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ポーランドの通知表

2009-07-19 00:57:35 | Weblog
“世界の表彰・評価”から、“指標”を定めて、“数値”で、
日本の通知表”をみたが、同じ指標で、
ポーランドの通知表”は、どうなるだろうか?

「ポーランドといえば、なにを思い浮かべますか?」
と、ポーランド人から言われて、
「連帯のワレサ委員長、アメリカやカナダへの移民、アウシュビッツ」
と答えると、それよりも、
ショパンキュリー夫人コペルニクスはポーランド人なんです」
と、3人をあげて、誇らしげだった。そして、
アウシュビッツは、オシフィエンチムというポーランドの場所だが、
そこの強制収容所はナチス・ドイツが造った施設で、ポーランドの施設ではない」
と、迷惑そうだった。

ショパンの像と見学にきた学生、ワルシャワ。


キュリー夫人の生家は、博物館になっている。ワルシャワ。

キュリー夫人はノーベル物理学賞と、ノーベル化学賞の2つを受賞。

コペルニクスの像は、ワルシャワのポーランド科学アカデミーの前にあったが、
ここでは、ヴィエリチカ岩塩坑(世界遺産)の中にあった、塩で作った像を示す。

ニコラウス・コペルニクスは、右手に地球をかざしている。
台座には、ポーランド語でMikołaj Kopernikミコワイ・コペルニクとある。

コペルニクスは、太陽が中心で、地球が回っていることを、
小冊子(Piccolo Commentario)に書いているが(16世紀)、
この太陽中心説は、当時のキリスト教の地球中心説をくつがえすものだった。

のちに、ドイツ人のケプラーは、地球は太陽を焦点の一つとした楕円軌道を、
回っているというケプラーの法則を発見した。イタリア人のガリレオは、
発明した望遠鏡で、天体観測をして、太陽中心説を裏づけた(17世紀)。
しかし、異端審問にかけられて、太陽中心説を取り下げさせられている。

「前のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は、ポーランド人です」
と、さきの3人につけ加えて、ポーランドの誇りは4人になった。
「世界には、イタリアほか、カトリックの国がたくさんある中で、
ポーランドから教皇が出たことは、驚くことです。しかも、
共産政権下のポーランドから選ばれたわけですから」
と、うれしそうに言う。

ソ連による共産主義体制のもとにあったポーランドが、抑圧されていたときに、
ポーランドに凱旋したヨハネ・パウロ2世は、ワルシャワの広場の聴衆の前で、
「恐れてはいけない」
と、語りかけて、ポーランドの民主化運動を支持し、勇気づけた。そして、
選挙が行われ、共産主義体制が崩壊し、ワレサ大統領の誕生につながった(1990年)。

これは、白い服にショールで教会に向かう女の子。

ワルシャワの旧市街、5月下旬。
8歳になると、聖体拝領(コムニア)の儀式があって、カトリック教徒になる。
白い花輪をかぶり、白い花束とカラフルなパラソルを持っている。
まるで、天使のようだ。後方の家族も正装している。

男の子も白の服装。後方の家族はカジュアル姿。クラクフ、5月下旬。

左後方の女の子は、白いパラソルを下げている。パラソルは、空を舞う小道具?

アウシュビッツ第二強制収容所(ビルケナウ)の死の門。世界遺産。

ナチスは、ヨーロッパの各地からユダヤ人、政治犯などを貨車で、
この死の門から運び入れて、働ける人を選別し、ほかは殺害した。

アウシュビッツ第一強制収容所のガス室。世界遺産。

見学者が、ガス室と焼却炉に入っていく。

第二次世界大戦のドイツの侵攻で、街は破壊され、
600万人が犠牲となり、ポーランドは国の機能を失った。
「さらに、戦後のソ連の共産主義体制の抑圧に失望して、
400万人が、アメリカやカナダに脱出した。優秀な人がいなくなった」
と、ポーランド人は言う。

ポーランドが誇りとする4人、ショパン、キュリー夫人、コペルニクス、
ヨハネ・パウロ2世を生んだ“ポーランドの通知表”をみたい。

ランク…AA=3位以内 A=10位以内 B=20位以内 C=30位以内 D=40位以内。
1)創造力: ノーベル賞の受賞者1人は21位→ランクC。
2)芸術力: カンヌ映画祭でパルム・ドール受賞作品1は11位→ランクB。
3)学力:  PISA2006の15歳の知識と技能は23位→ランクC。
4)文化力: 文化遺産は12で12位→ランクB。
5)運動力: サッカーのランキングは41位→ランクE。
 陸上競技世界記録はない。
6)経済力: 国民総生産は18位→ランクB。
7)援助力: 政府開発援助を受ける国→ランクF。
8)総合力: ランクC。


ポーランドのレーダーチャート(2009年7月)。

[総合評価]
“援助力”は、援助を受ける国であるために、
いびつなレーダーチャートになっている。

“創造力”のノーベル賞の受賞者は1人になっているが、
キュリー夫人の2回は、受賞時の国籍からフランスとしてある。残念。

“文化力”の文化遺産は、12件の12位は、りっぱである。
人口は3,800万人で、国土は日本よりも狭いのだから。
日本の文化遺産は、11件で15位である。

“芸術力”のカンヌ映画祭でパルム・ドール受賞作品は「戦場のピアニスト」。
ポーランド、フランス、ドイツ、イギリスの合作で、
監督はポーランド人のロマン・ポランスキー。

第二次世界大戦、ドイツが侵攻して、ポーランドは徹底的に破壊されたが、
「戦場のピアニスト」の破壊のシーンを見ると、ポーランドの街は、
「さぞかし、こんなだったんだろう。しかし、よく再現できたものだ」
と、印象に残っている。

これは、復元されたワルシャワの旧市街のマーケット広場。

第二次世界大戦で、ドイツとソ連に徹底的に破壊された。
「戦場のピアニスト」の破壊のシーンのように、ガレキの山だった。

しかし、宮廷画家カナレットが描いてあった絵をもとに、戦後、復元した。
中央はワルシャワの象徴「人魚の像」で、右手に剣、左手に盾をもっている。

広場には、伝統のあるレストランがあって、イノシシ肉にウォッカがすすんだ。
ウォッカBolsがあまりにもうまくて、最初グラスでグビリと、飲んでいたが、
ボトルに代えて、クイクイと空けた。アルコール分40%、酔っぱらった。

3月のポーランドは、まだ極寒。吹雪だから、首までの目ざし帽がピッタリだ。
食事を終えてホテルまで、雪道を転ばずに、どうして帰ったか、覚えていない。

しかし、ウォッカBolsの香りは覚えていて、街の酒屋で買い求めた。
900円(28.10ズウォティ)。ほかにZubrowkaもうまかった。

「ポーランドに進駐したソ連兵が、ウォッカのうまさを知って、
ソ連でもウォッカをつくるようになった」
と、ポーランド人は誇らしげである。

“経済力”の国民総生産GDPが18位とは、目覚ましい経済復興である。
ソ連の共産主義体制のもとで、半世紀も抑圧されていたのだから。

古都クラクフで、にぎにぎしい集団と会った。

サッカーのサポーター? と思った。が、違っていた。
9か月の兵役を終えて、郷里に帰ってきた若者だった。
うれしくて、うれしくて、自然に叫びたくなる。

ソ連が崩壊して(1991年)、ポーランドは侵略される脅威がなくなった。
そして、NATOに加盟した(1991年)。NATOの加盟国が攻撃を受けたなら、
同盟国は集団で防衛するから、ポーランドの安全性は前より増した。兵役期間を、
これまでの18か月から、半分の9か月に短縮して、経済の復興に力を注いでいく。

ソ連を盟主としたワルシャワ条約機構に加盟していたポーランドは、
ソ連の崩壊とともに消滅したワルシャワ条約機構を離れて、NATOに加盟し、
ワルシャワ条約機構の機密を、NATOにオープンにした。そして、
NATOのミサイル配備計画にも、積極的に取り組んでいる。

ナチスの侵攻を受け、ソ連の共産主義体制のもとで、半世紀も抑圧された、
ポーランドは、EUに加盟して(2004年)、EUの援助を受け、国を復興した。
ポーランドは、労賃の安い労働市場で、ヨーロッパの工場だったが、
今では、PC、家電品の開発、製造へと、業態が代わっている。
“経済力”の国民総生産GDPの18位は、りっぱである。

ヴァヴェル城を中心に広がる古都クラクフ。世界遺産。

このヴァヴェル城の近くに、ユダヤ人街カジミエジュ地区がある。
クラクフに、68,000人いたユダヤ人は、今はわずかの人しかいない。

第二次世界大戦で、ナチスはポーランドに侵攻して、ユダヤ人はゲットーという、
ユダヤ人居住区に強制的に移住させられ、ユダヤ人街はカラッポになった。
ゲットーに閉じ込められたユダヤ人は、やがて強制収容所で働かされ、
さらに、アウシュビッツなどの絶滅収容所に移送され、殺害された。

クラクフは、「シンドラーのリスト」の舞台である。
スティーブン・スピルバーグ監督は、クラクフで撮影している。

ユダヤ人街、カジミエジュ地区のシナゴーク(ユダヤ教会)、イザーク。

礼拝に来るユダヤ人の住人はいない。カジミエジュ地区の、
ツーリスト・インフォメーション・センターとして遺している。
ユダヤ人が去ったユダヤ人街のシナゴーク、商店、学校、住居は荒れていく。

さて、偉大なショパン、キュリー夫人、コペルニクス、それに、
慕われた元のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世を生んだ国、ポーランド。
さらに、観光資源である、ワルシャワの旧市街、ヴィエリチカの岩塩坑、
アウシュビッツの強制収容所、古都クラクフと、世界遺産が待ち受けている。
それに、うまいウォッカBolsやZubrowkaがある。

ポーランドはEUに加盟し、これまでの東欧は中欧となり、
ヨーロッパの中心にある地の利を生かして、国の発展を目指している。


文化科学宮殿。スターリンの贈り物。高さ237メートル、42階、3,288室。
入場料600円、エレベータで30階の展望台に上がると、眺望がすばらしい。
「スターリンの墓石」と、ポーランド人は呼んでいた。ワルシャワ。
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