そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない





1981年の「レイダース/失われたアーク」に始まる考古学者インディアナ・ジョーンズの冒険活劇第5弾。
最初の3部作は疑う事なき「神」。
で、4作目は駄作。
あれから15年、またまた(今度はディズニーによって)作られた5作目。
公開初日に観てきたので、その感想。

まず、いち映画作品としてジャッジする。
星2つ。★★
ちょい駄作。
見る価値はほぼない。
見たい人は見ればいいかなぁ〜ぐらい。

評価が低いのは、いち映画作品としての基本的な出来がそもそも悪いから。
主人公のインディを始めとした全ての登場人物たちが、2時間30分の上映時間中、いったい何をモチベーションに、何に向かって行動しているのかが、ずっと曖昧でモヤモヤする。
誰がなんのためにあれこれしている様を見させられているのかが、分かるようで分からない。
この人は誰なのか、何が目的なのか、なぜ登場し、なぜすぐ死ぬのか、そういうことがいちいちスッキリしない。
第一、今回の表題である「運命のダイヤル」がどんな効果を持つ宝物であるかがほぼ説明されずに進むため、そのどんなものか分からない宝物をなぜか奪い合うというストーリーのタテ軸になっていて、初見の観客は著しく混乱する。
しかも、主人公のインディ自身が別に「運命のダイヤル」探しに対してモチベーションを持っておらず、探したがっているのは他の登場人物なのだ。
(この「なんのための宝探しかが分からない」「しかも主人公のインディ本人の宝探しへのモチベーションが希薄」という欠陥脚本は「クリスタルスカル〜」が同様で、だからこそあれも失敗作になっているのだが……)
何の立場の人物なのか分からない黒人女性と、何が本当の目的なのか判別しづらい敵役、おねーちゃん、ガキ、さらにインディ本人までが入り乱れるため、初見の観客は全く持って置いてきぼり。
だんだんそれぞれの目的や、運命のダイヤルの使い道がうっすら分かってくるのだが、「だとしたらなんで?」が逆に浮かび上がって来て、二度見ても意味が分からないところが多々ある。
そんな映画、あるか?w
聞くところによると、脚本がダメでダメで、何度も何度も練り直され、最終的に4人の脚本家が名を連ねる事態になった今作。
4人の主義主張がゴチャゴチャとミックスされた結果、こう言う意味の分からない筋の通らない脚本になったものと思われる。
ということで、1本の映画として、とにかく出来が悪い。
物語のタテ筋に共感や感情移入が出来ず、よく分からないけどガチャガチャ戦ったり殺し合ったりカーチェイスしたり海に潜ったり殴ったり転んだり死んだりするのを観客はひたすら傍観するだけ。
まさによくある最近のハリウッドのバカ娯楽映画っていう感じで(ダメ映画の大半がこういう構造)、映像が派手で金がかかっているので一見面白くて多くの無垢な観客はバンザイして喜ぶのだが、結果として、映画史にも観客の記憶にも何も残らない駄作。

はい次。

インディ・ジョーンズのシリーズ最新作として考えたときには、もっと点は低い。
これをインディの第5弾だとするなら、星は1つでも多いぐらいだ。★
駄作中の駄作。
キング・オブ・駄作インディ。
シリーズとしては、スピルバーグが撮った第4作「クリスタルスカル」の方がまだテイストが最初の3作に近かったが、監督が替わった今回は、もはやこんなものはインディ・ジョーンズではない。

そもそもこのシリーズは、コミカルでテンポの良い冒険活劇だったはず。
モブキャラが死ぬときは笑いが生まれるよう演出脚本が配慮されていたし、悪役は悲惨な目に遭って死ぬけど、インディの仲間は基本的に死なない……そんな子供が観賞してもOKな、楽しくて優しい冒険活劇シリーズだった。
ところが今回は、冒頭から暴力シーンや無垢な一般人がめちゃくちゃ撃ち殺される生々しいシーンばかりで、ただただ理不尽に人が死んでいく。
この「善良な市民をバンバン殺す問題」が今回1番罪深いと思う。
このせいで映画全体のトーンが全く笑えなくなっている。
過去作では、死ぬのは基本的にナチかカルト教徒か兵隊か悪党だった。
思い返してみたら、失われたアークで殺された一般市民はゼロ。
魔宮の伝説でもゼロ。
最後の聖戦、ゼロ。
クリスタル・スカルですらゼロ。
なのに今回は学校の教員2人撃ち殺し、善良な船乗りさんを撃ち殺し、洞窟の入り口の係員を撃ち殺す(この係員のみ撃つ描写はないが死んでいるのがのちに映る)。
完全に作風がインディではなくなっている。
仲間の死だってインディシリーズではそんなになかった。
魔宮の伝説の冒頭のバーのシーンで相棒だった中国系の男がインディの腕の中で死ぬ。
クリスタル・スカルのラストで相棒(であり裏切り者の)マックが異空間に吸い込まれて死ぬ。
だが今回のアントニオ・バンデラスの死に方は酷い。
インディの腕の中で死ねた上海の中国人とは違い、即死だ。
インディと別れの言葉を交わす間もなく、だ。
今回のジェームズ・マンゴールド監督は、スピルバーグと違い、劇中での「人の死」への尊厳が足りないと思う。
だから映画が殺伐とした緊張感で満たされる。
さらに、だ。
シリーズお馴染みのプロローグが、テンポが悪く、長く、メリハリがなく、その上戦闘シーンにコミカルさのかけらもない。
アクションシーンにギャグやコミカルな描写がないので、ただひたすらなんか知らんが戦っているものを見させられるだけ。
バンバン何の罪もない善良な人たちが射殺されていくので、そっちの恐怖感が先に立ち、観客は身構えてしまう。
結果、ギャグらしきものがたまにあるのだが、映画館はシーンとしたままだ。
アクションシーンになるたびに物語がストップし、ただアクションしたいだけのアクションが続くのは、昨今のB級馬鹿ディズニーヒーロー映画と同様。
しかも、先に述べたように、根本的になんで戦っているかが分からない。
なんで殺すのか分からず、なんで殺さないのかも分からず、なんで拉致するのか、なんで生かしておくのか、その辺の理屈が全て、ストーリーの都合だけで進む。
なんなら、奪い合っている宝物(運命のダイヤル)が、今、誰の手元にあるのかすら分からない場面もある。
3分前に逃げ去ったはずの敵の車が、気付いたらすぐ横を走っていたりする。
そしたらまたすぐ無抵抗の人を撃ち殺す。
主人公のインディもヒロインの女も敵も味方も総じて、すぐ相手の顔面を思い切り殴る。
そのうえ何故存在しているのか不鮮明なキャラクターが多く、正体を明確に明かさないまま殺されたり、敵同士の繋がりもよく分からないままだったりする。
こう書いていても、どんどん腹立ってくる。
こんな酷いインディをなぜ作ったのかディズニーは?

他にも細々と文句ばかりが浮かぶ。

・そもそも邦題「インディ・ジョーンズと運命のダイアル」の「と」ってなんだよ?
これまでこのシリーズは「レイダース/失われたアーク」「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」って感じで「と」なんて一度も入ってたことないんだよ。
そんなことも知らずに適当に邦題付けてるのかディズニージャパンは?
・冒頭パラマウントの山をスルーしルーカスフィルムロゴからのOL。
 大人の事情で前4作で培ったお約束をいきなり破壊。
 ここだけでもうこの映画はダメだと思う。
・年号と場所出ないのこんなのインディちゃうやん。
 顔の覆いを取られ若いインディが登場した瞬間に「ドイツ1944年」と出せよ。
 「ニューヨーク1969年」も出せや。
 出さない理由がまるで分からない。(単純に忘れてるんちゃうんか?)
・若インディの顔、CG感が強すぎだろ。ディズニー金ないんか。
 あと列車の上を走るインディ、CGアニメの動きかよ?
 安っ! ディズニー安っ!www
・冒頭の1944年から1969年の間はダイヤル探ししてなかったのに、あのメガネのおっさん急に今になってダイヤル探し再開したのなぜよ?
 だいたいさ、疾走する電車の上で障害物に「ドゴーン!」とスゲー勢いで最後身体ごと吹っ飛ばされていったじゃん、アレで死なない奴いるか?w
 あのおっさんは治療に25年掛かってたんか?www
・インディと言えばの「地図の上を走る線とその上を飛ぶ飛行機」が出てくるの遅すぎだろ。
 今回忘れてるのかと思ったわ。
・海に棲む「人食いウナギ」ってなんだよ?
 海の中にいる「eel」は「ウツボ」って訳せよ!
 戸田奈津子、またいつものように映画を見ずに字幕付けてんだろ!
・また虫かよ。
 虫は使ったよ、第2弾の「魔宮の伝説」で。
 ほかのアイディアなかったんか。
・アルキメデスの仕掛けた謎解き、安すぎやしないか?
 天才数学者アルキメデスが絶対考えてないだろ、あの謎解き。
・インディいつからあのアルキメデスの時代のことを一生掛けて研究してた考古学者になったんだよ?
 初耳なんだが。
・そもそも親友に「絶対壊してくれ」と言われて受け取ったダイヤル、なんで保管してたねん?
・最後のカレン・アレンのくだりはずるいよ。
 そりゃ泣く!
 ただ物語上の帰着点としてちゃんと登場していたら、今の100倍泣けたはずだけどな!
・エンドクレジットのレイダースマーチのテンポが遅い。
 インディが老いたのは分かるが、ジョン・ウイリアムスの指揮テンポまで老いることないだろ。
 そして クレジットの最後がレイダースマーチで終わらないのも悲しすぎる。
 何あんな暗い曲で終わってんのよ?
 最後の大団円ちゃうんか?

もう疲れたからこの辺にする。
「クリスタルスカル」の方がまだインディだった。
あれはあれでものすごく酷くて認めてないけどね。


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