まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

マツタケは栽培できる(3)

2005年08月28日 | マツタケの生理生態

全国的なアカマツの枯損
アカマツ林も放置されていて、アカマツは林の構成樹種との競争に喘いでいる.それに追い討ちを掛けるように、マツの材センチュウ病によるアカマツの枯損が特に西日本に目立つ.

太平洋側では岩手県南部まで、日本海側では青森県南部までその害は及んでいる.現在の国産のマツタケ主産地は、中国地域であるが、近い将来、東北地域にその主産地が移る可能性が大であろう.

しかし、九州北部や中国地域にも、アカマツ林の復活が見られるので、今後のアカマツ林の手入れが望まれるところである.中国地域や京都府郡部もアカマツの枯損が激しかった地域だが、アカマツ林に手を入れることによって枯損をまぬかれた林がある(2).これは大きな教訓である.

人がマツタケの発生を減らしている
マツタケ生産量激減の原因は、高度経済成長による私達の生活や農業や林業の大きな変化=近代化にある.

昔、人は、材木や炭の材を得るために、また、毎日の煮焚き物用の薪や柴をあるいは緑肥を採取するために、森や林を活用したのである.これによって山を、健全に維持し続け、常に生長する林としてきたといえる(里山林(2)).

言い換えれば、以前は山菜やきのこが生える山に山を育てておいて(栽培)、それらを取りに出かけたのである.ヒトは,山菜やキノコを山に繁殖させることが山づくりに繋がることを理解していたのではないだろうか.

その里山は宅地やゴルフ場に転用され、また,アカマツはパルプ材になった.アカマツ林面積が減少したこともマツタケ発生量の減少の原因のひとつである.今は、山菜やきのこを採るためにだけ人は山に入る.

森林を放置しておよそ45年になるが、最近、樹木の生長を助ける様々なキノコの発生量が減っている.山を活用しなくなったために,菌根性のキノコが生育できない土壌条件になっているのである.

最近の森林は疲弊し、公益的森林機能も不充分で多様な生物の生活を許さない場となっている.アカマツ林に続いて、ナラ林が、日本海沿岸で異常に枯れ始めた.このナラ枯れ病は沿岸を西下し、今は太平洋沿岸を東上し、紀伊半島に達している.まず、キノコの生えない森林となり、やがて樹木が枯死する.キクイムシの運ぶカビ病が原因である.これは、自然の警鐘と受けとめるべきだろう.

この警鐘を軽視したりおろそかにすると、人類は自然から手痛い反撃を食らうことになりはせぬか.人は、森林をキノコが生えない森林にしておき、「キノコが生えない」と嘆いている.滑稽な話ではある.
生き物にとって、山に緑があれば良いと言うものではない、質の良い緑が必要なのである.(続く)

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マツタケは栽培できる(2)

2005年08月26日 | マツタケの生理生態

写真は、マツノザイセンチュウ病で枯死したアカマツ林

マツタケとホストとの共生関係
 マツタケはカビの仲間で、カビは、その生活様式などから腐生性や菌根性や病原性のものに分けることができる.マツタケは腐生性のカビから進化したと考えられ、生物遺体を分解する能力を遺伝的に欠いた菌根菌の仲間である.

菌根菌は生きた植物(宿主あるいは寄主)の1mm未満の細根に感染し、光合成産物である糖類を宿主から摂取する.逆に宿主は菌根を介して土壌中の水やミネラル類を受け取る.

 マツタケは菌根になると、抗生物質を分泌し土壌微生物の攻撃から自らや根を守る.アカマツの細根を菌糸マットで覆い根の乾燥を防いでいる.

 マツタケにとってはアカマツのようなホストが、アカマツにとってはマツタケのような菌根菌が、それぞれの生物が生き残るために獲得した戦略的パートナーなのである.

 菌根菌は,同種あるいは異種植物同士の物質の移動の仲立ちもする.アカマツ林を構成する樹種間に菌根菌の菌糸マットが仲立ちしたネットワークが林内に形成され「情報の伝達」があることが最近わかってきた.

 マツタケの宿主は日本においては、アカマツ、クロマツ、ハイマツ、エゾマツ、ツガ,コメツガなどであるが、台湾ではタイワンアカマツやタイワンツガ、朝鮮半島ではアカマツやチョウセンゴヨウ、アメリカではダグラスファーやツガの仲間、コントルタマツ、地中海沿岸ではレバノンスギである.そのほか、広葉樹をホストにするマツタケが日本にもある.

 日本で、マツタケの生産量の多い宿主はアカマツであり、日本のマツタケはアカマツの存在抜きには考えにくい.

アカマツ林の現況
全国のアカマツ林も、昭和30年代までは元気だった
岩手県岩泉町のアカマツ林の例
東北地域にアカマツ林が広がるのは、江戸時代後半から明治に入ってからだそうである(5).大正初めの盛岡の絵地図を見ると、山の上はアカマツで、麓はスギのようである.

 岩泉町は昔、たたら式製鉄(鉄1tをつくるために、木炭14t=薪50tが必要(1))、炭焼きあるいは牧畜が盛んだった.炭を焼くために莫大な樹木を切ったであろうし、牧草のための火入れで草地が増え、その後、草地がアカマツ林に遷移したと思われる.少なくとも昭和30年代初めの頃まで、岩泉町のアカマツ林面積は今よりも大きく、生長量も森林機能もより大でがあったと想像される.

 現在、岩泉町の面積は、約1000km2で、その93%を森林が占める.アカマツ林は、天然アカマツ林(5,000ha)と人工アカマツ林(13,000ha)で構成され、岩泉町の森林の19%(除く国有林:5000ha)にあたる.

 多くのアカマツ林は適当な手入れがなされてないため、アカマツ林として維持されにくい環境にある.このままでは、ここでも、アカマツは無くなることを意味する.

 林内の立木密度が徐々に増え、林内は薄暗く、湿潤になり過ぎ、腐植層の堆積も多い.これでは、クライマックス林も低生長になることを忘れてはいけない(山に緑があればよいと言うものではない).

森林と微生物は密接な関係
アカマツ林は遷移林(2次林)であり、人の手が入らず放置されると、その土地のクライマックス林にとって代わられる運命にある.西日本では照葉樹林に、東北地域ではブナ林やミズナラ林に必ず遷移して行くことを意味する.

放置されたアカマツ林内は、広葉樹の立木密度が増加してうす暗く、地表に落葉や腐植が堆積し、アカマツ林土壌は富栄養になる.ミミズが見られることもある.このようなアカマツ林土壌には、乾燥土壌とは異なる微生物が多くなり、微生物との競争に弱いマツタケは生活しなくなる.

 もちろん、他の菌根性のキノコの発生も少なくなるし、発生する種が交代することも考えられる.また、腐植層が堆積し過ぎると、アカマツの細根が腐植層に伸長し、褐色森林土壌中に細根が少なくなる.こうなると、夏期の乾燥時に、腐植層は極端に乾燥するので、アカマツは水分ストレスに耐え切れず枯死することがある.

マツタケは褐色森林土壌内部(深さ30cmくらいまで)に生活するキノコであり、腐植層のなかでは生活できない.菌根性のキノコは樹木の生長に大きな役割を持っているがそれを期待できなくなる.菌根性のキノコを感染させないと,樹木の苗の生長が明確に悪くなる.

 放置林ではいわゆる森林機能も落ち、病気にも弱くなってくる.健全なアカマツ林構成樹種の葉面には、二酸化炭素よりも地球温暖化に影響の大きい一酸化炭素やメタンを資化=吸収する細菌Methylobacterium が大量に生活している(3).

 富栄養化したアカマツ林土壌には、糸状菌、細菌、放線菌やそれらをエサとするセンチュウなどの微生物数がマツタケの発生するアカマツ林土壌のそれと比べると非常に多くなっている(6).このことは微生物との競争に弱いマツタケにとって致命的なことである.当然のことながら、そんな林には、マツタケの発生は見られないし、発生林にあっても生産量が減少する.(続く)

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スナップ写真6

2005年08月25日 |  マツタケの林地栽培 
落とした枝を運び出そうとするが、斜面上部の作業が気になるH川さん!
おーい 上の人!作業をやめてくれませんか?
ありがとう!では、降ろします.という会話かな.
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スナップ写真5

2005年08月25日 |  マツタケの林地栽培 
香川理研の大井さんも刈払機で草を切っています.
 以上のような努力が、里山林を維持するには必要な作業です.
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スナップ写真4

2005年08月25日 |  マツタケの林地栽培 
やらせではない! Hさんが刈払機で膝頭より低い草本類を切っているところをテレビ局に取材されたのである.
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スナップ写真3

2005年08月25日 |  マツタケの林地栽培 
kさんは、きつい斜面をものともせず、枯れ枝を運び出しています.
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スナップ写真2

2005年08月25日 |  マツタケの林地栽培 
太い樹を運び出すために、運びやすい大きさにカットするお二人.
Iさん、Aさん!! こっちを向いて!
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スナップ写真

2005年08月25日 |  マツタケの林地栽培 
土砂崩れを防止するために土留めを造る皆さん.
ここは、かつての造成の際に、山の斜面を削ったようである.チャートの基岩が風化し雨風で崩れて植物が生えないため、間伐材で土砂の流出を防ごうとしている.
帽子をかぶった方は、ニューフェース?
龍谷大学のT先生、打合せにおいでになり、一緒に作業しました.
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スナップ 1

2005年08月25日 |  マツタケの林地栽培 

Mさん! Nさん! Eさん! Oさん! どうしましたか?
 皆さんは何を見ているのだろう! 気になりますね.
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第9回まつたけ十字軍運動の報告

2005年08月24日 |  マツタケの林地栽培 

 8月24日(水)、京都市左京区岩倉の試験地で、昨夜の雨が上がり、台風11号の崩れの合間を縫うような天気の中、作業を果敢に実施.
 本日の参加者15名の皆さん!お疲れ様でした(後の掲載写真をご覧ください).

 朝は「読売 ザ関西」(放映日:9月13日午後4時15分~4時30分、スカイパーフェクト309ch)の、午後から「京都!ちゃちゃちゃつ」(放映日:8月30日正午~12時53分、京都テレビ)の取材が入り、いささかペースを狂わされた面々だったが、わいわいがやがや取材に協力.午後4時には、無事撮影も終わった.

 まつたけ十字軍運動の活動振りの一端が出ていれば良いと思うのですが、いかがな編集になることでしょう! 私達の趣旨が、うまく伝わるようだと最高ですね.乞う ご期待です.

 試験林のオーナーの香川さんのご協力で、門扉や道路が整備され、水道も引かれました.作業の終わった後、冷たい水で汗をぬぐうことが可能になりました.香川先生ありがとう!!

 利用されずに荒れ放題であったアカマツ林も、今回までの作業で、見違えるように整備されてきました(写真参照).でも、未だ終わりではありません.引き続き、皆さんのお力を!

 最後になりましたが、「京北の山と清流に遊ぶツアー」の世話係 井本さん(0771-56-0137)が、寒暖の差の激しいところで、また、冷たい水で育てた自慢の米「こしひかり」を9月15日頃から刈り取るそうです.その米を必要な方に分けてくださいます.必要な方は井本さんに問合せをどうぞ!!

第10回の作業日は、9月3日(土)の午前10時30分から、場所は岩倉となります.
皆さん! 来てください.待ってます!

                            まつたけ十字軍運動
                               吉村 文彦
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