にまき、その上にネズのマツタケ菌根を置床し18時間後の様子を見ると、Bacillus sp.の生育がはっきりと阻害されている.これによって、マツタケのアカマツ菌根が土壌微生物に抗しているのである.この物質の特定はまだである.

 マツタケの二次菌糸は、 このようにアカマツの攻撃や土壌微生物との競争を巧みにかわして、附近のアカマツの細根にどんどん感染し菌根を増やしていくのである.やがて量的に増えた菌根はシロというユニークな構造を持つようになる.

4)シロとはマツタケの本体
マツタケの菌糸は、感染に成功したアカマツの根の生長を促進、また、病原菌から両者を守るなどして生育環境を整えていく.しかし、周辺に未感染の細根が存在しないとマツタケの菌根はやがて消滅する.深さ10cmより浅い土壌層にアカマツの細根が集中するように林の手入れが必要である.シロ体積が1.5~2リットルほどになるとマツタケ子実体を発生する.ここまでに3~5年掛かる.

 私たちは通常、マツタケの子実体を発見して初めてシロの存在に気付いている.秋、林床の落葉などを剥ぐとマツタケの菌糸が白く見えるから白、マツタケ発生の様子が城壁のように見えるから城、あるいは苗代の代の意味で使われていたという.マツタケの菌糸がアカマツの根に感染し特有の形態の菌根集団を土壌中に形成.これがマツタケの本体である.
 シロとは物理的にはマツタケの菌根の影響のある範囲を指すが、その空間にあるものすべてを含み、細菌や糸状菌など微生物、小動物や植物の根が侵入したり排除されたりして創られるマツタケを中心とした森林土壌生物の生態系である.

シロの生長
 京都市尼吹山で10年間に渡って、マツタケの一つのシロの生長の様子を上から観察した記録がある(濱田 稔1974).子実体の石突あとに正確にクイを打って調べる.マツタケ子実体の発生位置は基本的には同心円状であるが、実際には波状となり途中で発生が途切れたりもしている.マツタケもカビであるから土壌空間が均質であれば、食パン上に生育した青カビのように、子実体発生位置もきれいな円になるが土壌中ではそうはいかない.

 発生位置は輪の中心から見て以前の発生位置より必ず外側に広がる.しかし、輪の中心からの距離が去年より今年が短い部分もある.これはシロの先端が波打っているからそのように見えるのである.今年発生がなくともしばらくすると菌根が回りこんで輪が繋がることもよくある.シロの生長速度は全国平均で10~15cmである.

 岩手県岩泉町における観察でもシロの広がる距離は西日本と同じであるが、その年の気象にも左右され50cm広がることも稀ではない.シロの生物集団のせめぎあいがつくりだしたバランスの上にシロの生長もあるのである.この尼吹山の試験林は、人為的な選択圧を加えず自然のサクセッションに委ねていた.マツタケの生活に負のレギュレイションが働かないようにアカマツ林の手入れを続けたらシロの生長の様子は違った結果になることはもちろんである.

 こういった観察はマツタケのシロの生長状態を連続して見ることになるから、シロの健康診断になる.マツタケのシロの一部に数年マツタケが発生しなかった場合、アカマツの細根の分布がないためかもしくはケロウジのような競合キノコの菌糸網が発達してきたためか発生のない部分を掘ってその原因を調べることができる.アカマツの細根量が低下して菌根量が減ると他のキノコにシロが侵食されやすくなる.これを防ぐには健全なアカマツ林を誘導する以外に道はない.

シロの断面の様子
マツタケのリング状のシロの中心を通る線に沿って鉛直に土壌を掘り断面を詳しく調べるとシロの先端から中心に向かってシロは七つのゾーンに分かれる(小川 眞1975).秋のマツタケの発生が終わってもマツタケの菌糸の生長はしばらく続くが、アカマツの根の生長は止まるためマツタケの菌糸のみのゾーン(Ⅰ)がシロの先端の少し外側につくられる.春には伸長してきた根に感染、菌根となりゾーン(Ⅱ)となる.

 ゾーン(Ⅰ)の内側に菌糸がアカマツの細根に感染して形成された先ほどの若い菌根のゾーン(Ⅱ)がある.更に中心に進むとゾーン(Ⅲ)となり、ここは菌根量も最大である.菌根は黒化して周りに綿毛状の根外菌叢を持ちシロ土壌は未感染土壌に比して乾燥気味である.ゾーンⅠ~Ⅲを生理的に最も活発であることから活性菌根帯と呼ぶ.
 
 その内側は子実体を発生したところで、その生長に養分を消費して菌根も崩壊しその分解が始まっている(ゾーンⅣ).そこから更に中心に行くと微生物の分解を受けにくいアカマツの主根から脱落した細根や菌糸の残骸が多くなるゾーン(Ⅴ)となる.
 
 ここから中心に進むに連れてシロの深さが浅くなり未分解の根の組織が多くなるゾーン(Ⅵ)となる.ゾーンⅣ~Ⅵを崩壊菌根帯と呼びマツタケの今後の発生のない忌地である.更にここから中心までがゾーン(Ⅶ)で、アカマツの根のセルロースやヘミセルロースやリグニン、マツタケの菌糸のキチン類などの微生物分解も進んでいる.
 
 ゾーンⅥ~Ⅶになると見掛けはシロ外部の未感染土壌と変わらないところも出てくる.しかしアカマツの根の侵入は少ない.シロの忌地回復のため客土をしてもマツタケの再発生の例はない.シロの最初の形態はホットケーキ状で生長するに連れてドーナツ状になる、ドーナツ状の中心部が忌地である. 続く

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§活動場所:京都市左京区岩倉村松町138-20 香川山 (京都バス停留所「岩倉村松」から北東へ450m徒歩6分) 

 活動開始は午前10時頃から、終わりは午後4時頃.自由参加可能 ただしコアータイム昼食時は必ず参加のこと.
アクセス:
京都バスの「岩倉 村松行き」に乗車.
このバスに乗車するには、
ア)JR京都駅七条口から(バス停「C6」番、所要時間約60分)
イ)阪急京都線四条河原町駅から(四条河原町交差点河原町通り北へ上ル東側)40分
ウ)京阪本線出町柳駅から(加茂大橋東詰め北へ上ル西側、約30分)
エ)京都地下鉄烏丸線国際会館から(3番出口からバスターミナル1番)約15分
(地下鉄烏丸線はJR京都駅、烏丸四条、烏丸御池、国際会館などに停車)

§参加費は無料;ただし、消耗品費は皆さんの浄財カンパで成り立つ、或いは必要に応じて徴收.メンバー参加者には、現在、食材費+消耗品費として400円を徴収.登録外参加者・見学者などは要500円(施設利用代などを含む).

§参加や見学希望の方は、ブログ画面左にあるカテゴリーから「まつたけ山復活させ隊とは」を左クリックでご覧下さる様にお願いします.
内容
まつたけ山復活させ隊の活動について 
§1 我々のまつたけ山再生運動とは? 
§2 まつたけ山復活させ隊に参加するには 
§3 私達のマツタケ山造り(作業方法の特徴)
§4 こんな活動をしています! 
§5 今年の予定と目標?

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まつたけ山復活させ隊活動日

予定日  2014年5月~6月
回  開催日  報告担当者  男厨シェフ

441 5月31日 土 宮崎 京都精華大学 地域環境学(板倉 豊教授担当)受講生25名参加
442 6月06日 金 三輪
443 6月14日 土 吉村   川崎
444 6月20日 金 榎本
445 6月28日 土 三輪

    11月7日(土)             京都造形芸術大学 環境学受講生 マツタケ山づくり体験 

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§カンパありがとう!  

§カンパお願い: 運営は皆さんのカンパで成り立っています!
         みやこ松茸・里山復活! 京都の文化・景観を守るために、里山林整備に努力しています.
   
カンパの振込先
 氏名:  まつたけ十字軍 代表 吉村文彦
 銀行名: 京都銀行 山科中央支店 口座No. 普通預金 3698173

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§主 催
まつたけ十字軍運動
代表 吉村 文彦(マツタケ生態学)
京都市山科区御陵岡ノ西町38-27
090-6227-4305 matsutake10@gmail.com

香川理化学研究所
代表 香川 晴男

§共 催
京都大学マツタケ研究会
代表 大石 高典

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