まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

マツタケは栽培できる(8)

2005年09月24日 | マツタケの生理生態

写真は、人工林に胞子を播種して発生したマツタケ.日本で初めてである.

人工アカマツ林にもマツタケは発生
岩泉町に13、000ha以上、岩手県全体では15万haのアカマツ人工林がある.アカマツ人工林は、そのほとんどがマツタケ発生前の若齢林で、ある林齢までは除間伐作業がなされるが、その後は、放置されているに等しい(有用資源の放置である).
しかし、岩手県林業公社造林の人工アカマツ林にも、マツタケの発生がすでに確認できている.このことは、人工アカマツ林でマツタケ栽培が可能になっていることを示している.

岩泉まつたけ研究所の輝かしい成果の一つであるが、向林試験林の一斜面に人工植栽のアカマツ林がある.1991~1992年にわたってアカマツ林の手入れを実施.そのあとに土壌表層に階段状のステップを作り、マツタケの胞子とアカマツ細根との出会いすなわちマツタケ感染の機会を大きくするための作業を施した.
1997年に、マツタケの自然感染による初シロが二つ形成された.岸町有林(1994、マツタケ胞子の人為散布法でマツタケ発生)についで二度目の成功である.このことは、人工アカマツ林におけるマツタケ栽培法が確立したと考えてよい.実はそれは江戸時代にも見られるマツタケの栽培法であったのである(群馬県太田市金山城).

アカマツ人工林でマツタケを栽培するためには、林齢15年くらいあるいはそれ以下の若齢林にマツタケ発生環境整備作業を行うようにすべきである.現在の材生長の手入れ(=除間伐材の林内放置=土壌の富栄養化を招く=キノコが減少=樹木の衰弱)から、マツタケ栽培の手入れに変換をすべきである.

マツタケ向きの手入れを施しても、材の生長に有意の差はなく、むしろ、樹木の生長に有意な効果をもつ菌根性のキノコの減少を招く現在の林業技術は直ちに変更すべきであろう.

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第13回まつたけ十字軍運動のご案内

2005年09月21日 |  マツタケの林地栽培 
9月下旬というのに、京都の気温は、「暑さ寒さも彼岸まで」とはならないようです.皆さんは、いかが感じていらっしゃいますか? 秋は10月かららしい.キンモクセイの蕾も4×2mmと未だ硬い.また、蒸し暑くなる予報です. 

本日も、京都から2名の初参加の予定.まつたけ十字軍運動の「会員」は74名となりました.毎回の参加者も15名前後を維持していて、皆さんの里山林再生と京まつたけ復活への情熱を感じます.
 
岩倉の作業も、今回で13回目となり、参加者の皆さんのがんばりで見違えるような林になっています.これが、まつたけの生える昭和30年代の里山林の姿で、それに近づいています(写真).

今日は、吉川さんが移動式の製材機で、除伐したヒノキを二つに縦割りにします.それで机を作ります.また、吉川さんは、10月10日、 昼12時30分ごろ、粟田神社 神幸祭で剣鉾による先触れを勤めます.三条通粟田口付近に鎮座する桐鉾担当です.祭りについては、http://daysento.ld.infoseek.co.jp/takagiya/awata.htmlを参照.
 
10月中旬以降の作業日は、嵯峨ブランドのマツタケ発生調査に切り替わることがあります.ご注意ください.

第 13 回 作 業 予 定 日
1)実施日    2005年9月23日(金)
2)集合時刻 午前10時30分(午後4時作業終了)
3)集合場所 京都市左京区岩倉村松町 京都バス「村松集会所前」バス停
4)服装等 山で軽労働できる服装、運動靴、タオル、手袋、など
5)用意するもの 飲料水、弁当、交通費.お持ちならノコ・ナタ、熊手、
ヘルメット.
6)アクセス
京都バス:
出町柳から(41系統、所要時間25分)
四条河原町から(41系統、所要時間38分)
叡山電鉄:
出町柳駅-岩倉駅(12分)から北へ徒歩15分
7)雨天の場合  午前9時現在、雨天の場合は、本日の作業を中止します.
都合の良い時間帯だけの参加も大歓迎です. 尚、参加費は、無料  

参加申込は吉村・大月までお願いします.

今後の作業日のお知らせ
作業地は岩倉村松団地奥のアカマツ林.集合は現地、もしくは京都バス「村松集会所前」に午前10時30分.作業時間は、いずれも午前10時50分より午後4時まで.
10月 1日(土):第14回作業日
10月 6日(木):第15回作業日
10月15日(土):第16回作業日
10月20日(木):第17回作業日
10月29日(土):第18回作業日

主 催 団 体
吉村 文彦(連絡先;担当責任者)
まつたけ十字軍運動 本部    
607-8166京都市山科区椥辻番所ヶ口町173 075-581-3210(Fax兼用)、090-6227-4305
大月 健
京都大学マツタケ研究会(京大農図、大月 健気付090-4280-3334. 飯塚弘明)

共 催 団 体
NPO国際環境微生物応用研究機構、香川理化学研究所、NPO市民環境研究所
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マツタケは栽培できる(7)

2005年09月20日 | マツタケの生理生態

マツタケの栽培法                
マツタケの栽培法は2通りある
一つは、温度、湿度、培養基の性質など物理的要因や化学的要因を制御した環境で、マツタケの胞子や培養菌糸を培養基に接種してマツタケ子実体を得る方法である(狭義の人工栽培).

二つ目はアカマツ林をマツタケの生活しやすい環境に整え、アカマツ細根を増加させマツタケの胞子などを播種したりして、マツタケ子実体を得る方法である.マツタケ菌糸マットをアカマツの根に接種し、人為的に菌根を作ることも可能になった.

前者の方法は、100回に1回くらいの割合で親指大のマツタケ子実体が得られる.なぜマツタケ子実体が得られたのか、あるいは何故得られないのか解明できてないので再現性を欠いている.

後者は、アカマツ林を健全に誘導する効果もある(このことは,ヒトが生活するために極めて重要なことである).全国的に森林の放置が進み森林機能の低下を来している森林の現状を改善する必要性からも最も望ましいマツタケの栽培法である.
そう言う意味で,マツタケのオガ粉栽培など考えるべきではない.

林地栽培の効果
 岩泉町の例
マツタケが発生しているアカマツ林に正しいマツタケ発生環境整備を実施した場合(単に昭和10年代のアカマツ林に戻すことである)、その効果は100%である.まつたけ研究所向林試験林(1ha)では、1990年に発生環境整備を実施、36のシロを確認.現在(2000.10)は101のシロを有するにいたっている.

マツタケ未発生林の場合、失敗例が少なからずある.この原因は、発生環境整備を初年度に実施し、その後、林を放置することにある.整備後の林の放置は放置以前以上にマツタケの生活に不向きな状態になる.

こんな例がある.マツタケ発生環境整備事業には公的資金の補助制度があるが、例えば、2週間で作業が完了する計画なら、人は2週間しか山に入らない.補助金制度に問題があるにせよ、これは作物の栽培者のすることではない.

アカマツ林に適正な手入れを恒常的に施しさえすれば、マツタケ既発生林ではシロ数やマツタケ発生数の増加が見られる.また、研究所試験林のマツタケ未発生林(人工アカマツ林)においては、1993年に岸長内沢試験林(人工アカマツ林、20年生)で、また、滝野向林試験林(人工植栽、35年生)では1997年に、初シロの形成をみている.

繰り返しになるが、昭和10年代は全国いたるところのアカマツ林に蹴飛ばすほどにマツタケは生えていたのである.(続く)

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第12回まつたけ十字軍運動の報告

2005年09月17日 |  マツタケの林地栽培 
 初参加者7名を囲んで自己紹介中.
 
 岩手県では、9月初めから、マツタケが発生しているとの連絡がありました.東京では、太田市場で、1kgで10万円から15万円.昨日の京都市場では7万円.この差は、マツタケに対する評価の目が京都は厳しいからでしょう.
今日の京都市場価格は、4.2万というようにマツタケの質が落ちてきたようです.気温が高くなってきたのではないかと思えます.
岩手の方、教えてください.

 今日は、遠く山形県から鹿又さん、群馬県から奈良さんと小野寺さん、宮城県から斉藤さん、東京から高田さんが初参加.京都市から加藤さん、桜井さん、森田さん達が参加くださいました. 遠来組みは、ともかく、京都組みは懲りずに、次もおいでください!!
京都の橋本さん達お二人が、村松団地のバス停で11時まで、お待ちになったと後で分かりました.来週は、お会いしましょう.

 森田さん! 手作りのケーキを持参戴き、ありがとうございました.猫田さんの淹れた紅茶で美味しく食べました.

 本日も、山の右側斜面に除伐して置いてあったヒノキを吉川さんが運びやすい大きさに伐ってくれました.それらを、皆で運び出しました.ヒノキなどの立木密度が高い部分も、皆の力で、見違えるようになっています.

 阿閉さん!チェーンソーの使い勝手はいかがでしたか?斜面左側のススキの刈払い、地掻には、女性群(藤井さん、阿閉さん、森田さん、三上さん)が大奮闘でした.猫田さんはマツノザイセンチュウによる枯損松の処分を続行.大月さんは、イロージョンを起こした斜面の土留め作業を続けています.

 写真集は、NIKONのオンラインアルバムで公開中です.ログイン名やパスは、すでにお知らせしたものをお使いください.
 
次の作業日は、以下の通りである. 参加ください!
作業地は岩倉村松団地奥のアカマツ林.集合は京都バス「村松集会所前」に午前10時30分.作業開始時刻はいずれも午前10時50分より 午後4時終了.

今後の作業日のお知らせ
作業地は岩倉村松団地奥のアカマツ林.集合は現地、もしくは京都バス「村松集会所前」に午前10時30分.作業終了は、午後4時.

9月23日(金):第13回作業日
10月1日(土):第14回作業日
10月6日(木):第15回作業日
10月15日(土):第16回作業日
10月20日(木):第17回作業日
10月29日(土):第18回作業日
                      
吉村文彦(文責)
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第12回まつたけ十字軍運動のご案内

2005年09月14日 |  マツタケの林地栽培 
 マツタケを1本発生させるには、大量の菌根が必要である.写真は、子実体下部を掘って見たものである.
 
 9月の半ばというのに、京都のアメダスの最低気温は、4度近く高い状態が続いていて、これも、なんか変なことのように思えます.皆さんは、いかが感じていらっしゃいますか? 台風一過、秋晴れとはならずに、蒸し暑くなる予報です.
 
 今回は、群馬から参加する人があり、まつたけ十字軍運動の「会員」は66名となりました.毎回の参加者も16名を維持していて、皆さんの里山保全とまつたけ山づくりへの情熱を感じます.
 
 岩倉の作業も、今回で12回目となり、参加者の皆さんのがんばりで見違えるような林になっています.これが、まつたけの生える昭和30年代の里山林の姿です.作業内容は、ヒノキの除伐や運び出し、それに地掻などを続けます.
 
10月中旬以降の作業日は、嵯峨ブランドのマツタケ発生調査に切り替わることがあります.ご注意ください.

第 12 回 作 業 予 定 日
1)実施日    2005年9月17日(土)
2)集合時刻 午前10時30分(午後4時作業終了)
3)集合場所 京都市左京区岩倉村松町 京都バス「村松集会所前」バス停
4)服装等 山で軽労働できる服装、運動靴、タオル、手袋、など
5)用意するもの 飲料水、弁当、交通費.お持ちならノコ・ナタ、熊手、ヘルメット.
6)アクセス 京都バス:出町柳から(41系統、所要時間25分)
四条河原町から(41系統、所要時間38分)
         叡山電鉄:出町柳駅-岩倉駅(12分)から北へ徒歩10分
7)雨天の場合  現在(午前9時現在)雨で、かつ当日午後の降水確率が50%を
越えている場合は、本日の作業は中止します.

都合の良い時間帯だけの参加も大歓迎です. 尚、参加費は、無料  

参加申込は吉村・大月までお願いします.

今後の作業日のお知らせ
作業地は岩倉村松団地奥のアカマツ林.集合は京都バス「村松集会所前」に午前10時30分.作業開始時刻はいずれも午前10時50分より午後4時終了.
9月23日(金):第13回作業日、10月1日(土):第14回作業日
10月6日(木):第15回作業日、10月15日(土):第16回作業日、
10月20日(木):第17回作業日、10月29日(土):第18回作業日

主 催 団 体
吉村 文彦(連絡先;担当責任者)
まつたけ十字軍運動 本部    
607-8166京都市山科区椥辻番所ヶ口町173 075-581-3210(Fax兼用)、090-6227-4305
大月 健
京都大学マツタケ研究会(京大農図、大月 健気付090-4280-3334. 飯塚弘明)

共 催 団 体
NPO国際環境微生物応用研究機構、香川理化学研究所、NPO市民環境研究所
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マツタケは栽培できる(6)

2005年09月12日 | マツタケの生理生態

写真は、マツタケのシロの一部である.マツタケの菌糸に覆われた菌根が見えている(白いところ).

全山のシロ化とシロの崩壊
アカマツの樹齢の進行とともにシロ数が増え、また、シロ直径が大きくなる.マツタケの発生量が増加する.時には、一つのシロに400本のマツタケが生えることもある.壮齢林では100kg/ha以上の生産量が望める.

マツタケと他の土壌微生物とのインタラクション(攻撃,協調、無関心など)は場所や時間によってその質は異なるが、マツタケのシロは痩地であり乾燥ぎみのマツタケが優占しうる諸条件が整っている場所へ広がっていく.
シロ数が増え、また、シロの先端が年々外側に10-15cmほど広がり大きくなると、マツタケのシロは重合する.重合すると瓢箪状、線状あるいは弧状にマツタケ子実体が発生するようになる.しかし、マツタケは土壌微生物との競争に弱いため、手を入れてない林では、途中で消滅するシロも多い.

ドーナツ状のシロの内部は、土壌がパサパサになり、細根が脱落した主根だけが残り、菌糸の残骸や死んだ細根由来のキチンとセルロースやヘミセルロースまたリグニン、タンニンが多い.それらは難分解物質のため、シロ内部の微生物社会はマツタケの発生してない土壌やシロ周辺部土壌のそれとも違っている.シロの内部には、アカマツの根も侵入せず、マツタケも生えない忌地 (sick soil)となる.

マツタケ発生後40年もすると、アカマツ林内にはマツタケの忌地面積が増える.また、アカマツの生長が鈍り根の発達が悪くなるため、マツタケの発生量は落ちてくる.アカマツの生長を促したり,林の更新を考える時である.アカマツが常に生長するように、枝払いや芯止めを施して、100年生のアカマツ林でも、マツタケ発生量が落ちない手入れもある.

更新は、薪炭生産林をモデルとすると良い.マツタケ感染アカマツ樹(シロ)を一部残し伐採する.地かき後、アカマツ異齢林をつくる.あるいは、帯状に伐採区と非伐採区を設け、伐採区は地かきし、新たなアカマツ林を造成することを考える.このような作業では、マツタケが非常に早く発生することが見られる.(続く)

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第11回まつたけ十字軍運動の報告

2005年09月09日 |  マツタケの林地栽培 
本日の作業後の山の写真です.

 9月9日(金)、京都市左京区の岩倉試験地に、仲間が集合. 仕事の途中に寄って下さった吉川さん、井本さんを含めて17人の皆さん! 暑い中、大変お疲れ様でした.
岩手県では、9月初めから、マツタケが発生しているとの連絡がありました.こちらは、未だ未だ暑すぎますね.

今日は、新しく京都市から中川さん、浅沼さん、阿閉さんご夫妻、長岡京市から高橋さん達が参加くださいました. 懲りずに、次もおいでください!!

本日も、山の右側斜面に除伐して置いてあったヒノキを中川さんが、運びやすい大きさに伐ってくれました.それらを、川越さん、浅沼さん、有山さん、大久保さんたちが集積地に運び出しました.

まつたけ山整備で、伐った樹などをそのあたりに、きれいに重ねて置いておく人を見かけますが、それらの植物資源は運び出して有効活用することが大切ですが、それが難しいときは、少なくともマツタケの発生を期待しない場所に運び出さねばなりません.

でないと、微生物に分解されて、養分となって土壌を富栄養化させます.マツタケの競争相手の微生物を増やすことになります.

三原さんと猫田さんはマツノザイセンチュウ病による枯損松の処分を続行.三上さんや池内さん、阿閉さん夫妻に高橋さんが斜面左側部分の地掻をしました.見違えるようになっています.大月さんは、イロージョンを起こした斜面の土留め作業を続けています.

写真集は、NIKONのオンラインアルバムで公開中です.ログイン名やパスは、すでにお知らせしたものをお使いください.
 
次の作業日は、以下の通りである. 参加ください!
作業地は岩倉村松団地奥のアカマツ林.集合は京都バス「村松集会所前」に午前10時30分.作業開始時刻はいずれも午前10時50分より 午後4時終了.

9月17日(土):第12回作業日.9月23日(祝日):第13回作業日.10月1日(土):第14回作業日

吉村文彦(文責)
まつたけ十字軍代表
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マツタケは栽培できる(5)

2005年09月09日 | マツタケの生理生態

写真は、人為的にマツタケを感染させて形成されたアカマツの菌根(接種後2ヶ月)

感染-菌根形成
この2次菌糸はさらに運が良いと、先住者のカビがいない空き家のアカマツ細根に出会う.すると、これに感染し菌套を形成.その後、細胞間隙に侵入、菌根となる.マツタケの場合は、外生菌根いわれる.

 菌根になるとホルモンを分泌し、アカマツの細根はテングス状に枝分かれし、根の吸収面積が飛躍的に増える.マツタケは周りに細い根があればそれにどんどん感染、菌根をつくる.

 活性の高い菌根は抗生効果のある物質を分泌し、アカマツの根やマツタケの菌糸を土壌微生物の攻撃から守っている(4).しかし、常に土壌生物との競争にさらされていることを忘れてはならない.

 マツタケは菌根を介し、アカマツと物質をやり取りしている.マツタケは光合成産物である糖類をアカマツから摂取し、土壌中のミネラル類をアカマツに渡している.植物間の物質移動の仲立ちについては先述のとおりである.
アカマツ林の尾根筋は肥沃化せず、乾燥気味でマツタケ栽培に適している.しかし、土壌が肥沃してくると、アカマツの細根形成が悪くなり、また、光合成産物を自らの生長に利用しマツタケに与えないようである.実験室の感染テストでは、肥沃化土壌で育てたアカマツは、まつたけの感染を拒否する傾向にある.マツタケのような菌根性のキノコが感染しないと、ホストは病気に弱くなることがわかっている.

シロの誕生とマツタケの発生
マツタケは、更に周囲の細根に感染を続け、やがてホットケーキ状のシロを土壌内部につくる.シロとは、マツタケが宿主の細根に感染することによってつくりだされる菌根やその周りの土壌とそこに生活する微生物を含む集合体を意味し、それらの微妙なバランスのうえに成り立つ生態系である.

 物理的・化学的・生物的条件が適切に維持され続けると、シロはその容積がだんだん大きくなるが、シロの内部はくぼんでドーナツ状の形になる.2次(核)菌糸がアカマツの細根に感染し、約5年たつとシロの容積は、マツタケの菌糸とアカマツの根や土を含めて1.5-2リットルほどになる.

 すると、マツタケ子実体を1~2本発生するようになるが、微生物数の少ないマツタケ向きの痩地や乾燥気味の土壌は斜面や尾根の上部に多いため、マツタケはそのあたりから発生を始める.マツタケ発生の始まりはアカマツの樹齢が平均30年くらいである.地域によっては、それが40~50年になるケースもある.

 シロ表面の温度が19℃(北では18℃未満)を下回ると、マツタケのシロ表面に子実体原基が形成され、適当に雨があると(2-3日おきに10~20mmの降水)、「選ばれた」原基は生長を続け、7日~10日後に地表に顔を出す.

 更に7~10日でヴェールがきれ、胞子が飛散する.胞子は、新たなシロ形成に重要な役割を担っている.マツタケ山の長期の観察では、マツタケの新たなシロは、胞子が雨水などで流れ易い方向に並んで増えているように見える.(続く)

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第11回まつたけ十字軍作業日のお知らせ

2005年09月07日 |  マツタケの林地栽培 
写真は、皆さんの汗の結晶です.きれいになっています.
 
 台風14号は、九州や四国などに大変な被害をもたらしたようです.関西地方はどちらかといえば、ありがたいと思う必要があるが、空振りのようでした.
 台風一過、秋晴れとはならずに、残暑が厳しくなる予報で、マツタケの発生は、関西では、まだまだ先のことです.
 
 岩倉の作業も、今回で11回目となり、参加者の皆さんのがんばりで見違えるような林になっています.これが、まつたけの生える昭和30年代の里山林の姿です.作業内容は、ヒノキの除伐や運び出し、それに地掻などを続けます.

第 11 回 作 業 予 定 日
1)実施日    2005年9月9日(金)
2)集合時刻 午前10時30分(午後4時作業終了)
3)集合場所 京都市左京区岩倉村松町 京都バス「村松集会所前」バス停
4)服装等 山で軽労働できる服装、運動靴、タオル、手袋、など
5)用意するもの 飲料水、弁当、交通費.お持ちならノコ・ナタ、熊手、ヘルメ
ット.
6)アクセス 京都バス:出町柳から(41系統、所要時間25分)
     四条河原町から(41系統、所要時間38分)
         叡山電鉄:出町柳駅-岩倉駅(12分)から北へ徒歩10分
7)雨天の場合  現在、雨(午前8時現在)で、かつ、当日午後の降水確率が
         50%越えている時には、市民環境研究所(左京区東山通り里
         の前下る石川ビル3F)で交流会開催 

都合の良い時間帯だけの参加も大歓迎です. 尚、参加費は、無料  

参加申込は吉村・大月までお願いします.

9月の作業日のお知らせ
作業地は岩倉村松団地奥のアカマツ林.集合は京都バス「村松集会所前」に午前10時30分.作業開始時刻はいずれも午前10時50分より午後4時終了.

9月17日(土)第12回作業日、9月23日(金):第13回作業日、
10月1日(土):第14回作業日

主 催 団 体
吉村 文彦(連絡先;担当責任者)
まつたけ十字軍運動 本部    
607-8166京都市山科区椥辻番所ヶ口町173 075-581-3210(Fax兼用)、090-6227-4305
大月 健
京都大学マツタケ研究会(京大農図、大月 健気付090-4280-3334. 飯塚弘明)

共 催 団 体
NPO国際環境微生物応用研究機構、香川理化学研究所、NPO市民環境研究所
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マツタケは栽培できる(4)

2005年09月06日 | マツタケの生理生態

写真はマツタケの2核菌糸(DAPI染色)

マツタケは栽培できる
人類の活動によって、人里付近に登場したアカマツ林に、マツタケは発生を始め、毎日の生活のために里山林を大いに活用した結果、マツタケの生産量を高めていたことになる.

しかし、昨今の森林の放置によってアカマツ林が衰退し、マツタケの生産量を落としている.マツタケは、人による森林の破壊によって生まれ、また、森林の放置による森林「破壊」によって、その生を終わろうとしているのかもしれない.

先述したように、昭和10年代、あるいは薪炭の生産が必要であった昭和30年頃までは、意図的でなかったが、日本のアカマツ林で人はマツタケを大量に「栽培」していたのである.

アカマツ林を放置し、山からマツタケを搾取するだけの時代はもう終わっている.
まず、昭和10年代の健全なアカマツ林を取り戻す.その上で、マツタケやアカマツの生理や生態をよく理解し、マツタケを栽培する必要がある.

マツタケの栽培は、実は極めて容易なのである.昭和10年代には、日本のアカマツ林には蹴飛ばすほどにマツタケは生えていたのだから.

マツタケの生理生態
マツタケの生理
実験室でHamada培地(グルコース10.0g、エビオス5.0g、pH=5,1-N HCl)あるいは無機培地としてはグルコースやフルクトース、酒石酸アンモニューム、ミネラル類、アミノ酸やビタミンB類などの栄養物でマツタケ菌糸を培養することは可能である(pH=5.0前後、生長至適温度 23-25℃).

その生長は他のカビやキノコと比べて非常に遅い(マツタケの菌糸の生長:平均0.3-0.5mm/day: ミトコンドリアが少ない).青カビなどの1/100、シイタケの1/20の生長スピードでしかない.
腐生性のシイタケ、エノキタケ、ヒラタケやエリンギ、マイタケのように生物遺体を分解する酵素を欠いている、また、栄養生長から生殖生長へ切り替わるメカニズムが温度要因を除いて不明であるなどのために、オガクズなどでマツタケを栽培することは不可能である.

胞子発芽-2次菌糸
マツタケは外生菌根菌で大型のキノコ(子実体)を形成するカビの仲間である.マツタケのヴェールが切れると、ヒダから胞子(レモン状、4-7×5-9μm)が飛散し林床に落ちる.

1本のマツタケ子実体から数百億の胞子が落ちるが、その発芽率は1%をかなり下回っている.実験室で発芽率を高める物質として、酪酸や松葉の抽出液の添加が有効であることが解かっているが実用化は疑問である.

厚い落葉や腐植層の上に落ちた胞子は、そこを住み家にする細菌や糸状菌や小動物との競争を強いられたり、それらの攻撃にであう.その攻撃を逃れた胞子は温度と水分が適切なら発芽し1次(核)菌糸になる.

次いで、互いに親和性のある1次菌糸どうしが運良く接合すると、1つの菌糸細胞に核が2つ存在する2次(核)菌糸ができる.ここにいたって、はじめてアカマツ細根に感染する力を持つ.(続く)

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