タクシー・ドライバーは、街の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。
「世界のタクシー・ドライバー」シリーズは、52回目になった。
2010年の1月から始めて、半年がすぎた。
掲載した国は、
スペイン、ギリシャ、イタリア、イギリス、ポルトガル、フランス、
ドイツ、ルーマニア、アメリカ、ブラジル、インドネシア、東ドイツ、
と、12か国に及んだ。
各国2回~3回で、合計20回~30回のつもりが、50回を超えた。
当時の写真を探し、メモを探し、調査をし、
資料を見つけて、掲載してきたが、これは、
生活の中で多くのエネルギーを必要とした。
赴任、プライベートの旅行で50か国を訪問した。
この体験ができた恩返しに、
読者のお役にたてればと、掲載してきた。
「世界のタクシー・ドライバー」は、
あと数回で、シリーズの区切りにしたい。
52) ドライバーの電話番号
日本からWebで予約したウェスト・ハンプステッドのIホテルには、
何事もなくチェック・インできた。
だが、部屋に入っても、
キャブ・ドライバーのインテンショナル故意の遠回りには、
むしゃくしゃする。
もし、3度目にインテンショナルな体験に出くわして、
ボッタクリにあったならば、ライセンス・ナンバー、
日時と場所、それに、領収書のコピーを添えて、
当局に通報しよう。
このインテンショナルは、早く忘れて、
ソーホーの中華街へ出て、広東料理でも食べよう。
しかし、ロンドンの繁華街には、歩いて行ける距離ではない。
「さっきのブラック・キャブは、もういないだろうな?」
ウェスト・ハンプステッドのIホテルに待機している、
ブラック・キャブに乗った。そして、
「オックスフォード・ストリート」を告げた。
ドライバーは、5分刈りに黒縁の眼鏡、30歳代だ。
行き先以外は、しゃべる気にならない。
しばらくは、黙っていた。
でも、声をかけてみた。
「ヒースロー空港まで行くが、
タクシー料金は、いくらか?」
ドライバーは振り返った。
「40ポンドですね」
さっきは、50ポンドも払ったぜ! まったく。
また、インテンショナルな遠回りを思い出した。
これを、きっかけにドライバーは話しかけてきた、
「いつ行くのですか?」
「あしたの朝だが……」
「35ポンドでいいですよ」
そして、すぐにつけ加えて、
「混んでいても、35ポンドで行きますよ」
ロンドン市街を抜けるには、いつも混雑して、
メーターは上がるが、それでも35ポンドで行くと言う。
ヒースロー空港へは、上客のようだ。
しかし、乗ったばかりのこのドライバーと、
ホテルに待機しているブラック・キャブを、
ボーイに呼んでもらった場合と、
どちらが信用できるだろうか?
あしたのヒースロー空港行きの予約を、決めかねている。
もう、イヤな思いはしたくないから。
最悪の場合は、パディングトンまで地下鉄で出て、
ヒースロー・エクスプレスでヒースロー空港へ行く手もある。
しかし、ドライバーはそのへんにあった紙をちん切って、
何やら書いている。
「これが携帯電話の番号です」
と、厚紙を手渡した。
ジョンJOHNという名前と携帯電話の番号だ。
それに、免許のあるタクシー・ドライバーLICENSED TAXI DRIVER、
と、つけ加えてある。
読みやすい字だ。ていねいに書いてある。
ジョンは仕事を取るために、必死だ。
ヒースロー空港までの35ポンドは、
ジョンにとって魅力である。
「ロンドン市街を走り回っているから、
出発する1時間前までに、電話をくれませんか」
それで、
「10時ころチェック・アウトするが、
9時までに電話がなければ、使わないと思ってくれ」
と、まだ決めかねていた。
オックスフォード・ストリートで降りて、
メーター料金にチップをつけ加える。
ジョンはうれしそうに、去った。
「なつかしいロンドンだ!」
オックスフォード・ストリートを歩いて、
リージェンツ・ストリートに出て、
ソーホーの中華街へ行った。
中華街にある中国式のゲートもなつかしい。
中華街の1軒に入って、広東料理を楽しんだ。
夜もふけた。が、ウェスト・ハンプステッドのIホテルまで、
帰らなければ。一人で。
ブラック・キャブをつかまえた。
「ウェスト・ハンプステッドのIホテルだ。
メイダ・ヴェイルにある。
リージェンツ・パークにあるIホテルではなくて」
キャブ・ドライバーはすぐにわかった。
ドライバーは地図を見ることもない。
途中、停車してポリス・マンに道を聞くこともない。
まっすぐメイダ・ヴェイルに向かっている。そして、
まったく、問題なくウェスト・ハンプステッドのIホテルに着いた。
昼間のキャブ・ドライバーの遠回りは、なんだったんだ!
「一方通行を調べている」
と言って、地図を眺めていたが。
さて、翌日は、ロンドンからパリに飛ぶ。
ヒースロー空港に向かうが、
来た時のブラック・キャブのような、
イヤな思いはしたくない。
ホテルのボーイに呼んでもらうブラック・キャブか?
それとも、きのうのジョンか?
どちらが、まともにヒースロー空港に行ってくれるか?
迷っている。
ジョンの35ポンドか?
それとも、遠回りの50ポンドか?
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。
「世界のタクシー・ドライバー」シリーズは、52回目になった。
2010年の1月から始めて、半年がすぎた。
掲載した国は、
スペイン、ギリシャ、イタリア、イギリス、ポルトガル、フランス、
ドイツ、ルーマニア、アメリカ、ブラジル、インドネシア、東ドイツ、
と、12か国に及んだ。
各国2回~3回で、合計20回~30回のつもりが、50回を超えた。
当時の写真を探し、メモを探し、調査をし、
資料を見つけて、掲載してきたが、これは、
生活の中で多くのエネルギーを必要とした。
赴任、プライベートの旅行で50か国を訪問した。
この体験ができた恩返しに、
読者のお役にたてればと、掲載してきた。
「世界のタクシー・ドライバー」は、
あと数回で、シリーズの区切りにしたい。
52) ドライバーの電話番号
日本からWebで予約したウェスト・ハンプステッドのIホテルには、
何事もなくチェック・インできた。
だが、部屋に入っても、
キャブ・ドライバーのインテンショナル故意の遠回りには、
むしゃくしゃする。
もし、3度目にインテンショナルな体験に出くわして、
ボッタクリにあったならば、ライセンス・ナンバー、
日時と場所、それに、領収書のコピーを添えて、
当局に通報しよう。
このインテンショナルは、早く忘れて、
ソーホーの中華街へ出て、広東料理でも食べよう。
しかし、ロンドンの繁華街には、歩いて行ける距離ではない。
「さっきのブラック・キャブは、もういないだろうな?」
ウェスト・ハンプステッドのIホテルに待機している、
ブラック・キャブに乗った。そして、
「オックスフォード・ストリート」を告げた。
ドライバーは、5分刈りに黒縁の眼鏡、30歳代だ。
行き先以外は、しゃべる気にならない。
しばらくは、黙っていた。
でも、声をかけてみた。
「ヒースロー空港まで行くが、
タクシー料金は、いくらか?」
ドライバーは振り返った。
「40ポンドですね」
さっきは、50ポンドも払ったぜ! まったく。
また、インテンショナルな遠回りを思い出した。
これを、きっかけにドライバーは話しかけてきた、
「いつ行くのですか?」
「あしたの朝だが……」
「35ポンドでいいですよ」
そして、すぐにつけ加えて、
「混んでいても、35ポンドで行きますよ」
ロンドン市街を抜けるには、いつも混雑して、
メーターは上がるが、それでも35ポンドで行くと言う。
ヒースロー空港へは、上客のようだ。
しかし、乗ったばかりのこのドライバーと、
ホテルに待機しているブラック・キャブを、
ボーイに呼んでもらった場合と、
どちらが信用できるだろうか?
あしたのヒースロー空港行きの予約を、決めかねている。
もう、イヤな思いはしたくないから。
最悪の場合は、パディングトンまで地下鉄で出て、
ヒースロー・エクスプレスでヒースロー空港へ行く手もある。
しかし、ドライバーはそのへんにあった紙をちん切って、
何やら書いている。
「これが携帯電話の番号です」
と、厚紙を手渡した。
ジョンJOHNという名前と携帯電話の番号だ。
それに、免許のあるタクシー・ドライバーLICENSED TAXI DRIVER、
と、つけ加えてある。
読みやすい字だ。ていねいに書いてある。
ジョンは仕事を取るために、必死だ。
ヒースロー空港までの35ポンドは、
ジョンにとって魅力である。
「ロンドン市街を走り回っているから、
出発する1時間前までに、電話をくれませんか」
それで、
「10時ころチェック・アウトするが、
9時までに電話がなければ、使わないと思ってくれ」
と、まだ決めかねていた。
オックスフォード・ストリートで降りて、
メーター料金にチップをつけ加える。
ジョンはうれしそうに、去った。
「なつかしいロンドンだ!」
オックスフォード・ストリートを歩いて、
リージェンツ・ストリートに出て、
ソーホーの中華街へ行った。
中華街にある中国式のゲートもなつかしい。
中華街の1軒に入って、広東料理を楽しんだ。
夜もふけた。が、ウェスト・ハンプステッドのIホテルまで、
帰らなければ。一人で。
ブラック・キャブをつかまえた。
「ウェスト・ハンプステッドのIホテルだ。
メイダ・ヴェイルにある。
リージェンツ・パークにあるIホテルではなくて」
キャブ・ドライバーはすぐにわかった。
ドライバーは地図を見ることもない。
途中、停車してポリス・マンに道を聞くこともない。
まっすぐメイダ・ヴェイルに向かっている。そして、
まったく、問題なくウェスト・ハンプステッドのIホテルに着いた。
昼間のキャブ・ドライバーの遠回りは、なんだったんだ!
「一方通行を調べている」
と言って、地図を眺めていたが。
さて、翌日は、ロンドンからパリに飛ぶ。
ヒースロー空港に向かうが、
来た時のブラック・キャブのような、
イヤな思いはしたくない。
ホテルのボーイに呼んでもらうブラック・キャブか?
それとも、きのうのジョンか?
どちらが、まともにヒースロー空港に行ってくれるか?
迷っている。
ジョンの35ポンドか?
それとも、遠回りの50ポンドか?