信州自由人

のぐケーンのぶろぐ

東御市海野宿

2013年11月24日 | 文化財
昨日は東御市の「海野宿(うんのじゅく)ふれあい祭り」に行ってきました。
海野宿は江戸時代の1625年に北国街道の宿駅として開設されました。
歴史的な家並を住民の皆さんなどの努力によって守られています。





昔ながらの家並みを当時の衣装に扮した時代行列が通ります。
海野宿は江戸時代の宿場の建物と、明治以降の養蚕造りの建物がよく調和しています。
道に沿う用水路、両側に並ぶ海野格子やうだつなど意匠を凝らした建造物が魅力です。
先週、「嬬恋軽井沢自然倶楽部」の研修で安田さんの海野宿講義を受けたばかりです。




運野宿の見どころのひとつは、いくつかの種類がある「卯建:うだつ」です。
うだつとは本来、防火壁の役割を果たすために妻壁面に設けられた壁です。
画像には左上から「本うだつ」「袖うだつ」「軒うだつ」がみえます。
江戸時代の「本うだつ」は建物の両側にある妻壁を屋根より一段高く上げたものです。
明治時代に入ると、より装飾的要素を強くした「袖うだつ」も設けられるようになりました。
うだつは富裕の象徴で、ここから「うだつがあがらぬ 」という言葉も生まれたとのことです。




江戸時代の頃から変わりなく、街道の中央に用水が流れています。
洗い場だったり、伝馬が水を飲んだり、旅人が足をあらったりしていたのでしょう。
用水にかかる石橋もかってと変わらない位置にあるそうです。
大きな建物の二階には「海野格子」が見え、1階の格子とは作りを異にしています。
海野格子は江戸の時代の構造で、一階の格子は明治以降の作りだそうです。
また、屋根の上には「気抜き」と呼ばれる小屋根が乗り、養蚕の繁栄を残しています。




今日はお祭りのため二階に上げていただくことができ、海野格子が間近で見られました。
上下に通る親堅子(おやたてこ)と、上端を切りつめた子堅子が交互に2ずつ並んでいます。
そして長短2本の堅子を2本の貫で固定し、美しい模様を織りなしています。
障子を開け、格子越しに見た街道、遠くには烏帽子岳も見えます。




見上げた屋根裏は小屋根で「気抜き(きぬき)」です。
気抜きは、明治に入り宿場の町から養蚕の町へと変わった海野の歴史を語るものです。
蚕飼育の保温のため焚いた火の煙を出す窓をつけるために屋根を上げています。
小屋根に設けられた窓を気抜け窓といい、引き戸式で紐で引っ張れば開閉できます。




一階より二階が張り出し、梁(はり)で支えた造りは江戸の旅籠造りの特徴です。
これを出梁(でばり、だしばり)造りと呼ぶのだそうです。
二階を少しでも広く使うための知恵でしょうか、雨宿りにもよさそうです。
突き出した梁に美しい模様が刻まれたものもあります。
お祭りの日は、自宅の軒先でにわかお店屋さんが各所にたち、祭りを盛り上げます。




海野宿資料館で、1970年頃に建てられた旅籠屋造りの建物です。
大人200円、子供100円で江戸や明治の時代にタイムスリップできます。
ちなみに昨日は無料開放でした。




資料館内の間取りですが、画像右から帳場、表座敷、中座敷、奥座敷です。
奥に行くほど柱、壁、天井、畳、調度品などが豪華に造られていることを実感出来ます。




画像右が本陣で、左が脇本陣だった建物です。
本陣の柱はりっぱなケヤキ材で、壁は防火を高めるため、かなり砂が混ぜられています。
窓には「海野格子」、腰壁は「ささら子下見」です。
脇本陣の青い暖簾の下には、伝馬屋敷のなごりの「伝馬の塩なめ石」が残されています。
お祭りの日は車両の通行は禁止ですが、海野宿650mを人力車の有料サービスがあります。




いくつかの意匠の画像です。
左が「ささら子下見」で、ささら子は裏をギザギザに刻んだ(羽きざみ)押縁(おしぶち)です。
「下見」とは板を横に重ねて張り上げた外壁です。
雨に濡れれば膨張して雨が入りにくく、乾燥すれば壁下地の通風が可能になります。
右上は鉄鋲で固定された格子です。
右下は、手前が本うだつの梁で、奥が出梁造りの梁の先(木鼻:きばな)の彫刻です。
いずれも、その家の造りに似合った風格を醸し出しています。




1軒でしか見ていない、板暖簾(いたのれん)です。
軒下の垂木に取り付けられていますが、役目を知りたいものです。




意匠を凝らした建物で、壁は生子壁、柱は胴板で巻き、入り口はくぐり戸付き大戸です。
生子壁(なまこかべ)は、張り付け瓦の目地をしっくいでナマコのように盛り上げます。
防火目的ですが、この家では張り付け瓦の張り方や大きさを変え、かなり見せています。
大戸は開けてあるので見えていませんが、武家屋敷のようにくぐり戸が見えます。
そこには、乳金物(ちちかなもの)や八双金物(はっそうかなもの)が取り付けられています。
乳金物は乳首状の釘隠しの金具で、八双金物は補強や扉と肘坪を一体化する金具です。
いずれも本来の目的の他、装飾性と風格を高めるために打たれる場合があります。




苔むした蛇の目軒瓦で葺かれた屋根の上の白壁、虫籠窓と乳鍵がマッチしています。
虫籠窓(むしこまど)は、土蔵などに等間隔に塗り込められた格子状の窓を言います。
乳鍵(ちかぎ)は、火災時の飛び火よけのため、濡れた布をかける鍵だそうです。




多くの瓦に出会うことができます。
軒瓦には蛇の目瓦、万十瓦、鎌瓦、一文字瓦などが基本となりそうです。
そこに模様が入ると、装飾的意味合いの他、雨水が下に回り込まないのだそうです。
家紋の入った鬼瓦、鳥休み(とりやすみ)や排巴(おがみともえ)なども見応えがあります。




ささら子下見の腰壁と白壁の妻が連なる小道を歩く時代行列に参加した子供さん二人。
待ち受けるは、シャッターを切り続ける写真コンクールの上位入賞をねらうカメラマンさん。






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