3月3日はひな祭り。娘は3人とも嫁ぎましたが、家にいたときはいつもこの人形を飾っていました。お雛様は高さが5cmにも満たない小さなもので、板で作った簡単なひな壇に飾ります。他の雛人形よりも娘たちに人気があり、孫も好きなようです。
実はこれは私の姉のために両親が用意したもので、私たちが小さい頃にも飾ってありました。私の両親は満州からの引揚者で、母が戦災で背骨を損傷して不自由だったので帰国後、山奥の母の実家で暮らし、それから倉吉という町で暮らすようになりました。楽しい家庭でしたが、経済的には大変だったろうと思います。それで、父が一人娘が生まれたので、なんとか雛人形を飾ってやりたいと思ってこれを手に入れたのだと思います。作りも粗末だし、これといって見るべきところもありませんが、子供の頃からなんとなく好きでした。
小さなお茶道具などは別のものだし、左右に並べたのは私が若い頃に手に入れた各地の土人形です。上の方に橘と桃の木の模型がありますが、桃の方は壊れていたので、土粘土で作りました。
子供の頃はただ小さくかわい雛人形だと思っていましたが、自分が親になり、戦後、両親がどういう気持ちで子供を育てたかを想像するうちに、この雛人形につつましい愛情が込められているようで、子供の頃とは違う気持ちでこの人形を見るようになりました。