季節の変化

活動の状況

ドライバーの電話番号

2010-06-30 00:06:30 | Weblog
タクシー・ドライバーは、の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。

「世界のタクシー・ドライバー」シリーズは、52回目になった。
2010年の1月から始めて、半年がすぎた。

掲載した国は、
スペイン、ギリシャ、イタリア、イギリス、ポルトガル、フランス、
ドイツ、ルーマニア、アメリカ、ブラジル、インドネシア、東ドイツ、
と、12か国に及んだ。
各国2回~3回で、合計20回~30回のつもりが、50回を超えた。

当時の写真を探し、メモを探し、調査をし、
資料を見つけて、掲載してきたが、これは、
生活の中で多くのエネルギーを必要とした。

赴任、プライベートの旅行で50か国を訪問した。
この体験ができた恩返しに、
読者のお役にたてればと、掲載してきた。
「世界のタクシー・ドライバー」は、
あと数回で、シリーズの区切りにしたい。

52) ドライバーの電話番号
日本からWebで予約したウェスト・ハンプステッドのIホテルには、
何事もなくチェック・インできた。
だが、部屋に入っても、
キャブ・ドライバーのインテンショナル故意の遠回りには、
むしゃくしゃする。

もし、3度目にインテンショナルな体験に出くわして、
ボッタクリにあったならば、ライセンス・ナンバー、
日時と場所、それに、領収書のコピーを添えて、
当局に通報しよう。

このインテンショナルは、早く忘れて、
ソーホーの中華街へ出て、広東料理でも食べよう。
しかし、ロンドンの繁華街には、歩いて行ける距離ではない。
「さっきのブラック・キャブは、もういないだろうな?」

ウェスト・ハンプステッドのIホテルに待機している、
ブラック・キャブに乗った。そして、
「オックスフォード・ストリート」を告げた。

ドライバーは、5分刈りに黒縁の眼鏡、30歳代だ。
行き先以外は、しゃべる気にならない。
しばらくは、黙っていた。

でも、声をかけてみた。
「ヒースロー空港まで行くが、
タクシー料金は、いくらか?」

ドライバーは振り返った。
「40ポンドですね」

さっきは、50ポンドも払ったぜ! まったく。
また、インテンショナルな遠回りを思い出した。

これを、きっかけにドライバーは話しかけてきた、
「いつ行くのですか?」
「あしたの朝だが……」

「35ポンドでいいですよ」
そして、すぐにつけ加えて、
「混んでいても、35ポンドで行きますよ」

ロンドン市街を抜けるには、いつも混雑して、
メーターは上がるが、それでも35ポンドで行くと言う。
ヒースロー空港へは、上客のようだ。

しかし、乗ったばかりのこのドライバーと、
ホテルに待機しているブラック・キャブを、
ボーイに呼んでもらった場合と、
どちらが信用できるだろうか?

あしたのヒースロー空港行きの予約を、決めかねている。
もう、イヤな思いはしたくないから。

最悪の場合は、パディングトンまで地下鉄で出て、
ヒースロー・エクスプレスでヒースロー空港へ行く手もある。

しかし、ドライバーはそのへんにあった紙をちん切って、
何やら書いている。
「これが携帯電話の番号です」
と、厚紙を手渡した。


ジョンJOHNという名前と携帯電話の番号だ。
それに、免許のあるタクシー・ドライバーLICENSED TAXI DRIVER
と、つけ加えてある。
読みやすい字だ。ていねいに書いてある。

ジョンは仕事を取るために、必死だ。
ヒースロー空港までの35ポンドは、
ジョンにとって魅力である。
「ロンドン市街を走り回っているから、
出発する1時間前までに、電話をくれませんか」

それで、
「10時ころチェック・アウトするが、
9時までに電話がなければ、使わないと思ってくれ」
と、まだ決めかねていた。

オックスフォード・ストリートで降りて、
メーター料金にチップをつけ加える。
ジョンはうれしそうに、去った。

「なつかしいロンドンだ!」
オックスフォード・ストリートを歩いて、
リージェンツ・ストリートに出て、
ソーホーの中華街へ行った。

中華街にある中国式のゲートもなつかしい。
中華街の1軒に入って、広東料理を楽しんだ。
夜もふけた。が、ウェスト・ハンプステッドのIホテルまで、
帰らなければ。一人で。

ブラック・キャブをつかまえた。
「ウェスト・ハンプステッドのIホテルだ。
メイダ・ヴェイルにある。
リージェンツ・パークにあるIホテルではなくて」
キャブ・ドライバーはすぐにわかった。

ドライバーは地図を見ることもない。
途中、停車してポリス・マンに道を聞くこともない。
まっすぐメイダ・ヴェイルに向かっている。そして、
まったく、問題なくウェスト・ハンプステッドのIホテルに着いた。
昼間のキャブ・ドライバーの遠回りは、なんだったんだ!
「一方通行を調べている」
と言って、地図を眺めていたが。

さて、翌日は、ロンドンからパリに飛ぶ。
ヒースロー空港に向かうが、
来た時のブラック・キャブのような、
イヤな思いはしたくない。

ホテルのボーイに呼んでもらうブラック・キャブか?
それとも、きのうのジョンか?
どちらが、まともにヒースロー空港に行ってくれるか?
迷っている。

ジョンの35ポンドか?
それとも、遠回りの50ポンドか?
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インテンショナル故意に遠回りをしたドライバー

2010-06-27 00:06:27 | Weblog
タクシー・ドライバーは、の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。

51) インテンショナル故意に遠回りをしたドライバー
「このライセンス・ナンバーを、当局に通報しよう」
ライセンス・ナンバーを控えた。
それに、あとでもらう領収書のサインで、
当局は、ドライバーを特定できる。

当局とは、PCO公共輸送事務所。
The Public Carriage Office、
住所は15 Penton Street, London N1 9PU、
電話番号は+ 44 (0)20 7230 1631。

PCOは、ロンドン警視庁The Metropolitan Policeの支所で、
ロンドン・キャブのドライバーのライセンスを発行し、
管理している。

ロンドン・キャブの安全と快適が世界一になっているのは、
ロンドン警視庁が管理しているからだ。
それに、通報制度があって、調べる。

もし、PCOの住所や電話番号がわからなければ、
もよりの警察署に届けてもいいことになっている。

ロンドン警視庁はスコットランド・ヤードとも呼ばれている。
これは、スコットランドとは関係がない。
今は移転をしているが、昔は官庁街であるホワイトホールに通ずる、
Great Scotland Yardグレイト・スコットランド・ヤード通りに、
ロンドン警視庁があったことから、
スコットランド・ヤードと呼ばれた。

それで、キャブ・ドライバーに言った。
インテンショナル故意に遠回りをした。
ライセンス・ナンバーを、通報するつもりだ」

すると、ドライバーは車をわきに寄せた。
そして、止めた。
どうしたんだ?

3回目の停車だ。
そして、ドライバーは振り返った。

少し身構える。
「“インテンショナル”故意にやったことではないことは、
理解してくれ」
懇願する口調に、ガラリ! と変わった。

これまでの、言いわけ(エックスキューズ)をする、
態度ではない。
乗客に対する高圧的な態度をキッパリとやめた。
ドライバーは、インテンショナル故意だけにはしたくない。

しかし、間違えたのではなく、
わざと乗客をだましたわけだから、
「地図を見て、一方通行を調べている、
と、さっき言ったじゃないか?
明らかにインテンショナル故意だ」
「………」
ドライバーは黙った。

「これまで乗ったロンドン・キャブで、最悪のドライバーだ!
早く正しいところへ連れて行け」
時間のムダだ」

「………」
ドライバーは、前を向いた。
そして、すごすごと発進させた。

パーク・ロードを横切り、エッジウェア・ロードに出た。
ここはメイダ・ヴェイル地区だ。
やっと、正しい方向に向かった。

すると、道端にポリス・マンがいる。
ドライバーは、そさくさと車を止めた。
4回目の停車になる。

地図を握りしめて、降りた。
そして、ポリス・マンに近づいていく。

握りしめた地図をポリス・マンに広げて、
ウェスト・ハンプステッドのIホテルを聞いている。
そして、ときどき、こちらを振り返っている。

わざとらしいな。
これは、インテンショナルに遠回りをしたことでないことの、
ジェスチャーだ。
あくまでも、
「道を間違えたんだ」
「それで、ポリス・マンに道を聞いた」
と、いうことにしておきたい。

メイダ・ヴェイル地区に来れば、
あとは、住所のハウス・ナンバーでIホテルは、わかるはずだ。
イギリスの住居表示を、イギリス人が知らないわけがない。
まして、免許を受けたキャブ・ドライバーだ。

それに、ホテルは大きな建物だ。
地図に載っている。

ドライバーはキャブにもどると、
ポリス・マンが指した方向に発進させた。
そして、ウェスト・ハンプステッドのIホテルに着いた。

メーターは、53ポンド(8,500円)をさしている。
さーて、どうしよう?

「ロンドン・キャブは世界一だ」と思っていたが、
「ロンドン・キャブよ、お前もか!」
と、裏切られた。

ロンドンに滞在しているときには、
通りの名前を言えば、問題がなく行けたのだが。
1回も停車させることもなく。ポリス・マンに道を聞くこともなく。

大英博物館からヒースロー空港へ向かった前回の旅行では、
「パーク・ロードがクローズなんだ」
と言って、北斗七星の形で遠回りをした。

そして、ヒースロー空港からホテルに向かった今回では、
住所と地図を渡したが、
「一方通行を調べている」
と言って、自分の地図を眺めて、
工事中の道路に入って、のろのろと運転し、
そこを、やっと抜けると、今度は、遠回りをした。
4回も停車して、途中でポリス・マンに道を聞きながら。

ドライバーは、滞在者と旅行者をちゃんと見分けて、
乗客をだましたのだ。のろのろ運転と遠回りのボッタクリだ。

気分が悪い。
メーターは、53ポンドだが、
「50ポンドでいいな?」
「いいですよ」
ドライバーは、50ポンドに納得した。
案外、スンナリと受け入れた。
チップは、とうぜんなしだ。

ドライバーは、工事中の道路の、のろのろ運転と、
遠回りで、53ポンドまでつり上げたことは、わかっている。
50ポンドの提案は、ドライバーにとっては、ありがたかった。
メーターの53ポンドにチップの10ポンド、
あわせて63ポンドをボッタクルという、
もくろみは外れたが。

「領収書をくれ」
LICENSED LONDON TAXI RECEIPTと印刷されている領収書に、
50ポンドと書き、日付を入れ、サインをした。
サインは判読ができないが、
ちゃんと領収書を発行したから、
当局への通報はなしにする。

遠回りをせずに、安全にお客を届けて、
チップの10ポンドをもらった方が、
お互いに気分がいいだろうに。
メーターが40ポンドになったのと、同じじゃないか。

ドライバーは、ガソリンと時間とチップを損した。
それに、
「これまで乗ったロンドン・キャブで、最悪のドライバーだ!」
とまで言われた。

ロンドン・キャブのドライバーとしての誇りは、
ないようだ。まったく。

今後、キャブ・ドライバーという職業を、
続けていかなければならないのに、
「当局に、通報されるのではないか?」
「そのときには、インテンショナルに遠回りをしたわけではない。
道を間違えたんだ」
「それで、ポリス・マンに道を聞いた、と言おう」
と、ビクビクが残るじゃないか。


トラファルガー広場。
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一方通行を調べるドライバー

2010-06-23 00:06:23 | Weblog
タクシー・ドライバーは、の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。

50) 一方通行を調べるドライバー
キャブ・ドライバーはロンドン市街へのモータ・ウェイM4を、
快適に飛ばしている。そして、市街に近づくにつれて、信号がある。
信号で止まるたびに、助手席に置いてある自分の地図を眺め込んでいる。

Iホテルが、わからないのかな?
それで、
「住所と地図はここに書いてある」
と、また予約の紙を渡そうとすると、
「わかっている、一方通行を調べている」
と、返ってきた。

大丈夫だろう。しかし、
この「一方通行」という言葉を、あとで思い出すことになる。

ロンドン市街に入ると、工事中の道路に入った。
のろのろと進む、なかなか抜け出せないでいる。
この道は、いつもは利用しないのに、
どうして工事中の道路を通るのだろう? わざわざ。

時間をかけて、どうにか抜け出ると北に上がった。
リージェンツ・パークのわきのパーク・ロードだから、
目指すメイダ・ヴェイル地区を少し東に行き過ぎている。
まぁ許せる範囲だ。

リージェンツ・パークを通り過ぎると左折して、
メイダ・ヴェイル地区の方に戻るのだろう?
と、思っていた。

ところが、リージェンツ・パークを通り過ぎると、右折した。
ウェスト・ハンプステッドのメイダ・ヴェイル地区は、
左折するはずだが……。

右折すれば、リージェンツ・パークのIホテルの方向になる。
ウェスト・ハンプステッドのIホテルと言ったはずだが、
そこへ行かずに、リージェンツ・パークのIホテルへ行くのだろうか?
ドライバーは、地図を見て確かめたはずだが。

やがて、リージェンツ・パークの北を走り始めた。
やはり、リージェンツ・パークのIホテルに近づいている。
同じIホテルのチェーンでも、これは違っている。
それにウェスト・ハンプステッドからは、離れていく。

「ウェスト・ハンプステッドのIホテルに行きたいが。
メイダ・ヴェイルにある」
ドライバーは振り返った、そして、わきに車を止めた。
1回目の停車である。

「リージェンツ・パークのIホテルではないのか?」
ふざけた答えが返ってきた。

「ウェスト・ハンプステッドのIホテルだ。
メイダ・ヴェイルにある。
住所と地図を見せたじゃないか?
リージェンツ・パークのIホテルではない」

ドライバーはUターンをした。
東へ来すぎたのだ。
メイダ・ヴェイル地区にある西へ引き返した。

「最初から、メイダ・ヴェイルにあるウェスト・ハンプステッドの、
Iホテルと、言ったじゃないか」
「間違えたんだ」
「ふざけるな! 正しいところへ連れて行け」

気迫に圧倒されたドライバーは、
言いわけと、運転をいっしょにするわけにいかない。
車をわきに止めた。
2回目の停車だ。

そして、振り返って、
「リージェンツ・パークに近いと思ったんだ」
と、ドライバーは言う。
「わからなかったら、地図を調べろ!」

コンピュータ・システムの端末には、
ナビゲーションの機能はないのか? まったく!

「さっき渡した地図と住所だ」
紙と怒りを渡した。

ドライバーは、しかたなく渡された地図と、
助手席に置いてある自分の地図を交互に見比べている。

ドライバーは、わかっているのだ。
メイダ・ヴェイルとリージェンツ・パークを間違うドライバーはいない。

それに、信号で止まるたびに、地図を見て、
「わかっている。一方通行を調べている」
と、言っていた。

そして、
「近くまで行って聞いてみる。わかりにくかったものだから」
と言いわけ(エックスキューズ)を始めた。

ドライバーには、自分の非を認める気は、さらさらない。
工事中の道路に入って、のろのろと進み、
しかも、メイダ・ヴェイルに行かずに、
さらに東のリージェンツ・パークへ行った。
まちがった方向へ進んでいるが、この非は認めない。
言いわけ(エックスキューズ)するだけだ。

「言いわけ(エックスキューズ)を聞くために、
乗っているのではない。早く正しいところへ連れて行け」
「連れて行っている」
と、キャブ・ドライバーは返してきた。

“ライセンス・ナンバー”を示すプレートが、
ドアに貼りつけてある。


リージェンツ・ストリート。
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ホテルの住所をドライバーに渡す

2010-06-20 00:06:20 | Weblog
タクシー・ドライバーは、の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。

49) ホテルの住所をドライバーに渡す
ロンドンに滞在しているときに、
ブラック・キャブに乗ると、
通りの名前を言うだけで、すぐにわかって、
キャブ・ドライバーは、まっすぐに行ってくれた。

それが、旅行者としてロンドンへ行くと、
遠回りをすることが、立て続けに2回あった。

1回目は、大英博物館からヒースロー空港まで。
西へ行かずに、南へ行って、北斗七星の柄杓の形で遠回りをした。
「パーク・ロードがクローズだ」
と、言って。

2回目の今回は、ヒースロー空港からロンドン市街のホテルまで。
ロンドン市街に入ると、ジャミング(混雑)する道路を通り、
しかも、遠回りをした。
「一方通行を避けている」
と、言って。

2回も遠回りがあると、
旅行者とみるとボッタクリをすることになる。

今回は、成田からパリに行くが、
初夏は、どのフライトも満席だった。
JALもANAも、エア・フランスも。

それで、旅行社は、前日にロンドンへ行って、
翌朝、ロンドンからパリに入るルートを勧めた。
BAブリティッシュ・エアウェイズBritish Airwaysの、
ロンドン行きに空きがあったから。

ロンドンのホテルは、ウェブで調べて、Iホテルにした。
Iホテルはホテルのチェインで、ヒースロー空港に1つ、
ロンドン市街に6つあるが、空港はすでに満室。

ロンドンは、パリへのトランジットだから、
ヒースロー空港のIホテルで十分だったが、
空きがないのは、イギリスも観光シーズンの訪れ。

ロンドン市街にあるグロブナーも、マーブル・アーチも、
リージェンツ・パークも、当然のように満室だった。
このリージェンツ・パークにあるIホテルは、
あとで出てくる。

ところが、ロンドン市街ではあるが、西に外れた、
ウェスト・ヘムステッドにあるIホテルに空きがあった。
新たにオープンしたIホテルだから、まだ、なじみがない。
それに、ロンドンの繁華街には、歩いて行ける距離ではない。
それで、空きがあったのだろう。

どうせ1泊だから、安全に泊まれればいい。
食事には、市街までブラック・キャブで出ればいいじゃないか。
それで、ウェスト・ヘムステッドにあるIホテルをウェブで予約した。
ここウェスト・ハンプステッドのメイダ・ヴェイル地区は、
リージェンツの西になる。

そのウェスト・ヘムステッドのIホテルの、
住所と地図をプリント・アウトしておいた。

ヒースロー空港からIホテルまで、ブラック・キャブで行くが、
万が一、キャブ・ドライバーがわからなかったら、
この住所と地図を見せるつもりだ。

東京の初夏は28℃だった。
ロンドンに近づくと、
「ロンドンは曇り、18℃」
と、機内放送があった。

夕方の4時、ヒースロー空港に着いた。
「18℃、この涼しい空気はロンドンのものだ」
と、懐かしくなる。

ヒースロー空港のブラック・キャブ乗場で、
キャブ・ドライバーにIホテルと告げた。
だが、わからない。

「ウェスト・ハンプステッドのIホテル。メイダ・ヴェイルにある」
と、言ったが、それでもわからない。それで、
近くのキャブ・ドライバーに聞いていた。

どうやら、わかったようで、40歳代、背が高いキャブ・ドライバーは、
「乗りなさい」
と、うながした。

ブラック・キャブ特有の黒塗りのTX1型に、
バッグといっしょに後部座席に転がり込む。
後部座席の広さも、硬いシートの感触も、以前と同じだ。
なんだか、故郷に帰ったようでホットする。

ちがいが少しあった。
それは乗客のドアが、運転席からロックできること、
コンピュータ・システムの端末がついていたことである。

「端末は、ヒースロー空港にある4つのターミナルに、
到着する乗客の数に合わせて、キャブを効率よく配置する」
と、キャブ・ドライバーは言う。

「ジャンボ・ジェット機が到着すると、
多くの乗客が、一時にキャブ乗場に集まる。
それを見て、ほかのターミナルからキャブを移動させる」

キャブ・ドライバーはウェスト・ハンプステッドのIホテルの、
大体の場所しか知らないようだから、
ウェブで予約したときにプリント・アウトした住所地図を、
ドライバーに渡した。

ドライバーは、運転席と後部座席を仕切るガラスの小窓を開けて、
受け取り、住所と地図を見てから、返してよこした。
住所を知らないキャブ・ドライバーはいないから、
これで、間違いなくIホテルに着くだろう。

ホテルに着いたら、今夜はソーホーの中華街へ出て、
広東料理でも食べよう、久しぶりに。


Gerrard Streetには、中国式の門(奥)があり、
広東料理のレストランが、左右に並ぶ。
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タクシー料金を乗客に聞くドライバー

2010-06-16 00:06:16 | Weblog
タクシー・ドライバーは、の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。

48) タクシー料金を乗客に聞くドライバー
ロンドンのブラック・キャブは、遠回りをした。
北斗七星の柄杓(ひしゃく)の形で走った。
旅行者とみたボッタクリだ。

「パーク・ロードがクローズなんだ」
と、キャブ・ドライバーは言って遠回りをしたから、
「ライセンス・ナンバーを通報する。
それに、クローズという道路の名前を、ここに書いてくれ」
と、言った。

すると、ドライバーはガラリ! と態度を変えた。
これまでの高圧的な態度やめた。
そして、
「私はオネスト/正直者だ」
と言う。

それから、
「来るときのタクシー料金は、いくらだった?」
と、聞いてきた。
「?……」

タクシー料金を、乗客に聞いて、それに従おうという提案だ。
ロンドン市街からヒースロー空港までのタクシー料金は、
キャブ・ドライバーが一番よく知っていることだ。
それを、乗客に聞こうというのだ。

これが、オネスト/正直者だろうか?
言葉を間違えている。
頭がいいのか、ずる賢いのか。
いずれにしても、これまでに何度か使ってきた手だろう?

それで、ちょっと困った!
ヒースロー空港からロンドン市街に来るときには、
10ポンドのヒースロー・エクスプレスに乗った。
ブラック・キャブは使わなかった。

ここは、ロンドンに滞在していた当時を思い出して、
タクシー料金を推察するしかない。

かけ離れて安ければ、
「ブラック・キャブの料金を知らないな?」
と、バカにされる。

高過ぎれば、正規料金よりも余分に払うから、
おもしろくねェ。兼ね合いがむずかしい……。

それに、回答はモタモタ、オドオドと、
手間取ってはいけない。

タクシー料金を、早く答えなければ……。
「34ポンド(5,400円)」
まっすぐ行った場合の、正規料金を言ったつもりだ。

「よし、それならば、34ポンドで行く」
と、ドライバーは私の提案をあっさりと受け入れた。
料金は妥当だったようだ。

そして、
「土曜日の午後は、1.2ポンドが追加になるが」
と、余計なことを言う。
「34ポンド以上は、払わない」

運転席のうしろには、乗客にわかるように、
割増料金表が貼ってある。
日曜日とか深夜の割増料金は書いてあるが、
土曜日の割増料金はどこにも書いてない。

34ポンドが決裂したら、ここまでの料金を払って、
ほかのブラック・キャブに乗り換えるつもりだ。
幸いに、多くのブラック・キャブが、
あたりを走り回っている、まだ市街だから。

「OK! だ」
ドライバーは、すぐに1.2ポンドの上乗せの要求を取り下げた。

以外にあっさりと、取り下げたなァ。
タフな交渉相手で、決裂も覚悟をしていたが。

「ライセンス・ナンバーを通報する」
が、効いたのかな?
それとも、ヒースロー空港まで行くのは上客だ。
そのタクシー料金は失いたくない。

交渉は成立したから、ドライバーは、
再びブラック・キャブを走らせた。

もう遠回りはやめた。
34ポンドと上限を決められたから、
近道をしてヒースロー空港に向かった。
すぐに、モータ・ウェイM4に乗った。

北斗七星の柄杓(ひしゃく)の、
柄(え)の部分に来たのである。

さて、タクシー料金だが、
あっさりと、34ポンドが決まったから、
「34ポンドは、高すぎたんじゃないかな?」
と、ちょっと不安になった。

あとは、メーターが34ポンドを越えなければ、
損をする? どのくらいになるかだ?

メーターをズーッと見ていた。
なんだか、メーターの上がりが遅い気がする?

ヒースロー空港に近づいてくる。
メーターは、ゆっくりと、
しかも確実に上がっていく……。

そして、ついに、34ポンドを越えた。
「ヤッタァ!」
ニンマリした。

そして、決めた。
「この先どこまでメーターが上がるかわからないが、
34ポンド以上は、ビタ1ペンスも払わんぞ!」
「それで、もめるようだったら、当局に通報しよう」
「“ライセンス・ナンバー”といっしょに」

それで、運転席のうしろにあるプレートの、
ライセンス・ナンバーをメモした。
「Ex9xx」とある。

おつりがないように、紙幣で30ポンド、コインで4ポンド、
ぴったり34ポンドを用意して、にぎりしめた。
「34ポンド以上は、絶対に払わんぞ!」
「チップなんて論外だ」

メーターは41ポンドを示して、
成田便が発着するターミナル3に着いた。

ドライバーが手で設定したメーターの横の表示には、
土曜日の午後の追加料金だという1.2ポンドが点灯している。
それを上乗せすると、42.2ポンドになる。

34ポンドで交渉は成立したから、もう、文句は言うなよ!
ブラック・キャブから降りた。
そして、ガラス窓越しに、
「34ポンドだね?」
「そうです」
と、ドライバーは、まったくおとなしい。
以外なくらいだ。

握りしめていた、ぴったり34ポンドを渡した。
なにも言わないのに、ドライバーは領収書を取り出した。
そして、34ポンドと書いて、サインをした。

サインは読みにくいが、C.Fxxかな?
こんな名前があるのか?

まぁ、いい、34ポンドだ。
この領収書は勝った証しだ。
遠回りをし、イヤな気分にさせられた代償だ。

ブラック・キャブのドライバーは、
メーターの41ポンドと、34ポンドとの差額が7ポンド、
それに、もらえるチップが5ポンド、
合わせて12ポンド(1,900円)ほどを損した。
さらに、ガソリン代と時間までも。

ブラック・キャブだけは大丈夫だと思っていたが、
旅行者とみると、
オネスト/正直者じゃないドライバーがいるのだ。

RECEIPTと印刷された領収書には、

LICENSED LONDON TAXI
「認可されたロンドン・タクシー」とあり、
Thank You for your custom”
「ご利用、ありがとうございます」と、お礼があり、
ALWAYS USE A licensed TAXI・CAB
「いつも認可されたタクシー・キャブの使用を」とある。

旅行者にも、お礼が伝わるような、ロンドン・タクシーになってくれ。
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ライセンス・ナンバーを通報する

2010-06-13 00:06:13 | Weblog
タクシー・ドライバーは、の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。

47) ライセンス・ナンバーを通報する
ロンドンの都心にある大映博物館から、
西にあるヒースロー空港まで、
ブラック・キャブに乗った。

ところが、キャブ・ドライバーは、
算数の台形の3辺を走った。
ふつうは、1辺を走るものだが。

それは、こうだ。
キャブ・ドライバーは、
西に行かずに、南へ走った。
テムズ川に沿ってどこまでも。

そして、南の端、ピムリコPimlicoの街まで来た。
ここからは、細い道をくねくねと走って、
ついに、スローン・スクエアSlone Squareに出て来た。

ロンドン市街を脱出できないでいるじゃないか?
どうして、こんなに遠回りをするのだろう?

「ここは、スローン・スクエアだ、
どうして、こんな南を走るんだ?」
と、言うと、
「さっきも、言ったようにパーク・ロードがクローズなんだ」
と、キャブ・ドライバーはすぐに、返してきた。

「どこがクローズか、もっと正確に地図で示してくれ」
「この辺がクローズだ」
こんども、キャブ・ドライバーは、指で乱暴に円を描くだけで、
正確な場所を示さない。また、そのつもりもない。
そして、今度も地図を突っ返してきた。
まったく、いい加減なドライバーだな。

そして、ドライバーはつけ加えた。
「ハロッズまで出て来られないんだ」
ハロッズは有名なデパートメント・ストア。


ロンドン市街の西にあって、そのハロッズまで来れば、
ロンドン市街を抜けたも同然だから、
あとは、まっすぐ西へ行けばいい。

ところが、
「パーク・ロードがクローズ」で、
その「ハロッズまで出て来られないんだ」
と、ドライバーは言うのだ。

ここロンドンの南の端、スローン・スクエアには、
もちろん、パーク・ロードはない。

「不愉快だ! こんなキャブ・ドライバーは初めてだ」
と言った。
「私もクローズは、初めてだ!」
と、ドライバーから返ってきた。

「オックスフォード・ストリートを通ればいいじゃないか」
「オックスフォード・ストリートはジャミングする」
「オックスフォード・ストリートの北の道は、
ジャミングしないじゃないか」
「………?」
ドライバーから、返答はない。だまった。

ジャミングしない道は、あるのだ。
それを探して、最短距離を走るのが、
キャブ・ドライバーだと思っていた。

ドライバーがどのような道を通ったかは、
算数の台形を思い浮かべてください。
あるいは、柄杓(ひしゃく)の形をした北斗七星でもいいです。
柄杓の柄(え)の根元がヒースロー空港で、
杓(しゃく)の先端が大英博物館である。
杓の部分は台形になっていて、
その3辺を通っている。

3辺を通らずに、まっすぐ西に行くと、
ヒースロー空港へのモータ・ウェイM4につながるのである。

ところが、どこまでも南下して、
それから、くねくねと西へ行き、
そして、北に上がっているから、
杓の3辺を通って、柄にもどると思えばいい。
ハロッズは柄杓の柄と杓がつながるところ。
この遠回りには不愉快だ、まったく。

重いサムソナイトを持って、大英博物館から、乗った。
そして、ヒースロー空港へ行くから、
「明らかに旅行者だ、それも日本人だ」
と、ドライバーにはわかる。

「ロンドンの道路事情には、詳しくない」
と見て、遠回りをしているのだ。
ロンドンに滞在しているときには、
あり得なかったボッタクリだ。


ブラック・キャブの“ライセンス・ナンバー”を示す、
プレートが運転席の後ろについているのを目にしている。

ブラック・キャブのうしろには、
上にナンバー・プレート(黄色)と、
下にライセンス・プレート(白)がある。

リージェンツ・ストリートで。

「止めてくれ、止めろ!」
ドライバーは、なんのことだろう? という後ろ姿だ。

「すぐに、止めろ!」
ドライバーは、なんのことかと、振り返った。

「止めろ! ほかのブラック・キャブに乗る」
ドライバーは、意味がわかったようだ。
わきに止めた。

「ライセンス・ナンバーを通報する。
それに、クローズという道路の名前を、ここに書いてくれ」
と、地図を3度、渡した。

通報先は、PCOである。
The Public Carriage Office/公共輸送事務所。
通報があれば、PCOは調査をする。

この「ライセンス・ナンバーを通報する」
は、効いたようだ。

キャブ・ドライバーはガラリ! と態度を変えた。
ガラリと。
高圧的な態度をやめた。普通にもどった?

そして、
「私はオネスト/正直者だ」
と、言った。

どこがオネスト/正直者だ!
わざわざ、遠回りをしているくせに。
旅行者だと思っての、ボッタクリではないか。

ヒースロー空港までは、次回に。
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通行止めと言って遠回りするキャブ・ドライバー

2010-06-09 00:06:09 | Weblog
タクシー・ドライバーは、の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。

46) 通行止めと言って遠回りするキャブ・ドライバー
ロンドンに滞在しているときには、
キャブ・ドライバーとのトラブルはなかった。

イギリスの滞在を終えて日本に戻った。
そして、日本からイギリスへ旅行すると、
キャブ・ドライバーと、トラブルがあった。

それは、ヨーロッパから日本にもどるときだった。
スペインから、イギリス経由で日本に帰るが、
バルセロナからロンドンに着いたのは、昼だった。
成田便は夕方だ。それで、大英博物館で過ごすことにした。

ヒースロー空港からロンドン市街へは、
ヒースロー・エクスプレスHeathrow Expressを使った。
滞在したあとに開通したこの鉄道は、15分でロンドン市街の、
パディングトンPaddingtonまで直行する。
タクシーだと50分が15分になるし、
料金10ポンド(1,600円)は、魅力だ。

終点のパディングトンからは、
地下鉄を乗り継いで、大英博物館のある、
トッテナム・コート・ロードTottenheim Court Roadへ行った。

なんども来ている大英博物館だが、

概観を見ただけでうれしくなる。

中は、ロゼッタ・ストーン、ギリシャのパルテノン・マーブル、
アッシリアの人面獣身像やライオン狩りの浮き彫り、
エジプトのファラオ、トルコの墓、
エジプトのミイラと、飽きない。

カンティーンが大英博物館の中にある。
スコーンにクローティッド・クリームを、
たっぷりつけて食べる。それに、紅茶。
短時間ではあるが、ひさしぶりのロンドンを楽しんだ。

さて、ヒースロー空港には、ブラック・キャブでもどろう。
大英博物館前の前にキャブ乗場がある。
ブラック・キャブが1台いた。

キャブ・ドライバーは手持ちぶさたで、
外に出てTX1型の黒塗りのボディを拭いている。
オースチン型から、やや丸みのあるTX1に変わってきている。

「ヒースロー空港」と言うと、
“OK”
赤毛で、がっしりした大男の顔がゆるんだ。

重いサムソナイトを持って、ヒースロー空港に行くから、
明らかに“旅行者”だ。
上客なのだろう、
「これで売上げが伸びる」
と、思ったのだろう。

走り始めると、40歳代の大男のドライバーは、
やたらクラクションを鳴らして前の車を追う。
それに、ムスッとして運転をしている。

ロンドンのブラック・キャブは、
“Passenger safety and comfort come first.”
「乗客の安全と快適が第一」
で、キャブ・ドライバーは、
フレンドリーで話し好きのはずだが。
ロンドン滞在中は、よく話をしたものだが。

ドライバーは、なぜか南に下がった。
ヒースロー空港は、西になるから、
南に下がらずに、まっすぐ西へ行けばいいはずだが。

南に下がってトラファルガー広場まできた。
「ここで、ヒースロー空港のある西に行くのかな?」
と、思っていると、ターンせずに直進する。

さらに南下して、官庁街のホワイトホールを通る。
そして、
「パーク・ロードはクローズ(通行止め)だから、直進する」
と、ボソリと言った。

その官庁街のホワイトホールを南下して、
ビッグ・ベンの横、チャーチル像に来た。
「ここで、西へ行くのかな?」
と、思っていた。

ところが、ラウンダバウト(ロータリー)を、
西へ行かずに、さらに南下する。

ウェストミンスター寺院のわきを通り、
国会議事堂を抜けてテムズ川に出た。
南下はさらに続いて、テムズ川沿いを走っている。

「この先、いったい、どこまで行くのか?
いくらなんでも、おかしい!」
南に来すぎだ。

それで、キャブ・ドライバーに声をかけた。
「ここは、テムズ川に沿っている。
いったい、どの道がクローズか?」
「パーク・ロードがクローズだ」
と、返してきた。

パーク・ロードと言うが、
どこにもありそうな名前のこの道路は、
実際はここより北にあるリージェンツ・パークの東だ。

リージェンツ・パークに沿って南北に走っているパーク・ロードは、
ヒースロー空港へ行く今回は、まったく使用しない道路だ。

それに、今はパーク・ロードよりも、
まったく南を走っている。
「パーク・ロードだって?
どこか、地図で示してくれ」
旅行には持っていくロンドンの地図を渡した。

ドライバーは、地図を受け取ると、
「ここら辺だ」
指でおおざっぱに円を描いた。

それは、セント・ジョームズ・パークと、
ハイド・パーク辺りだ。
実際にあるパーク・ロードとは、
まったくかけ離れた南だ。
そして、地図を突っ返した。

なんだか、気分が悪いキャブ・ドライバーだ!

トラファルガー広場、官庁街のホワイトホール、ビッグ・ベン、
チャーチル像、ウェストミンスター寺院、
国会議事堂、テムズ川と、まるで、
ロンドンの見どころを巡っているようだ。

はじめてのロンドンなら、
あっちこっち見学できていいが、
夕方の成田便に乗るために、ヒースロー空港で、
出発の2時間前にはチェック・インしなければならない。

西へ行きたいが、どこまで、南へ行くのだろう?
あっちこっち見学している余裕はない。
それに、タクシー代もかさむ。
どうしよう?
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旅行者としてブラック・キャブに乗る

2010-06-06 00:06:06 | Weblog
タクシー・ドライバーは、の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。

45) 旅行者としてブラック・キャブに乗る
ロンドン・ブラック・キャブのドライバーには、
ヨーロッパのタクシー・ドライバーに見かけた、
✇目的地とは、反対の方向へ走る、
✇メーターを倒さずに、高い料金をとる、
✇勘違いをしたふりをして、遠回りをする、
✇そして、高い料金をふんだくる、
✇恫喝する、
ことは、なかった。

“Passenger safety and comfort come first.”
「乗客の安全と快適が第一」
これは、ロンドン・ブラック・キャブの標語である。

ヒースロー空港から、ロンドン・ブラック・キャブで、
ロンドン北部のわが家に帰る。
「XXストリート」
と言うと、タクシー・ドライバーはすぐにわかる。

ヨーロッパのタクシーのように、
✇通じただろうか?
✇わかっただろうか?
✇無事にたどり着けるだろうか?
✇変なところへ連れて行かないだろうか?
✇どうして、メーターを使わないのだろうか?
✇ボラないだろうか?
と、気をもまなくていい。
寝ていても、我が家に着く。

ロンドン・ブラック・キャブのドライバーは、
✇オネスト/正直、
✇フェア/正しい、
✇話しじょうず、
を、目指している。

このロンドン・ブラック・キャブのドライバーになるには、
“筆記試験”、“口頭試験”、“実地試験”がある。

筆記試験は、
Knowledge of London”、
というロンドンの地理の知識が試される。

Blue Book”(青本)という悪名高い教本には、
ロンドン市内の400のルートが示されている。
始点から終点までの住所、道路の名前、名所、
劇場、病院、警察署、学校、映画館、公園、
教会、スポーツ施設、モニュメント、レストラン、
歓楽街、ホテル、官庁のビルディングなど、
乗客が利用するだろう場所を、すべて覚えなければならない。

タワー・ブリッジ近く、テームズ川沿いで見かけた、
タクシー・ドライバーの卵。

モペッドのナンバー・プレートの下に、
赤いLマークをつけている。
Learningで、
モペッドで、ロンドン中を走って、
すべての通りの名前、名所、旧跡、
一方通行、右折や左折禁止、駐車場所……を学んでいるのである。

ロンドンの“知識”を覚えたか?
タクシー・ドラーバーとして“適性”か?
そして、まちがいなく、かつ安全に“運転”できるか?
段階を踏んだこれらの試験に合格するのは、
10人のうち3人である。平均3年かかる。

そして、ライセンスとバッジが授与されて、
はじめて、タクシー・ドラーバーになれる。


そのタクシー・ドラーバーが、もし、
✇目的地とは、反対の方向へ走る、
✇メーターを倒さずに、高い料金をとる、
✇勘違いをしたふりをして、遠回りをする、
✇そして、高い料金をふんだくる、
✇恫喝する、
ことがあれば、
ライセンス・ナンバーとともに、
当局(The Public Carriage Office/公共輸送事務所)に、伝える。
すると、PCOは調査をする。
近くの警察署に連絡してもいい。

The Public Carriage Office(公共輸送事務所)は、
ロンドン警視庁(The Metropolitan Police)の支部で、
ロンドン・ブラック・キャブの車両の認可と、
タクシー・ドライバーの資格を管理している。

タクシー・ドライバーは、
試験制度によってその資格が制限されているが、
いったんドライバーになってしまえば、
今度はその資格が保護されて、
職業を安定させている。


しばらくして、ロンドン滞在が終わって日本にもどった。
そして、ロンドンを訪れて、旅行者としてブラック・キャブに乗った。
そうすると、ロンドン・ブラック・キャブのドライバーは世界一である、
という神話がくずれることがあった。

同じ日本人でも、滞在者か? 旅行者か? を見分けて、
キャブ・ドライバーは対応を変えることが起きたのである。
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タクシー料金の支払いは東ドイツのマルクで

2010-06-02 00:06:02 | Weblog
タクシー・ドライバーは、の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。

44) タクシー料金の支払いは東ドイツのマルクで
見本市会場から郊外のホテルまで、タクシーで帰る。
昼は高校の教師、夜はタクシー・ドライバーの、
教師ドライバーに乗り合わせた。

教師ドライバーは、しきりに話しかけてくる。
「インフレーションがないから、この20年間、
物価が上がってない。ガソリン代も値上がりしてない」
「インフレーションもないし、暴力もないし、失業者もいない」
と言う。

「インフレーションもないし、暴力もないし、失業者もいない」
と、社会主義の良さを、タクシー・ドライバーから聞かされると、
「なるほどな」
と、重みがある。

最初は、社会主義の良さを話した。
それから、
「冷蔵庫、洗濯機は、高過ぎて買えない」
「電話はぜいたく品で、持っているのは一部の特権階級だけだ」

「車は、タクシーが優先されているから、1年待てばいいが、
一般の使用は、後回しで5~6年は待つ」
「新車よりも、いま手にしたい中古品のほうが高くなっている」

「ドル・ショップでは、西の商品を売っている」
「タバコや酒、肉、バナナ、オレンジ、チョコレートもある」
「だが、利用できるのはドルを持っている裕福な人か、一部の特権階級さ」

あとで、ドル・ショップへ行ってみた。
お客さんがいなかった。売り子が2人の小さい店だ。
西でみかける免税店という感じだ。西のチョコレートを、
ドルで買った。円換算すると……高い、日本の3倍もする。
たしかに、東ドイツの市民が買い物をする店ではない。

そして、ドライバーは気を許したのか、
だんだんと過激になってきた。
「西から東に電話をかければ、すぐにかかる」
「しかし、東から西には、申し込んでから、しばらく待たされる」

「だれと交信しているのか、チェックしているのさ」
「それに、“盗聴”されているのは当たり前のことなんだ」
「“脱出”の話をしたり、国家の“悪口”を言おうものなら、
“秘密警察シュタージ”に“密告”されて、連行される」
「それで、“人生を失った”人が多い」

盗聴、密告、秘密警察で人生を失う、とは恐ろしい話だ。
それも、一般市民の身の回りに起きているとは、驚きだ。

よく、こんな話を、乗り合わせた日本人にするもんだ。
一党独裁による内部の腐敗、恐怖政策、計画経済の破綻という、
国の破滅状態を、日本人に話したのだ。

「国民は、国家の悪口を言っているだろう?」
「脱出するだろう?」
と、政府が国民を疑っている。
そして、盗聴や密告、秘密警察の恐怖で抑え込んでいる。

「言われるままにやってきたが、幸せにしなかった」
「その国民を守らないとは、なんのための国なんだ!」
と、国民が政府に失望して、国を捨てて脱出をする。

これは、末期的な状態だ。
「この国に未来はない」
と、言うからには、東の住人の忍耐も限界だ。

郊外のホテルに着いた。
さて、タクシー料金を払う。
東ドイツのマルクで支払った。それに、
ドライバーとは話ができたから、チップをはずんだ。

しかし、東ドイツのマルクの紙幣を見たときに、
教師ドライバーはガッカリした顔をしていたな。
西ドイツのマルクでもらえれば、20倍になったのだが。

それで、ポケットをまさぐって、
西ドイツのコインを取り出して、渡した。
それでもうれしそうだった。

今は、東西のドイツが統合されていて区別はないが、
教師ドライバーは、どうしているのかな。
いい家が、建っただろうか?

ハレの見本市会場(1989年)。

尖塔には☆が乗り、正面にはレーニンの巨大な顔像がある。
この☆も、レーニン像も、ベルリンの壁も……、
いまは、取り壊された。
“いまわしいもの”は取り除いた。
そして、新しい変化に対応していく。
盗聴、密告、秘密警察で人生を失う人は……もういない。

半世紀かかった“イデオロギー”の“実験”は終わった。
一党独裁による内部腐敗、計画経済の破綻は、
国民を幸せにしなかった。

西も東も、つくっているもの、
車、電気製品、家……は同じだったが。

半世紀たって、東ドイツの男性の平均身長は、
西ドイツに比べて、3センチメートル低かった。

西も東もなくなって、“地球規模”(グローバル化)になった。
イデオロギーに代わって、“先端技術”の競争になった。
歴史の“劇的な変化(パラダイム・シフト)”を、
ひしひしと感じた。
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