「日本の伝統文化を活かした地域づくり」
松本大学が、観光ホスピタリティ学科を新設した2004年に、
アレックス・カー氏(東洋文化研究家)を招いて、記念講演をした演題である。
松本には、ランドマーク「松本城」があり、
「北アルプス、上高地」がある。
「豊かな伝統文化」と「美しい自然」を求めて、
世界から観光客が訪れる。
「松本はいい街だ!」
うきうきして聴講した。
しかし、アレックス・カー氏の講演は、衝撃だった。
「日本は、日本の伝統や文化を切り捨て、自然を破壊しながら、
無秩序に開発を進めてきた。このために、世界の中で、
『醜い国』の一つになってきている。問題は、このことに、
日本人は気付いていないことです」
というものだった。
スライドで、その例が示された。
美しい海岸がテトラポットで覆われた、
周囲の景観とまったく調和しない美術館を建てた、
京都駅は、古都のイメージが感じられない箱ものにした、
産業廃棄物の不法投棄で、海岸に山ができ、海が汚染された、
谷あいが、治水事業のコンクリートで覆われ、無惨な景観になった……。
アレックス・カー氏は、
行政が公金を使って無意味な施設を造り続け、
自然環境に愛情をそそがず、営利を優先するシステムも問題にしている。
さらに、衝撃は旅の情報誌、「Time Out」の「東京」の表紙だった。
見苦しい「電線と広告看板」が、東京の象徴として使われていた。
映し出されたスライドを覚えていて、あとで、東京で撮った。
Time Outは、世界の都市の魅力を紹介する旅の情報誌(イギリス発行)で、
見どころやお楽しみ、ショッピング、レストラン、芸術、ホテルが載っている。
東京の表紙が、これと似た、見苦しい電線と広告看板では悲しい。
これでは、「さぁ、東京に行こう!」という気にならない。
世界のほかの都市が、ちゃんとした象徴であったのに。
たとえば、バルセロナ(スペイン)は、ガウディが設計したサグラダ・ファミリア、
フィレンツェ(イタリア)は、ミケランジェロのダビデ像、
香港は、超高層建築スカイスクレーパー、
というように。
衝撃の講演が終わると、質問の時間があった。
「松本の街づくりはどうでしょうか? 伝統文化が守られていますか?」
「Yes」を期待した質問であった……が、
「見たところ、松本もほかと同じような街になっています」
と、アレックス・カー氏は答えた。
「少しは、いいかな」
と、思っていた……が、「No」だった。
松本大学は、翌日に北アルプスのふもと、「安曇野」を案内して、
意見をお聞きしよう、ということであった。
「建設関係者に欠けているものはなんですか?
日本の伝統の良さや、日本文化の良さを教える美術教育が、
足らないために、無秩序な開発がおこなわれるのですか?
学校では、どのような教育が必要と思われますか?」
と、質問した。
アレックス・カー氏は、
「建設や開発には、自然や周囲との調和が大切です。
日本の文化にプライドを持つ教育が重要です」
という主旨を答えた。
講演のあとで、アレックス・カー氏の著書の一冊、
「美しき日本の残像」朝日文庫、を買った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/77/8d8cdd971834838d7763f7ec71aa884e.jpg)
「美しき日本の残像」には、つぎのようにある。
「自然破壊は急ピッチで進み、今、日本は世界の中で
『醜い国』の一つになってきているのです」
「外国人の友人たちは日本に来るとほとんどの人が失望します」
「日本の3万の河川のうち、ダムがないのは3つだけと言われています」
「何千キロもある海岸の30パーセント以上はコンクリートになってしまい、
国の補助金により全国の雑木林は伐採され、そのあとには杉が列をなして、
陣立てよろしく並んでいます。そのために秋に山の紅葉を見に行っても、
少ししか見ることができない……」
「そして、電線! 先進国の都市と町で電線を埋めてないのは日本だけであって、
日本の町の独特のごみごみした雰囲気はそのせいです」
「田舎に行くと電力会社は全く自由に鉄塔を立てています。
自然の美しさを破壊するため意図的、計画的に鉄塔を、
立てているのではないかと思ってしまうほどです。
ともかく信じられないほどの無神経さで設置されています」
「『国栄えて山河無し』という状態です。僕にとって、
一番不思議なのは日本人はその状態に気付いていないことです」
「田舎でよく見かける景色ですが、山を削ったり、
潰したりしている様子を見ると時々怖くなります」
「日本という国は大きな恐ろしい機械になってしまって、
その機械が狂って日本の国土を鉄の歯で食いちぎろうとしているのに、
誰もその機械を止めることができない」
「日本がこうした開発ばかりを進めているのでは、
日本の自然はもう救われないでしょう」
詳細は、「美しき日本の残像」ほかで、
みることができます。
松本大学が、観光ホスピタリティ学科を新設した2004年に、
アレックス・カー氏(東洋文化研究家)を招いて、記念講演をした演題である。
松本には、ランドマーク「松本城」があり、
「北アルプス、上高地」がある。
「豊かな伝統文化」と「美しい自然」を求めて、
世界から観光客が訪れる。
「松本はいい街だ!」
うきうきして聴講した。
しかし、アレックス・カー氏の講演は、衝撃だった。
「日本は、日本の伝統や文化を切り捨て、自然を破壊しながら、
無秩序に開発を進めてきた。このために、世界の中で、
『醜い国』の一つになってきている。問題は、このことに、
日本人は気付いていないことです」
というものだった。
スライドで、その例が示された。
美しい海岸がテトラポットで覆われた、
周囲の景観とまったく調和しない美術館を建てた、
京都駅は、古都のイメージが感じられない箱ものにした、
産業廃棄物の不法投棄で、海岸に山ができ、海が汚染された、
谷あいが、治水事業のコンクリートで覆われ、無惨な景観になった……。
アレックス・カー氏は、
行政が公金を使って無意味な施設を造り続け、
自然環境に愛情をそそがず、営利を優先するシステムも問題にしている。
さらに、衝撃は旅の情報誌、「Time Out」の「東京」の表紙だった。
見苦しい「電線と広告看板」が、東京の象徴として使われていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/de/bf6b5180a6b97bb4eba97c4fbabfe85a.jpg)
映し出されたスライドを覚えていて、あとで、東京で撮った。
Time Outは、世界の都市の魅力を紹介する旅の情報誌(イギリス発行)で、
見どころやお楽しみ、ショッピング、レストラン、芸術、ホテルが載っている。
東京の表紙が、これと似た、見苦しい電線と広告看板では悲しい。
これでは、「さぁ、東京に行こう!」という気にならない。
世界のほかの都市が、ちゃんとした象徴であったのに。
たとえば、バルセロナ(スペイン)は、ガウディが設計したサグラダ・ファミリア、
フィレンツェ(イタリア)は、ミケランジェロのダビデ像、
香港は、超高層建築スカイスクレーパー、
というように。
衝撃の講演が終わると、質問の時間があった。
「松本の街づくりはどうでしょうか? 伝統文化が守られていますか?」
「Yes」を期待した質問であった……が、
「見たところ、松本もほかと同じような街になっています」
と、アレックス・カー氏は答えた。
「少しは、いいかな」
と、思っていた……が、「No」だった。
松本大学は、翌日に北アルプスのふもと、「安曇野」を案内して、
意見をお聞きしよう、ということであった。
「建設関係者に欠けているものはなんですか?
日本の伝統の良さや、日本文化の良さを教える美術教育が、
足らないために、無秩序な開発がおこなわれるのですか?
学校では、どのような教育が必要と思われますか?」
と、質問した。
アレックス・カー氏は、
「建設や開発には、自然や周囲との調和が大切です。
日本の文化にプライドを持つ教育が重要です」
という主旨を答えた。
講演のあとで、アレックス・カー氏の著書の一冊、
「美しき日本の残像」朝日文庫、を買った。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/77/8d8cdd971834838d7763f7ec71aa884e.jpg)
「美しき日本の残像」には、つぎのようにある。
「自然破壊は急ピッチで進み、今、日本は世界の中で
『醜い国』の一つになってきているのです」
「外国人の友人たちは日本に来るとほとんどの人が失望します」
「日本の3万の河川のうち、ダムがないのは3つだけと言われています」
「何千キロもある海岸の30パーセント以上はコンクリートになってしまい、
国の補助金により全国の雑木林は伐採され、そのあとには杉が列をなして、
陣立てよろしく並んでいます。そのために秋に山の紅葉を見に行っても、
少ししか見ることができない……」
「そして、電線! 先進国の都市と町で電線を埋めてないのは日本だけであって、
日本の町の独特のごみごみした雰囲気はそのせいです」
「田舎に行くと電力会社は全く自由に鉄塔を立てています。
自然の美しさを破壊するため意図的、計画的に鉄塔を、
立てているのではないかと思ってしまうほどです。
ともかく信じられないほどの無神経さで設置されています」
「『国栄えて山河無し』という状態です。僕にとって、
一番不思議なのは日本人はその状態に気付いていないことです」
「田舎でよく見かける景色ですが、山を削ったり、
潰したりしている様子を見ると時々怖くなります」
「日本という国は大きな恐ろしい機械になってしまって、
その機械が狂って日本の国土を鉄の歯で食いちぎろうとしているのに、
誰もその機械を止めることができない」
「日本がこうした開発ばかりを進めているのでは、
日本の自然はもう救われないでしょう」
詳細は、「美しき日本の残像」ほかで、
みることができます。