香港も台湾も酒の飲み方の流儀は、中国と似ている。
おたがいに注ぎあって、お祝いの言葉を言って、
目を見ながらグラスを掲げ、乾杯では一気に飲み干してから、
グラスを傾けて相手に底を見せ合う。
しかし、韓国は違っている……一人で注いで、一人で飲む。
「8歳のときに、両親に連れられて、香港からアメリカヘ来た。
しかし、香港のことはよく覚えていない」
と、香港系アメリカ人のエリック32歳は言う。
ここはアメリカ……西海岸のサン・ノゼである。
香港をはるかに離れると、酒の飲み方の流儀は薄れている。
エリックとのビールは、片手でビールびんを持って、
たがいに注ぎ合う……そして、好きなだけ飲む。
グラスを傾けて相手に底を見せ合うことはしない。
――オッキイもいっしょに食事を誘わないか?
と、まえまえから言っていたのが実現した。
オッキイとは、エリックの奥さんで、韓国系アメリカ人である。
韓国系アメリカ人のオッキイは、アメリカへ来て10年になる。
香港系アメリカ人のエリックと、東洋人同士がアメリカで結婚した。
そして、男の子ジョナサンをもうけた。
ジョナサンが10か月になって、外出できるようになって、
オッキイ、ジョナサンと4人で食事をすることができた。
ジョナサンは、かわいいね! それに、賢こそうだ。
しゃべるのは、「マンマ」
――オッキイの好きな料理にしましょう。
「辛(から)いのは、大丈夫ですか?」
と、オッキイは確かめてから、
「いいところがあります、韓国宮殿Korean Palaceです」
この韓国宮殿は、エリックに連れられて来たことがある。
うまいコリアン・バーベキューを提供する。
いつものように、エリックが私にビールを注ごうとして、
右手でビールびんを持って差し出したときである。
「エリック! 左手を添えなさいッ!」
オッキイから、甲高いしっせきの声が飛んだ。
「ハイッ!」
エリックは、(しまった! 忘れていた)と、身をかたくして、
右手に持ったビールびんの底に、左手を添えて、
両手でうやうやしくビールを注いでくれた。
オッキイの声の大きさと、両手でうやうやしく注ぐエリックに、
――日本のホステスならば、両手で注ぐだろうが?
と、不思議に思っていると、オッキイが説明する。
「年上の人には、両手で注ぐのが礼儀です。
あなたはエリックより年上ですから、左手を添えて注ぎます。
あなたが年下か、友達同士なら、右手だけでもいいですけれど」
なるほど、年上には両手で注ぐのが韓国のやり方なのか?
年上をうやまう礼儀になっているのだ……気をつけよう。
エリックと2人だけのときは、右手1本でビールを注ぎあって、
特別に気に留めたこともなかったが……。
韓国系アメリカ人オッキイの年輩者をうやまう儒教の教えは、
アメリカでも生きている。
サンフランシスコの中華街。
本文にピッタリでなくて、すみません。
おたがいに注ぎあって、お祝いの言葉を言って、
目を見ながらグラスを掲げ、乾杯では一気に飲み干してから、
グラスを傾けて相手に底を見せ合う。
しかし、韓国は違っている……一人で注いで、一人で飲む。
「8歳のときに、両親に連れられて、香港からアメリカヘ来た。
しかし、香港のことはよく覚えていない」
と、香港系アメリカ人のエリック32歳は言う。
ここはアメリカ……西海岸のサン・ノゼである。
香港をはるかに離れると、酒の飲み方の流儀は薄れている。
エリックとのビールは、片手でビールびんを持って、
たがいに注ぎ合う……そして、好きなだけ飲む。
グラスを傾けて相手に底を見せ合うことはしない。
――オッキイもいっしょに食事を誘わないか?
と、まえまえから言っていたのが実現した。
オッキイとは、エリックの奥さんで、韓国系アメリカ人である。
韓国系アメリカ人のオッキイは、アメリカへ来て10年になる。
香港系アメリカ人のエリックと、東洋人同士がアメリカで結婚した。
そして、男の子ジョナサンをもうけた。
ジョナサンが10か月になって、外出できるようになって、
オッキイ、ジョナサンと4人で食事をすることができた。
ジョナサンは、かわいいね! それに、賢こそうだ。
しゃべるのは、「マンマ」
――オッキイの好きな料理にしましょう。
「辛(から)いのは、大丈夫ですか?」
と、オッキイは確かめてから、
「いいところがあります、韓国宮殿Korean Palaceです」
この韓国宮殿は、エリックに連れられて来たことがある。
うまいコリアン・バーベキューを提供する。
いつものように、エリックが私にビールを注ごうとして、
右手でビールびんを持って差し出したときである。
「エリック! 左手を添えなさいッ!」
オッキイから、甲高いしっせきの声が飛んだ。
「ハイッ!」
エリックは、(しまった! 忘れていた)と、身をかたくして、
右手に持ったビールびんの底に、左手を添えて、
両手でうやうやしくビールを注いでくれた。
オッキイの声の大きさと、両手でうやうやしく注ぐエリックに、
――日本のホステスならば、両手で注ぐだろうが?
と、不思議に思っていると、オッキイが説明する。
「年上の人には、両手で注ぐのが礼儀です。
あなたはエリックより年上ですから、左手を添えて注ぎます。
あなたが年下か、友達同士なら、右手だけでもいいですけれど」
なるほど、年上には両手で注ぐのが韓国のやり方なのか?
年上をうやまう礼儀になっているのだ……気をつけよう。
エリックと2人だけのときは、右手1本でビールを注ぎあって、
特別に気に留めたこともなかったが……。
韓国系アメリカ人オッキイの年輩者をうやまう儒教の教えは、
アメリカでも生きている。
サンフランシスコの中華街。
本文にピッタリでなくて、すみません。