「ラ・ラ・ランド」で32歳でアカデミー監督賞を獲ったデイミアン・チャゼル監督の最新作。
アポロ11号で月に初めて降り立ったニール・アームストロング船長の実話の映画化。
その感想。
はい、大傑作!
久々に出ました5点満点!★★★★★
これは凄い傑作。
映画館で絶対見たほうがいい。
ただし、ぜんぜん面白くはないけどね!(笑)
いわゆる「娯楽映画」という意味では、まったく面白くない。
月面着陸した人類の偉業、なんてベタなものを描いてないから。
超個人的な話なのだよこれ、そこがスゴい!
歴史上の偉業ととらえられ(まぁ実際そうなんだけど)、歴史上の偉人と思われているアームストロング船長が、その内面に「ある過去」を抱えていて、友人たちの死を何度も乗り越えて、それでも淡々と、仕事としてその使命(ミッション)に挑んだ冷静沈着な姿が、とても抑制の効いた脚本と演出で描かれ、もう「こんな映画観たことないわ」ってぐらい、まったく映画的なドキドキもハラハラもしないし、させようとも監督思ってないし、実際ぜんぜん「もうダメだぁぁぁぁぁ!」とか「うおぉぉぉぉ!」とか「死ぬなぁぁぁぁ!」とかがないのに、気付いたら硬く手を握りしめ、緊張して前のめりで固唾をのんでスクリーンを見つめていた……そんな映画なの。
もう凄いとしかいいようがない。
たしかに欠点はある。
たくさんある。
長いし、画面は揺れて気持ち悪くなるし、ぜんぜん盛り上がらないし。
でも、これは傑作だと思う。
なぜアカデミー作品賞にノミネートされていないのか?
されるべきだし、作品賞獲ってしかるべき映画だろ、これ。
馬鹿なアメリカ人にウケなかった理由は、「ファースト・マン」でググると出てくるWikipedia記事の下の方の「騒動」ってところに書いてあるので、各自読んでもらえれば分かると思うけど、ぶっちゃけ「チャゼル差別」だと思う。
若きチャゼルくんのあまりの天才ぶりにみんなが嫉妬してノミネートしなかったのだ。
この若き監督は本当に本物の天才なのだ。
この映画を観てそれを確信した。
こんな映画を30代で作れる奴なんて、昔のキューブリックとか黒澤とかコッポラとかスピルバーグ級の天才だと思う。
凄いぜ、デイミアン・チャゼル。
一生付いていく。
僕の方が先に死ぬだろうけど。
もう興奮冷めやらぬという感じで、この映画についてはずっと語っていられる。
僕のブログを読んで、この映画観に行こうと思ってる方には、いくつか先に注意点。
まず座席はいちばん後ろの席がいい。
なるべくスクリーンから離れて見ること。
手持ちカメラの手ぶれが酷いので、めっちゃ酔うのだ。
だから最後部席を推奨する。
そして、決して面白い映画だと思わずに観に行って欲しい。
長いし、退屈だし、冗長なところ、意味分かんないところもある。
でも、それが全て狙いであり、必要不可欠な要素なのだ。
めっちゃつまんない映画を観に行くつもりで観に行ってくれ。
そしたら僕のように感動出来るかも知れない。
1960年代の質感を出すために16ミリフィルムの手持ちカメラで撮られている部分がある(だから酔う。画質も粗い)。
ロケット打ち上げのシーンなどはほぼ狭いロケット内の閉鎖空間だけで進むため臨場感がハンパない(音がメチャ怖い)。
わざわざ1960年代の音を再現するため、当時の機材を使って作られている音のこだわりとデザインが凄い。
宇宙空間だけはチリやホコリのないクリアな空間であり、それを表現するため、そこだけ65ミリフィルムで撮っていて、めっちゃ綺麗。
CGで合成するのではなく、ミニチュア模型、実物大セット、背景も実際に巨大LEDにNASAの映像を映してそれを撮影するなど、リアルの追求。
そういういろんな演出で、もうめっちゃめっちゃリアル。
やりすぎのリアルではない、本当に本物のロケット打ち上げを体験しているようなリアリズム。
月に着陸するという大偉業を達成したら、全世界の人々が「うぉぉぉぉぉ!」とか歓声を上げそうなものだが(実際そんな映画は山ほどある)、そんなベタな描写が一切ない……これって逆に凄くね?(笑)
月に初めて降りた大偉人の話なのにヒーロー感が全くない、そんなリアリズム。
だって本人はヒーローになろうなんて思ってなくて、仕事でやってるんだもの。
それもとても冷静沈着に。
そう、人類初の月面着陸は、アームストロング船長が1人の人間としておこなった超個人的なミッションでもあり、本人にとってはまさにそうなのだ。
……もう本当に素晴らしいよ。
必見。
今度はIMAXで見てみたい。
P.S.
2度目は二子玉のIMAXで観てきた。
最初からIMAXで観れば良かったと激しく後悔した。
素晴らしさは2度目でも変わらず。
たった2000円で月に行けるその大迫力は、IMAXが至極。
個人的には今年のアカデミー作品賞にふさわしいのはこの作品だろうと確信した。
映画館で必見。
| Trackback ( )
|
|
|
|
|
|