タクシー・ドライバーは、街の代表者。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。
17) 道がわからなくなったタクシー・ドライバー
「この時間帯は、市街までは渋滞になる」と、遠回りをし、
「日本では、サッカーは人気があるか?」と、日本人であることを確かめ、
「道がわからなくなった」と、ほかのタクシー・ドライバーに聞き、
「リスボンには数100ものホテルがあるから、覚えきれない」
と言い訳をした。
もう、おわかりでしょう?
ボッタクリのパターンです。
ジェット機がポルトガルの上空にきた。
青空のもと、屋根瓦のオレンジが周囲の緑に映える。
10年ぶりのリスボンは、発展していた。
上空から見えたスラム街はなくなっていた。
空港ビルは新しくなっていた。
タクシーがメルセデス・ベンツになっていた。
以前はフィアットを使っていたものだが。
EUに統合されてから、ポルトガルは豊かになった。
さて、タクシーでリスボン市街のCホテルに向かう。
タクシーに乗る前に、空港の中にあるインフォメーションで、
Cホテルまでの、タクシー料金を聞いてみる。
「だいたい、Xエスクードです」
と、受けつけ嬢は言う。
ありがとう。
Xエスクードならば、1,000円以下だ。
空港でタクシーの順番を待って、
乗り合わせたタクシー・ドライバーは背が高い。
「Cホテルへ」
40歳代後半のドライバーはうなずいた。
空港を出ると、すぐに、
「この時間帯は、街までは渋滞になる」
と、違う方向に走り始めた。
そして、ドライバーはラジオのサッカー放送を、聞き入っている。
明らかに遠回りをしている。
――まあ、いいや!
遠回りには慣れている。
この手の顔は、ボッタクリ向きなのかな?
ここは、無事にCホテルにたどり着けばいい。
Bさんのように、身ぐるみをはがされことがなければいい。
サッカーの実況放送に、ドライバーは歓声を上げた。
「2対0になった、これで勝った。ポルトガルとトルコ戦だ」
ドライバーは、試合の経過に安心したようだ。
それから、話しかけてくる。
「日本では、サッカーは人気があるか?」
「ナカタ、イタリア・リーグのナカタを知っているよ」
「ポルトガルでは、バスケットボールも人気があるよ。
ゴルフはさっぱりだね」
「タクシーが、10年前のフィアットからメルセデスに代わったって?」
これは、ポルトガルは初めてではないよ。
だから、あんまりボッタクリはするなよ、
と、話しかけたことに、ドライバーが応えたものだ。
「ポルトガルも景気が上向きになってきたんだよ」
「そして、ブラジル人がポルトガルに来るようになった」
「昔、南米に移民した人やその家族が、
景気のいいポルトガルにもどって、出稼ぎするのさ」
「コソボ紛争で難民になった人も受け入れているよ」
「ポルトガルは移民する国から、だんだんと移民を受け入れる国に、
変わり始めているんだ」
タクシー・ドライバーはしきりに話しかけてくる。
しかし、市街に近づかない。
にぎやかにならなくて、何だかさびれてきた。
そして、
「道がわからなくなった」
と、言って道路わきに寄せた。
そこには、1台のタクシーが停車している。
そのタクシー・ドライバーに、Cホテルの場所を聞いている。
――わざとらしい。
聞かれたタクシー・ドライバーは、振り返って、
乗客が誰か? と、タクシーの中の私に視線を向けた。
「タクシー・ドライバーがCホテルを知らないはずはないが?
やはり、乗客は日本人だったか!」
という顔つきに見えた。
もどってきたドライバーは、
「リスボンには数100ものホテルがあるから、覚えきれない」
と言って、再びハンドルを切った。
こんどは、市街に向かうようだ。
そりゃー、リスボンにはたくさんのホテルはあるが、
取引先が予約してくれたCホテルは、
ガイド・ブックには必ず載っているホテルだ。
それから、にぎやかな市街に出てきた。
そして、リスボンの街の真ん中にあるCホテルに着いた。
Cホテルは大きなホテルだ。
入り口の壁には、なんと、☆☆☆☆☆がついている。
この5つ☆は最高級のホテルであることを示している。
メーター通りのXXエスクードを支払わされた。
空港のインフォメーションでは、Xエスクードと言っていたから、
2倍を支払ったことになる。
「この時間帯は、市街までは渋滞になる」と、遠回りをし、
「日本では、サッカーは人気があるか?」と、日本人であることを確かめ、
「道がわからなくなった」と、ほかのタクシー・ドライバーに聞き、
「リスボンには数100ものホテルがあるから、覚えきれない」
と言い訳をして、ボッタクられた。
ヤレヤレ……チップはなしだ。領収書はもらおう。
リスボンの5つ☆ホテルくらい、覚えておけよ。
街の印象が悪くなるじゃぁないか。
リスボン市街(ポンバル侯爵の像)。
旅が楽しくなったり、とんでもないことがおきる。
街の印象が良くなったり、悪くなったりする。
17) 道がわからなくなったタクシー・ドライバー
「この時間帯は、市街までは渋滞になる」と、遠回りをし、
「日本では、サッカーは人気があるか?」と、日本人であることを確かめ、
「道がわからなくなった」と、ほかのタクシー・ドライバーに聞き、
「リスボンには数100ものホテルがあるから、覚えきれない」
と言い訳をした。
もう、おわかりでしょう?
ボッタクリのパターンです。
ジェット機がポルトガルの上空にきた。
青空のもと、屋根瓦のオレンジが周囲の緑に映える。
10年ぶりのリスボンは、発展していた。
上空から見えたスラム街はなくなっていた。
空港ビルは新しくなっていた。
タクシーがメルセデス・ベンツになっていた。
以前はフィアットを使っていたものだが。
EUに統合されてから、ポルトガルは豊かになった。
さて、タクシーでリスボン市街のCホテルに向かう。
タクシーに乗る前に、空港の中にあるインフォメーションで、
Cホテルまでの、タクシー料金を聞いてみる。
「だいたい、Xエスクードです」
と、受けつけ嬢は言う。
ありがとう。
Xエスクードならば、1,000円以下だ。
空港でタクシーの順番を待って、
乗り合わせたタクシー・ドライバーは背が高い。
「Cホテルへ」
40歳代後半のドライバーはうなずいた。
空港を出ると、すぐに、
「この時間帯は、街までは渋滞になる」
と、違う方向に走り始めた。
そして、ドライバーはラジオのサッカー放送を、聞き入っている。
明らかに遠回りをしている。
――まあ、いいや!
遠回りには慣れている。
この手の顔は、ボッタクリ向きなのかな?
ここは、無事にCホテルにたどり着けばいい。
Bさんのように、身ぐるみをはがされことがなければいい。
サッカーの実況放送に、ドライバーは歓声を上げた。
「2対0になった、これで勝った。ポルトガルとトルコ戦だ」
ドライバーは、試合の経過に安心したようだ。
それから、話しかけてくる。
「日本では、サッカーは人気があるか?」
「ナカタ、イタリア・リーグのナカタを知っているよ」
「ポルトガルでは、バスケットボールも人気があるよ。
ゴルフはさっぱりだね」
「タクシーが、10年前のフィアットからメルセデスに代わったって?」
これは、ポルトガルは初めてではないよ。
だから、あんまりボッタクリはするなよ、
と、話しかけたことに、ドライバーが応えたものだ。
「ポルトガルも景気が上向きになってきたんだよ」
「そして、ブラジル人がポルトガルに来るようになった」
「昔、南米に移民した人やその家族が、
景気のいいポルトガルにもどって、出稼ぎするのさ」
「コソボ紛争で難民になった人も受け入れているよ」
「ポルトガルは移民する国から、だんだんと移民を受け入れる国に、
変わり始めているんだ」
タクシー・ドライバーはしきりに話しかけてくる。
しかし、市街に近づかない。
にぎやかにならなくて、何だかさびれてきた。
そして、
「道がわからなくなった」
と、言って道路わきに寄せた。
そこには、1台のタクシーが停車している。
そのタクシー・ドライバーに、Cホテルの場所を聞いている。
――わざとらしい。
聞かれたタクシー・ドライバーは、振り返って、
乗客が誰か? と、タクシーの中の私に視線を向けた。
「タクシー・ドライバーがCホテルを知らないはずはないが?
やはり、乗客は日本人だったか!」
という顔つきに見えた。
もどってきたドライバーは、
「リスボンには数100ものホテルがあるから、覚えきれない」
と言って、再びハンドルを切った。
こんどは、市街に向かうようだ。
そりゃー、リスボンにはたくさんのホテルはあるが、
取引先が予約してくれたCホテルは、
ガイド・ブックには必ず載っているホテルだ。
それから、にぎやかな市街に出てきた。
そして、リスボンの街の真ん中にあるCホテルに着いた。
Cホテルは大きなホテルだ。
入り口の壁には、なんと、☆☆☆☆☆がついている。
この5つ☆は最高級のホテルであることを示している。
メーター通りのXXエスクードを支払わされた。
空港のインフォメーションでは、Xエスクードと言っていたから、
2倍を支払ったことになる。
「この時間帯は、市街までは渋滞になる」と、遠回りをし、
「日本では、サッカーは人気があるか?」と、日本人であることを確かめ、
「道がわからなくなった」と、ほかのタクシー・ドライバーに聞き、
「リスボンには数100ものホテルがあるから、覚えきれない」
と言い訳をして、ボッタクられた。
ヤレヤレ……チップはなしだ。領収書はもらおう。
リスボンの5つ☆ホテルくらい、覚えておけよ。
街の印象が悪くなるじゃぁないか。
リスボン市街(ポンバル侯爵の像)。